「スンニ派が民兵組織 ザルカウィ派一掃狙う」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/feature/iraq/060210T0952.shtml

【カイロ=萩文明】
「イラクのイスラム教スンニ派が、民兵組織を発足させた。
武装勢力「イラク聖戦アルカイダ組織」を率いるザルカウィ容疑者らを
一掃する狙いで、米軍の意向に沿った形。
アラブ圏紙などによると、民兵組織は「アンバル革命軍」。
反米武装勢力の活動が盛んな西部アンバル州で、
有力なスンニ派部族らが1月下旬に発足させた。
部族の自衛や外国人の流入阻止、ザルカウィ派の摘発を続け、
これまでに「数百人を拘束した」という。
移行政府はアンバル革命軍の活動を容認、現在は治安改善に貢献している。
しかし、スンニ派内では、発足理由について
「シーア派やクルド人の民兵に対抗するためだ」とささやかれている。
シーア派の政権掌握に伴い、同派民兵「バドル旅団」は治安部隊に衣替えされ
「合法的」な武装組織としてスンニ派暗殺や虐待を続けているとされる。
クルド人民兵も北部の治安を掌握している。
連邦制が実現すれば、民兵組織が各連邦の「軍」に移行する可能性もある」


クルド地域ではクルドの民兵組織ペシュメルガが、
シーア派地域では各シーア派民兵組織が、
治安維持活動を実質的に担っている。
本当は、それぞれ解散させ、新生イラク国軍が全国の治安維持活動を担うことに
なっていたのだが、各勢力が抵抗してなかなか進まなかった。
進まないどころが、それが現状であり、固定化されつつある。
そういう現状で、スンニ派地域だけ、イラク国軍に、
しかもその構成はクルド人やシーア派主体のイラク国軍に
スンニ派地域の治安維持活動を担わせるということは問題があった。
しかも内務省を牛耳るSCIRIのバドル旅団によるスンニ派一般住民への
虐待問題が公然化して以降は、ますます難しい状況となっていたと思う。

将来的には、新生イラク国軍へと各派の民兵組織を解体・再編していくことに
なるとは思うが、現状では、各派のバランスをとるという意味でも、
スンニ派地域ではスンニ派の民兵組織が治安維持活動を担う方が自然だと思う。

このアンバール革命軍と従来のスンニ派地元武装勢力とは、
一体どういう関係にあるのかが分からない。
全く同じものとも思えないが、全く違うものとも思えない。
おそらくはクロス・オーバーしているのではないかと推測している。

スンニ派も学んだのだと思う。
かつてはアルカイダ系を苦々しく思いつつも、
対米軍との戦いでは戦力になると2004年のファルージャではそうだったと思う。
しかし、
@その後、ますますアルカイダ系によるイラク市民への無差別テロが増加した
Aアルカイダ系はスンニ派の都市市街地を拠点化しようとした。
 カラビラ、フセイバ、カイム、ラマディと米軍はアルカイダを追って、
 スンニ派の街を次々と瓦礫の山にしていった。
Bスンニ派武装勢力内部での権力闘争でも、絶対人数が圧倒的に少数であるにも
 関わらず、資金力のあるアルカイダ系がそれなりの主導権を確立していた
 のかもしれない。
Cスンニ派内部でも徐々にアルカイダ系と戦闘を開始する部族や武装組織が
 出始めた。(1920年革命旅団等)

 そういう脈絡で考えると、スンニ派社会全体で、アルカイダとは
明確に戦うという、いわば意思統一にまで至りつつあるのではないかと思える。
その過渡的形態の表れなのではないか。
私はこれを肯定的に捉える。
アルカイダ系とは戦うという姿勢を支持する。

そして、スンニ派地域でアルカイダ系を叩き潰し、
スンニ派地域で治安が回復し、結果的に車爆弾テロが減少していけば、
それに従って、米軍もスンニ派地域から撤退していくのではないかと思う。

クルド、シーア派、スンニ派、この三大勢力が各派の民兵組織を持ち、
対峙するというのは、内戦の可能性の実在的条件を構成してしまうということも
言えると思うが、現状では致し方ないと思う。
しかも、国政レベルでは各派の政治的交渉によって、話し合うということに、
少なくとも、今の所、そういう方向で進みつつあると思う。
政治的交渉では、解決できなくなった時は、内戦の可能性が高まると思うが、
それはまだ先のことだと思う。

