「ユーゴ動乱1999」
(梅本浩志:社会評論社)

 第二次大戦時、チトーの下で対独パルチザン闘争を戦った多くのユーゴスラヴィア民衆。
自ら武器を取り、ナチスから自ら自己解放を勝ち取ったという歴史と伝統と自負。
 その後、スターリンのソ連の東側体制から破門され、いつワルシャワ条約機構軍に攻め込まれるか
分からないという緊迫して情勢の下、各地域に武器庫が存在し、全民衆がいつでも武装できる
ようにしたこと、これがトータル・ナショナル・ディフェンス(全民衆防衛)。

 しかし、そのトータル・ナショナル・ディフェンス(全民衆防衛)という全民衆が武装して闘うという
ユーゴ独自のシステムがユーゴ内戦での悲劇を生み出した一つの根拠であったことを知った。
 多民族国家ユーゴで、ひとたび、民族紛争が起きるや否や、すぐに多くの民衆が武装できる
ということが、あの悲劇を拡大した一つの大きな根拠だということを知った。