http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/hardtalk/4877124.stm

<首相となることを希望なさいますか>

「そうですね、やりたいかどうかは別にして、私は候補者の一人でした。
当然私もその為に活動していました」

<その活動は進行中ですか>

「それはUIA(統一イラク同盟)と議会の決定次第です。
そして国内の情況にもよります」

<現在、候補となっているジャファリ首相は辞めるべきでしょうか>

「そう思います。指名された後、他の党から支持を得られていないからです。
UIAでも反対の声が出始めています。
ジャファリ首相はその座を譲るべきでしょう」

<ジャファリ氏にそうお伝えになりましたか>

「はい」

<で、ジャファリ氏はどのようにお答えになりましたか>

「指名があったので、それを守ると彼は言っていました。
そして議会に持ち込むとしています」

<ということは辛い終わり方をする迄続けるという
心の準備ができているということですね>

「それを昨日も話し合いました。
既に国は危機的な状態で、その打開が必要です」

<ジャファリ氏は議会に委ねると言っていましたか>

「そうです。議会の決定を歓迎すると言いました」

<ジャファリ氏はシーア派の首相候補に民主的に選ばれたんですから、
同情なさいますか>

「そうですね。
しかし条件の一つは他の関係者からの承認が必要だということでした。
議会に委ねるべきです」

<米英も指名を認める、こういうことも条件の一つでしょうか>

「そうではありません。
国際的にも受け入れられなければならないという条件も添えられています。
それはUIAの原則の一つで、そうなっているんです」

<今のイラクの情況は、おかしな民主主義だとみる人が多いと思うんです。
と言いますのは、投票によって選ばれた筈のジャファリ氏ですが、
米大使がジャファリ氏を望まない、支持しない、認めないと言った途端に、
道を譲るべきだと言い始めた訳ですから>

「そうではありません。ジャファリ氏が指名されたことを受け入れ、
議会でそれを承認するつもりでした。
しかし他の派閥が、UIAを上回る数で、UIAが指名した候補に反対した訳です。
そうした他のパートナーとの協議が必要です。それが真相なんです」

<クルド、スンニがジャファリ氏との協力を拒んでいる訳ですが、
これから誰が選ばれるにしても、同じ行動に出るのではないでしょうか>

「現在イラクは移行期間中です。
合意に基いて決定するという原則は変わりません。
前回、そして今回、選挙で選ばれた政府となる訳ですが、
今後四年はまだ条件が残っています。
特に大統領の選出には、三分の二の得票が必要です。
また、首相や閣僚選出には、過半数の支持が必要なんです。
UIAの支持だけでなく、他の党派の支持も必要なのです」

<ジャファリ氏の反対派は米英という心強い味方がいるので、
ジャファリ氏が去るまで強気でいけると考えているのではないでしょうか>

「それは違います。ジャファリ氏は最初の一か月、統治委員会の
議長として受け入れられましたし、昨年、首相も務めました。
米英は彼の人格について反対していません。これは国内での問題です。
もちろん近隣諸国や米英もイラクに関心を持っています。
イラク首相の指名に注目している訳です」

<ジャファリ氏はどこを誤ってしまったんでしょうか>

「それを全て挙げて検討する時間はこの番組では、ないでしょう。
ジャファリ氏は優れた人物です。勇気もあります。フセインとも戦いました。
しかし昨年、ジャファリ氏が首相を務めた政府は、
あまりうまく機能しませんでした。
一番肝心なのは、彼が議会の全面的な承認を受けていないことです。
これから承認されるかもしれませんが、分かりません」

<ジャファリ氏はUIAによって投票されました。
今、勇気があって、実績も残したと仰いましたが、
米英は、この人では駄目だと言っているんですよ。
このことはとても重要だと思うんですけど>

「御存知の通り、UIAでは二人の候補が争いました。
一人が64票、もう一人が63票を獲得しました。
とても民主的なやり方で決まりました。
しかし中には拒否もありました。白紙も二票あったんです。
つまりジャファリ氏への支持は絶対過半数ではなかったんです」

<その63票を集められたのは、副大統領御自身であられた訳ですが、
自信を持って首相を務めることができますか>

「いいえ、それは問題ではありません。
UIAが決定を考え直すか、議会に掛かっているんです」

<米英の声も影響しますか>

「それはイラクを巡る環境によるでしょう」

<最近ライス国務長官とストロー外相がイラクを訪れ、
副大統領御自身とも会談しましたね。
何と言われましたか>

「彼らがイラクを訪問するのは、これが初めてではありません。
ストロー外相は六度目、ライス国務長官も三度目です。
これまでと同じく政治プロセス、選挙について話し合いました。
そして組閣が必要なことや、危機的な情況だといった話しをしました」