中央での政治交渉で話し合いによる解決により、事態が沈静化するに従って、
新生イラク国軍の構成も各派の地域主義を解消していけばよいのではないか。

アンバール革命軍と米軍との関係は分からない。
移行政権はアンバール革命軍を容認しているそうだが、
米軍もアンバール革命軍を容認しているのだろうか。

@内務省を牛耳るSCIRIによるスンニ派市民への虐待問題の公然化には、
 アメリカの意思が背後で働いていたのではないかと推測している。
A去年の12月15日の選挙でラマディの25か所の投票所の警備は地元部族が
 武装警備した。それを米軍は認めている。

 こういう流れから推測すると、米軍もまた容認するのではないかと思える。
いや、もっと言えば、米軍が積極的にこういう形にしたのではないかとすら
思える。
12月15日のラマディは、そのテスト・ケースであったと
捉え返すことができるのかもしれない。

とはいえ、まだまだ不確定要素も多い。
アンバール県で、地元武装勢力と米軍との戦闘が停止したとも聞いていない。
正式に停戦すればよいと思うのだが、それは無理なのだろうか。
アンバール革命軍により治安回復が進展するに従って、
実質的な停戦状態が拡大していくということなのだろうか。
スンニ派地元武装勢力といっても、一枚岩ではないので、
全体としての意思統一まで時間が掛かるということなのだろうか。
そういう意味では『停戦なき停戦状態の現出』と言えるのかもしれない。

アンバール県では、こうした状況は好ましいし、効果があると思える。
しかし五百万都市バグダッドはどうするのだろうか。
三大勢力の混住地であるバグダットでは更に問題が複雑かもしれない。
サドル派はシーア派とスンニ派の仲介を積極的に進めているようだから、
三大勢力の意思統一の下、バグダッドでもアルカイダ系一掃は、
それほど難しくはないかもしれない。


不安定要因としては、クルドが外国企業とクルド自治区内の
石油の契約を行っているという点は、その一つだ。
先送りされた憲法草案についての再度の国民投票が予定されている。
まだ正式内閣すら発足していないので、今後の進展を見極めたい。



 <情勢分析を深める為に>

私の情勢分析が正しいなどとは思っていません。
おそらくはかなり一面的なものだろうと思っています。
だから問題は、どの点が間違っているかを自覚し、
更により正しい、より深い情勢分析を目指しています。

・2005年秋の
・カラビラ、フセイバ、カイム、ラマディ
2005年秋でこれらの都市を拠点化しようとしたのはアルカイダの部隊です。
米軍はそれに対して掃討作戦を行いました。
米軍による市街地への攻撃で一般住民にも多大な被害が生み出されました。
数十万人にも上る難民も生み出されました。
一般住民の米軍への怨磋がより深まりました。
しかし一般住民のアルカイダ部隊への怨磋も深まったと思います。
街を拠点化しようとするアルカイダ部隊を支持している
一般住民が多いとは思えません。
少なくとも多数派だとは到底思えません。
米軍は憎いが、アルカイダが街を拠点化しようとすること自体が問題です。
だからアルカイダ摘発に協力する住民もいました。
しかし米軍が永久に街に留まる訳ではないので、
アルカイダによる報復を恐れるというのは住民の素直なコメントだと思います。

2004年4月のファルージャでの戦い以降、
アラブ・スンナの地元武装勢力の戦術は根本的に変化しました。
市街戦で甚大な被害を出して、
市街戦では米軍に勝てないこと。
一般住民への甚大な被害を生み出してしまうこと、
だからそれ以降は、攻撃戦術をヒット・アンド・ラン戦術へと転換しました。
・IEDによる攻撃
・IEDと待ち伏せ攻撃の組み合わせ
・迫撃砲を撃って、すぐ逃げる
・スナイパーによる狙撃

これらの戦術なら自らの被害を最小限に抑えることができるからです。
また、一般住民への被害も最小限に抑えることができるからです。

しかし、アルカイダ系は、都市拠点化という戦術を採り続けます。
米軍はそれに対して掃討作戦を行う。
これが、2005年のスンニ派地域で起こっていたことだと思っています。
地元武装勢力は、何度も何度もアルカイダに
都市拠点化戦術を止めるように要請しました。
しかしアルカイダ系は一切聞き入れませんでした。
だからそこ次第にアルカイダ部隊と地元部族や1920年革命旅団との間に
交戦が起きたのだと理解しています。

