「GO」(金城一紀:講談社文庫448円)

「GO」は、青春小説・青春映画ですね。
とってもテンポの良い、ハイ・スピード活劇という感じですね。
冒頭のスーパー・グレイト・チキン・レースからしてノリが良いです。

 しかし、この作品の底流にある、ずっしり重いテーマは「在日」の問題です。
いや、それが必ずしも第一のテーマでなくともよいとは思うのですが、私にとっ
ては第一のテーマです。
 私にとっては、それなしには、この作品に意義を感じ取れない基底的モメントです。

 「在日」と書くことにすら、その背後には色々な意味、背景が横たわっている
、そういうものとして、書くということ、そんなこともほとんど考えたこともあ
りませんでした。
(ラスト近くの校庭でのシーンで、「おまえら、どうしてなんの疑問もなく俺の
 ことを<在日>だなんて呼びやがるんだ?」)
 
 
 私にとって、「在日」の問題は、近くて、遠い問題でした。
 同じ日本に存在しているのに、、、
在日の方の多くの小説や評論があることは知ってはいました。
しかし、私にとって、それらは、何かとっても「敷居」が高く感じられました。
その為、一切読んだこともありませんでした。

 そんな私にとって、この「GO」は、在日の問題を考える、とっても身近な、
親しみやすい作品でした。

 在日の方たちの、ごく普通の日常生活とか、日常的にどんな生活を営み、どん
なことを悩み、考えているのか、そういう身近な次元で、在日の方たちの内面世
界を垣間見ることができたという感じです。

 民族的な差別に対しては、屁とも思わない、強靭な主人公。
しかし、恋した彼女に拒絶されたことが、初めて心底こたえたんですね。
在日の方にとって、そういうことこそが、民族的な壁なんですね。

 そういうことを学べたということが、私にとって一番大きな意義でした。

 
 民族学校内での実際の様子を、その一断片でも垣間見れました。

 また、北朝鮮や朝鮮総連を必ずしも全面的には、最早信頼してはいないこと。
しかし、それでもやはり、ある人は、民族団体の側で生きていくという考え方。
また、ある人は、それを超えるものを探し求めるという生き方、、、
そういうことを学びました。


 北朝鮮による拉致事件、核開発、朝鮮総連への批判と幻滅、、、、
とっても難しい時期だと思います。とっても苦しい時期だと思います。
それでも、生きていく、その基本的な方向性、基底的なことを、この「GO」
から学べたような気がします。


 あと、DVD版のおまけとして、原作者と監督の二人が全編を観ながら
コメントしています。
 韓国では、警察署のシーンと、タクシーの運ちゃんのシーンがバカうけだった
そうです。
 へぇ〜、韓国の人達はこのシーンで笑うんだとかと感心しました。