「「対テロ戦争」とイスラム世界」」
(板垣雄三編:岩波新書)
780円

 イスラム原理主義運動。対米武闘路線を採るが、イスラム世界での労働者の闘い、労働組合運動をも
破壊する尖兵=突撃隊としても活用されているということを知った。

 アルカイダとも共闘関係にあると言われる「ムスリム同胞団」は、スーダンで、スーダン共産党
(鉄道労働者をはじめとする大衆的基盤を持ち、中東・アフリカ最大の共産党と言われた)に対して
攻撃をしかけるための格好の突撃隊として、活用された。
 同様のことは、エジプトやイエメンでも行われた。

 「イスラムの考え」とは相容れないとして、労働運動を弾圧するのは、地元地域の地域ブルジョアジーの
意をていして、その手先=尖兵としてのかのナチスの「突撃隊」の役割をも担っていたのだ。
 事実、労働運動を弾圧した後、新興ブルジョアジーが政治のヘゲモニーを担っていく。
 イスラム原理主義組織は、その見返りとして、政治的亡命地の提供を受け、訓練センターを設置したり、
各国の組織と連絡を取る拠点として活用する。
 更には、自らが、種々の金融業にも乗り出し、資金作りに活用していた。

 まさに、民族ブルジョアジーの同盟軍という側面をも持っていると言っていいと思う。