レジスタンスという矜持があるのなら、
一般住民への被害を抑えようとすることは当然です。
また、そうしなければ、一般住民からの支持を失います。
そして、アルカイダはそんなことは一切お構いなしです。
私はむしろ意図的に一般住民への被害を生み出すことを
自己目的にしているとさえ思っています。
米軍の掃討作戦により生み出される一般住民への被害を全世界に公表すること
それにより全世界のムスリムの怒りを生み出し、
自らの組織拡大、資金援助を得るという悪魔の計算です。

地元武装勢力がこのようなアルカイダと対決することは、
当然であり、正しいと私は思っています。


私は軍事的力関係なら最初からはっきりしていると思います。
一万五千から二万のスンニ派武装勢力と13万の米軍とでは
最初から勝負になりません。
そもそも米軍がスンニ派地域にいて、掃討作戦を行うからこそ
抵抗しているのであって、米軍が
・掃討作戦を止め
・スンニ派地域から撤退すれば、
大多数のスンニ派武装勢力は戦う目的自体がなくなります。

米軍が空爆を飛躍的に増大させていることは事実です。
アラブ・スンナの地元武装側もまた、
IEDや待ち伏せ攻撃、スナイパーによる狙撃程度の攻撃しか
できなくなっています。
これだけでは13万もの米軍に軍事的に勝利することはできません。


そういう意味では、消耗戦と言えるのかもしれません。

双方とも決定的な打撃を相手に与えることができません。

しかし、一般市民は日々生きていかなければならないのです。
何とかして金を稼ぎ、家族を養わねばなりません。
「生活の生産」を日々再生産せねばならないのです。

こうして、『妥協なき妥協』の方向へと進んでいるようにも感じます。

一挙に本質的な解決はもたらされません。
・スンニ派地域で
・スンニ派の治安維持部隊が
・治安を回復していく
・具体的にはアルカイダ部隊を摘発し、逮捕・拘束している

こういう方向性を私は肯定的にみています。
本質的解決ではないけれども、
一つの現実的解決の方策であると思っています。

こういう形になるまでにも
多くの紆余曲折があったと思います。
多くの犠牲があったと思います。
更なる犠牲を未然に防ぐ為にも
こうした努力をこそ積み上げ、
その先には、とりあえず、スンニ派地域から米軍を撤退させる。
<スンニ派地域から米軍を撤退させる>為の
ようやく辿り着いた一つの形だと思っています。


原則を明確にすることは重要ですし、
無原則的に妥協することも誤りだと思います。
しかし原則は、原則の為にあるのではありません。
その時々の状況に応じて、
新たな事態に原則を適応することは正しいことです。
問題は原則をどう適用するかであり、それは正しいのかということです。
原則は原則の為にあるのではなく、
一般住民の利害を体現しているものでもなければなりません。

ハマスの幹部が語っていました。
既成の合意には、ハマスの立場からは異論もあるが、
パレスチナの民衆の利害に適っている限りにおいて、
これに反対しないと。

アルカイダを摘発し、逮捕・拘束することは、
一般住民の利害に適っています。
現在のイラクでイラク人を殺しているのは、
米軍による『掃討作戦』による『付随的被害』や、
検問所における『誤射』

