<「PLAY BOY」12月号:集英社>
 ・『新聞もテレビも報じないチェチェンとロシアの真実』稲垣収
  オセチア学校占拠事件の裏で、本当は何が起きているのか

・「チェチェン やめられない戦争」のアンナ・ポリトコフスカヤが属する
  ロシアの「ノーヴァヤ・ガゼータ」紙の編集長、ドミトリー・ムラートフ氏
  とのインタビュー記事。

「チェチェンでロシア政府がこれまで取ってきた政策そのものが、チェチェンの
 人々に対するテロだったのです。今日、ロシア各地で事件や紛争を起こして
 いる”テロリストたち”のほとんどが13〜15歳の時にチェチェンで戦争を実
 体験している。ロシアによる戦争がテロリストを生み出してしまったのです」
「この戦争を始めた者たちは、戦争継続によって利益を得ている。現在の体制を
 維持し強化するためにこの戦争を利用しているのです」

 <質問>「学校占拠事件における政府の事件への対応に関して、モスクワ市民
    500人への調査で「支持する」という答えが59%もあったそうですね」
「この数字は権力の嘘です。一昨年の劇場占拠事件で、政府の対応を支持すると
 した人たちは89%ですが(ロシア全土1600人が調査対象)、この時はマスコミ
 への検閲のせいで「全員を救出した」という情報が流れていました。もし、
 すぐさま129人が死亡したことが報道され、知れわたっていれば、支持率も
 違ったでしょう」

 99年9月のアパート爆破事件の容疑者が逮捕され、その中にチェチェン人は
一人もいなかった。カラチャエフ・チェルケス自治州出身者。


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 という映像作品の監督であるザーラ・イマーエワ女史は、

「チェチェン人があのようなこと(学校占拠事件)をするとは信じられません。
 バサーエフ声明を偽者だと疑っている人もいます。現在チェチェンの人々は、
 学校を占拠した犯人グループには、チェチェン人もイングーシ人もいなかった
 と固く信じています。私たちの社会は小さなもので、実質的にほとんど全ての
 者が知り合いです。ロシア報道が語るところの「射殺された32名のテロリスト
 」の顔写真が公開されれば、親族、友人、社会的つきあいを辿って、チェチェ
 ン人ならほとんど瞬時に彼らの素性が割り出されるはずです」

 犯人側と交渉した、前イングーシ大統領アウシェフ氏が、「われらのことば
(チェチェン=イングーシ語)で話そう」と呼びかけたが、犯人たちはロシア語
でしか話そうとしなかった。

 9月23日付「モスクワ・タイムズ」は、死亡した犯人のうち二人がロシアの
刑務所に収監中の人物だと報じ、「治安関係者が彼らをあらかじめ殺害し、その
死体を現場に置いたのだ」という独立派のマスハードフ大統領の主張も併記して
いる


・「誓い」の著者ハッサン・バイエフ氏は、
 マスハードフは「真摯な交渉ができる相手ですし、停戦交渉が始まれば、
 野戦司令官たちを自分に従わせることもできるはずです」と語っている。

 しかし、私には疑問です。
 ロシアと交渉するマスハードフに、全ての野戦司令官達が従うとはとても
思えません。
 もし、従うとしたら、
@軍事的攻勢が不可能だと軍事的敗北を認めざるを得ない状況に追い込まれて、
 渋々従う場合、
A一時的に、停戦することで、態勢を立て直す時間稼ぎに活用しようと考えた
 場合、
Bその他
 
 いずれにしても、マスハードフに従うのではなく、あくまでも、それが自分達
にとって有益だと、彼ら自身が判断する場合に限られると思う。

 しかも、武装勢力は一枚岩ではないので、あるグループは従うが、別のグルー
プは従わないという状況になるのではないかと思われる。

 しかも、現実政治とは恐ろしいもので、交渉過程で、「誰がやったのか
分からない爆弾テロ」とかが、起こされそうな気がしてならない。




『報道されない「ロシアVSチェチェン」戦争の裏側』稲垣収(SPA! 11/2日号)

「新聞もテレビも報じないチェチェンとロシアの真実」稲垣収
 オセチア学校占拠事件の裏で、本当は何が起きているのか
 (「PLAY BOY」12月号)と、ほぼ同じ内容の文章になっています。

 新たな情報としては、
元KGBエージェントのアレクサンドル・リトヴィエンコ氏が、
「学校占拠事件で逮捕されたヌルバシ・クラーエフは以前FSBに逮捕された
 人物です。FSBは犯人を釈放する際、協力を誓わせ、エージェントとして
 活動させる。そして24時間の監視体制を5年間は続ける。そんな状態の
 クラーエフが事件に参加できるはずがない」
「つまり、FSBはクラーエフをはじめとする犯人たちが事件を起こすのを
 わざと見逃したか、裏で糸を引いているというわけだ」 

 マスハードフ大統領とバサーエフの二人が並んでいる写真を掲載している。
2001年以前という説明が書かれている。
私は、二人が並んで写っている写真を初めて見た。
マスハードフ大統領の迷彩服姿も初めて見た。

『新聞もテレビも報じないチェチェンとロシアの真実』稲垣収(PLAY BOY 12月号)
『報道されない「ロシアVSチェチェン」戦争の裏側』稲垣収(SPA!)