「部落問題とは何か」(川元祥一著:三一新書)

 白土三平の「カムイ外伝」は、「唯物史観漫画」と呼ばれ
ました。そういう意味で歴史的名著だと思っています。

 中学校の社会の教科書にも「士農工商穢多非人」ということ
は記載されており、支配者による分断支配という教え方をして
いると思います。
・部落差別は、江戸時代に突然現れたのではなく、室町時代の
 河原者等がその一つの起源になっているということ、
・山番・水番・牢番・街道守・渡し守・警備役・死んだ牛馬
 処理・皮細工・刑場での役・浄など
 色々な社会関係を有し、且つ、社会的な生産関係を取り結ん
 でいたということ、
・能・狂言等の演芸につながる種々の芸能の祖
・明治新政府の四民平等により、従来の特定の種々の仕事を
 一挙に一切失ったこと、
・そのことが、経済的貧困の物質的基礎となってきたこと、
 
 エピソードとしては、「解体新書」の杉田玄白は、直接腑分
けしたのではなく、穢多の人に腑分けしてもらい、色々なこと
を聞きながら、教えてもらいながら腑分けしたということ、
 江戸期の数度の大飢饉の折、餓死寸前の農民を部落民が各地
で救ったこと。
 死んだ牛馬の肉を塩漬け等にして保存食としていたので、
それを煮込んだ汁を分けて与えた。
 栄養たっぷりなので、かなり滋養が取れたそうです。

 「もののけ姫」は、室町期が舞台です。
戦乱の室町期には、土地から離れる農民も多く、日本人の半数
近くが離民となっていたのかもしれません。
 そいういう社会的激動期は、活気にあふれ、エネルギッシュ
な社会でもあった訳ですね。
 経済、技術、文化・芸能、、、等々、色々な分野で大きな
進展があった時期だと思います。
 時代が落ち着いてくるにしたがって、つまり、戦国大名が
地域社会を統治・支配するにしたがって、一部の離民を部落民
として体制内化していったという側面もあるようです。
 それが完成したのが、江戸時代と言えるのかもしれません。