そして、その数倍の数の被害を出しているのは無差別テロです。
つまり、無差別テロは、イラク人にとって対決すべき敵だと思います。



http://www.geocities.jp/uruknewsjapan/1125-2005_Resistance_Report.html
 ラマディ:部族・宗教指導者、元将校が戦術一本化を提案
「アルカイダ・グループがラマディを避難場所としないよう説得する上で
その指導者と話しあう為に代表団を彼らの指導者のもとに派遣することに
している。彼らの避難場所にされると占領軍に攻撃の口実を与え
「私たちは米軍に市を崩壊させるための口実を与えないよう彼らに要請し、
その替わりに、他のスンニ派の街が戦闘の結果として被った苦痛から
市を救うため、適切と思われる戦術を採用することを促すつもりだ」と語った
イスラム・メモは、「イラクのあらゆるレジスタンス組織は、一つの戦法と
して攻撃して退却する、つまり『ヒット・アンド・ラン』の攻撃方針を採用して
きた」という元旅団長(准将)の言葉を報じた。
この司令官は、「ヒット・アンド・ラン」という戦術を使うことによって、
「米軍に損害を与え慌てさせることによってレジスタンスの所在地や、
どこを拠点にして作戦を遂行しているかを判らなくさせることができる」と
話した
司令官は、「しかし、ある都市に入ってそこを軍事拠点や攻撃作戦の基地に
することは、軍事的には愚かな行為であり、レジスタンスがどんなに大きな軍事
力をもっていようと、(敵にとっては)、その活動を終わらせることが容易に
なる。米軍戦闘機はラマディのような都市ならいくらでも爆撃し、24時間後には
瓦礫の街に変えることができる。それこそ占領軍の思う壺なのだ」と説明した
同司令官は(レジスタンスの)採用する作戦が正しく優れており、占領軍に
大きな苦痛と損害を与えていること、そしてその全てが都市や特定地域を本拠地
にしたり基地にする籠城作戦を採用していないことに注目している
しかし、今ラマディで起こっていることは理にかなっていない
アルカイダはカイムが破壊されたあと市内に流入してきており
私達はラマディの街が新たな基地にされるのではないかと懸念している
「私たちは全力をあげて占領軍を戦うにあたって、アルカイダ組織を含めて
レジスタンスを支持するが、そのような米軍攻撃が実行された時の市の運命と
何百人もの市民の死に関心を払わなければならない。
イスラム・メモ通信員は、米軍が数週間前に瓦礫にしたカイムから逃れてた
アルカイダ組織のメンバーが大勢ラマディに押し寄せてきているとレポートした
また同通信員は、アルカイダが他のレジスタンス組織から粘り強く繰り返された
訴えを拒否したと報じた」

「イラクの武装組織 対立が表面化」9/28
http://www2.asahi.com/special/iraq/TKY200509280323.html
「州都ラマディの住民で現地の事情を知るナワフ・アルオマル氏(27)は
 朝日新聞バグダッド支局の取材に「ザルカウィ派と(武装組織の)1920年
革命旅団が、支配権を巡って銃撃戦を繰り返している」と話した。
 8月31日付米軍広報によると、シリア国境カイムでも8月、ザルカウィ派と
 地元部族との衝突が起き、多数の死傷者が出た。
 ザルカウィ幹部とされる人物は声明で、自派と対立するカイムの部族を
 「裏切り者」として攻撃したと認めている。」

http://asyura2.com/0510/war76/msg/577.html

ラマディ アルカイダゲリラ400人の攻撃を受ける(コリエレ紙)
〜ビラを配って解散と?

アル-ザルカウィ抵抗分子、庁舎に発砲、検問所を設けビラを配布、その後解散

ラマディ発-アルカイダの覆面武装ゲリラおよそ400人が、
ラマディの米軍基地と市庁舎を攻撃。
3地区と市のキーポイントを占領後、検問所を設けて
アルカイダの署名があるビラを配布。
市街戦なきままおよそ1時間後、ザルカウィ指揮下のゲリラは撤退した。
ビラ
”イラクのアルカイダがラマディを制圧しつつある。
追随者たちはアメリカ人を焼き、武力で追い出し、
やつらの帰還を余儀なくさせるだろう。
イラクはアメリカとその同盟者たちの墓場になる”
路上で撒かれ、壁に貼られたビラの一部にはこう記されており、
地元のロイターは「彼らはラマディの主要道路と地点を制圧した。
ラマディ制圧のニュースは、アラブの情報サイトも確認している。
12月1日
http://www.corriere.it/Primo_Piano/Esteri/2005/12_Dicembre/01/ramadi.shtml


「アルカイダはカイムが破壊されたあと市内に流入してきており」
「アルカイダゲリラ400人」
その映像はアルカイダ自身が撮影した映像は観ました。
NHKの地上波でさえ放映されました。
「ある都市に入ってそこを軍事拠点や攻撃作戦の基地にすることは、
軍事的には愚かな行為」
「都市や特定地域を本拠地にしたり基地にする籠城作戦」
と「レジスタンスの司令官」は言っています。
戦略というより、逃げて来たと言った方が当たっているという感じです。
カイムでの市街戦はCNN映像で観ました。
確かに一般住宅を拠点にして米軍と銃撃戦を行っていました。
その家屋を空爆した時に、隣の一般市民の家族が亡くなっています。
「イラク・レジスタンス」は、
そのような「都市拠点化・市街戦」はしないと言っています。
このカイムの市街戦の担い手は
アルカイダの部隊ということで確定していると思います。
その根拠は、
・「アルカイダはカイムが破壊されたあと市内に流入してきており」
・「イラクレジスタンス」は「都市拠点化・市街戦」はしない
ということです。