<タラバーニ大統領との会談では、ジャファリ首相は適材ではないと
語ったそうですが。副大統領との会談では何と言いましたか>

「他の人の決定を左右しますからそういったことについては詳しく話せません。
彼らが私に言ったのは、また、ジャファリ氏ともよい協議を行いました」

<是非教えて頂きたいんですけれど、どうしてイラク国民に
二人が副大統領に語ったことを伝えることができないんですか>

「繰り返しますが、他の人の決定を左右するので話せないんです。
彼らが私に言ったのは、効率良く強い政府、イラクの様々な党派を
一つにまとめられる政府が必要だということです。
そして選挙結果を尊重できる政府です」

<副大統領に首相になってくれるよう要請しましたか>

「それは問題ではありませんでした」

<言葉にしましたか>

「いいえ」

<副大統領の政権を望むとは明言しなかった訳ですね>

「もちろん憶測は飛び交っています。
私が首相になる可能性、他の可能性などについてです。
一時間半にわたって、また二回目の朝食会の時にも、
そうしたことを分析しながら、話し合いました。
様々な選択肢について、関係者のそれぞれが自分の立場をはっきりさせました」

<その自分の立場をはっきりさせた時に、
副大統領に首相になって欲しいと言いませんでしたか>

「原則について話したんです。名指しはありませんでした」

<私の質問は大変シンプルなものなんです。
答はノーと仰って下さっても結構です。
首相になって欲しいと言わなかったんですか>

「既に違うと申し上げました」

<では、首相になって欲しいと言わなかったんですね>

「そんな風に名前を言いませんでした。
原則について、プロセスについて、話し合ったんです」

<その原則について話し合った時、
副大統領を首相候補として支援する印象を残しませんでしたか>

「印象について話すのは避けましょうよ」

<でも印象というのは大変重要だと思うんですね。
と申しますのは米英の支援を受けるというのは、イラクの政治家としては、
良いこととは限りませんね。イラク国民に良くとられないかもしれませんから>

「そういう風な言い方は適切ではないと思います。
どの候補者も近隣諸国や国際社会に受け入れられなければなりません。
それはイラクの現実で必要条件です。
一方、米英、近隣諸国からの指図を受けるべきではないというのは、
仰る通りです」

<もし首相候補となられれば、サドル師の支援を受けることはできますか。
130のシーア派の議席中、32議席を掌握していますね>

「UIAの選挙の前、サドル師はクウェートで発言しました。
ジャファリ氏でも、アデル・アブドル・マハディのどちらでも
支持すると述べています。UIAの選挙前のことです」

<サドル師は結局、ジャファリ氏を支援することにしました。
ジャファリ氏がサドル派の議員に便宜を図るという
取り引きがあったと言われていますね>

「もちろん誰を支持しようとそれはその人の権利ではないんでしょうか」

<サドル師の支援を取り付けることができますか>

「それはサドル師とサドル派の民兵次第という所でしょうか。
もし誰か別の人を支持するとしても、あるいはジャファリ氏を支持するとしても
それはサドル師の決定次第です」

<大変影響力のあるイスラム教指導者ですよね。
特にマハディ軍;民兵組織を擁している訳ですから、
サドル師の支援を取り付けることは重要ですよね>

「本格政権の首相になろうとすれば、
イラク社会の幅広い支持を獲得することは不可欠となります。
もちろんサドル師の影響力の強さは皆承知しています。
同じUIAの同志ですから。それは貴方の言う通りです」

<では、ジャファリ氏と同様、ある程度の取り引きをなさる用意がありますか。
つまり閣僚に登用するとか、民兵組織に関して便宜を図るとかですけれども>

「私達の目標は、イラクの全勢力を統一することです。
イラクの法律では、民兵組織を正規軍に統合することを追及しています。
サドル師の民兵も、当然UIAの一翼を担っていますから、
つまりシーア派主導の政権樹立の努力の一翼であると考えています」

<サドル師と取り引きをなさるのかと伺ったんですけれど>

「政治的なプロセスから逸脱するような取り引きを
サドル師派と結ぶつもりはありません」

<サドル師と政治的要求について具体的にお話しになったことはありますか>

「その取り巻きとは会っていますが、最近本人とは出会う機会がありません。
しかしUIAや政治プロセスのルール、イラク国家の法律に従う限り、
サドル師とも一緒にやっていくつもりです。
もしそれを取り引きというならば、それはサドル師派だけでなく、
全ての勢力と取り引きを行っていると言っていいでしょう」

<ジャファリ氏もサドル師のような強い影響力を持ち、民兵組織を備えた
人物の支援があれば、自分の立場が強まると考えたのではないでしょうか>

「それはジャファリ氏が答えるべき質問ではありませんか」

<ジャファリ氏は民兵の存在はイラクの現実である。
政治の主流に取り込んでいくべきだとみています。
これは正しい見方でしょうか>

「それは賢明ですね。全ての政治勢力をプロセスに糾合したいと
考えていますから、当然そうなると思います。
その方法については今協議しています」

<ジャファリ氏のやり方は、まず民兵組織を治安プロセスに組み入れて、
次に民兵組織の忠誠を勝ち取るということです。
この後ろの部分が達成されていません。
やり方として正しいと言えるでしょうか>

「その点私もお話ししようと思っていたんですが、
どのような取り引きがあったとしても、
その詳細については今の私には分かりません。
いずれにせよ、法やルールを遵守する限り、
どんな努力であろうとも受け入れることは可能だと考えています。
もう三年間にわたり、全ての政党、政治潮流を
この政治プロセスに糾合しようとしてきました。
シーア派もスンニ派もその他の民族も全てです。
これが全て政治プロセスの努力の一環と言っていいと思います」

<民兵組織がイラクの暴力事件、殺人事件の原因と思いますか>

「イラクに基本的に民兵の存在は許さない、これが基本法の姿勢です。
法と秩序の枠内の勢力しか認めるつもりはありません。
国家の法の埒外の勢力を認めるつもりはないのです」

<政治プロセスに民兵組織を取り込んでいくということですが、
治安部隊に取り込んで、その後、忠誠心を勝ち取るというのは、
原則として正しいのでしょうか。
取り引きの具体的内容の話しをしているのではなく、
原則として正しいかどうか伺っているんですが>

「ええ、それは正しいと思います。
全ての政党勢力にそういう風に言っています。
現在の国家においては、二重基準やあるいは、革命勢力、民兵勢力、
こうしたものを政治プロセスの埒外で認めることなど許されないのです。
そういう勢力はイラクの政権内には入れないつもりです。
政治プロセスに参加するか、あるいはしないか、その点を全ての政治勢力に
はっきりと聞いて、説得する為にかなりの労力を費やしてきました。
その結果、極めて貴重な成果を手に入れてきたと思います。
スンニ派、シーア派、そしてその他の民族社会と
その点の合意を推し進めてきました。かなりの成果がありました。
この点が政治プロセスを進めていく上での大切な基準となると考えています」

<イラク戦争からの三年をみますと、死者の数は毎年増えています。
米英連合軍が撤退することで、この情況は良くなると思いますか。
その時点に到達したと思われますか>

「アラビアの諺に物事をみる時は、片目ではなくて、
両目で見ることというのがあります。
イラクの再建事業は大きな成果をあげたと思います。
前回の議会選挙では1200万人が投票しました。
憲法としてのイラク基本法も成立しています。
もちろんイラクの過去は困難に満ちていました。
そこからスタートしなければならないんです。
米軍主導のイラク侵攻、そして占領、
困難な情況を遺産として受け継いできました。
国民と共に政治プロセスを進めることができれば、
これから多国籍軍の撤退のことも視野に入ってくるでしょう。
その頃には情況は今よりもずっと良くなっている筈です。
今は危機的な情況です。それは間違いありません。
しかし前進しています。
旧体制とイラク戦争の遺産、そして困難な移行過程から抜け出す方法、
それは政治プロセスしかないのです」

<いつ撤退すべきでしょうか>

「イラク人が治安を自分で守れるようになった時、
治安の空白が解消された時でしょう」

<その時点に達したと思われますか。アメリカとジャファリ氏の間でも
米軍が担うべき役割について意見が対立していますが、
シーア派の人々が治安を担当すべき時が来たと考えているようです。
つまり連合軍にとっては撤退すべき時が来たのでしょうか>

「もちろん現在が複雑で、矛盾に満ちたプロセスであるというのは、
全くその通りだと思います。
しかし現在のイラクでは、多くの県で既に多国籍軍が駐留していないこと、
ここにも注意すべきだと思います。
南部、北部の地域から既に多国籍軍は全面的に撤退しています。
今年中にバグダッドを平和な首都にしてしまおうと努力している所です」

<今年バグダッドに平和をもたらすことができますか>

「今年もたらそうと思っています。その努力をしています。
車爆弾、自殺爆弾の攻撃の数は減っているんですから」

<でも政府すらできていません。バグダッドの情況は日々悪化しています。
毎日死者が増えています。
暫定政府首相アラウィ氏は内戦という言葉すら使っています。
それなのに、副大統領は平和を今年中に達成すると仰るんですか>

「もちろん語る時には平和と暴力、この二つを問題にしなければなりません。
矛盾に満ちた道のりで、
テロリスト勢力や旧体制の残存勢力が攻撃を今も続けています。
イラクの混乱を自分達の政治目的に役立てようとしているんです。
でも千数百万人の国民が投票所に実際に赴いたんです。
しかも憲法があります。これから本格政権を樹立する準備が進んでいます。
イラクのような国ではなくて、普通の国だって
政治的な代償を支払っている所はたくさんあります。困難があるからといって、
それがイラクの再建の勢いを止めてしまうとは私は思いません」

<米英軍が早急に撤退すれば平和達成の可能性は高まりますか>

「撤退の条件は治安の空白情況をつくらないように、
イラクの治安組織が確立された時、こう言っていいと思います」

Adel Abdul Mahdi  (HARDtalk) BBC