「2004年のファルージャの栄光」を観念的に再現することを
目指しているだけなのかもしれません。
「過去の栄光」は、なかなか捨てられないものです。

カイムでは少なくとも九月以降数か月間は「拠点化」できたのではないか。

私はイラクのアルカイダと言われているものの実態は全く分かりません。
12月1日の映像で初めて「アルカイダ部隊」の実物を観ました。
カラシニコフとRPGを持った、ごくフツーのアンチャン達に見えました。

純粋にジハードに身を捧げたいという生真面目な若者もいるのでしょうが、
おそらくは、テロリストとは言えないような、街のアンチャンや、
チンピラ、ゴクツブシ、犯罪者なども交じっているのではないか、

問題は、
@アルカイダの構成メンバー、その実像ではなく、
Aアルカイダが「無差別テロを行っていると自らのサイトで公認していること」
Bそうである以上、米軍は「アルカイダ掃討作戦」に
 「一定の正当性」を持ってしまうことだと思っています。

米軍がアルカイダを意図的に泳がせて、
米軍の都合の良い時期に「掃討作戦」を行う、
そういう風に私は理解しています。

私が問題にしているのは、
<「口実」に使われているという構造そのものを断ち切る必要>がある
というです。
アラブ・スンナの人達は、身をもってそう実感しているのだと思っています。
反占領闘争と、同時にアルカイダとも闘争しない限り、
米軍は、「アルカイダ掃討作戦を口実」にして、
スンニ派の街を次から次へと破壊してきたからです。

・思想的にもテロリズムを否定する内実を有したレジスタンスであり、
・現実的にも、自らへの被害を止める為にも、

<テロリズムとは戦う質を持った反占領のレジスタンス>
具体的には、
現実政治のレベルでも
<アルカイダと戦うという質を持った反占領のレジスタンス>

私は、そういうレジスタンスなら支持します。
そして、私の全くの主観では、そういう方向へ向かっていると思っています。

こう言ってもよいのかもしれません。
反占領闘争は普遍的任務であり、
反テロリズムの戦いは、その中での特殊的任務であると。

ただ、私のいう反占領闘争は、武装闘争一本槍ではありません。
政治闘争と武装闘争との統一です。
スンニ派が二割の議席を有し、
更には与党ともなって、
スンニ派地域での、「合法的な治安維持活動を担う」ということは、
反占領闘争にとって、大いなる前進だと今の所、受け止めています。
まだ、その現実はこれから明らかになっていくのですが、

私は米軍をいかに軍事的に打ち負かすかという観点には疑問があります。
「停戦状態の現出」に期待していますし、
その過渡的形態として、「停戦なき停戦状態の現出」に向かっていると
多分に主観的願望を込めた情勢分析をしています。

米軍も馬鹿でもなければ、悪魔でもありません。
「ファルージャ 栄光なき死闘」という本を読み終えました。
2004年初頭、米軍は、ファルージャ内のジハーディストと、
一般市民をいかに切り離すかに苦闘しています。
「占領が根底」と言ってしまえば、それまでなのですが、
米軍は巨額のインフラ整備にも投資しているんですよ。
2004年初頭のファルージャ現地の司令官達は、
アメとムチを使い分けて、なんとか騒乱状態にならないように苦心しています。

シスターニ師は、無益な流血を避けて、根気よく待っています。
待ちの戦略です。
無益な流血を避けて、占領を終わらせる努力を軽視してはならないと思います。



私はチェチェンの悲劇について少しだけ知っています。
自分達がやってもいないテロを、自分達がやったと認める組織が実在しました。
「わたしに言わせれば、ラドゥーエフは、チェチェン人を冷酷無残なテロリスト
 国民とするロシアの宣伝を正当化する手助けをしているにすぎない」
「ラドゥーエフは、やってもいないテロ行為を自慢することさえあった」
「ワハビは自分たちの運動にチェチェン人をひきこむために、私達の常識では
 多額と思われる金―月に百ドルから二百ドル―をチェチェンの若者に与えて
 いるという話を聞いた。長老達はこうした動きを懸念して、村々から退去する
 ようワハビに命じたが、家族を養う為に単独で彼らの活動に加わる若者も少な
 くなかった」
「誘拐や殺人が横行し、石油泥棒がごろごろしている。そうした犯罪の解決に
 努力すべきではありませんか?」
「大統領警護隊は横行する誘拐や麻薬取引、マネーロンダリングなどの犯罪を
 厳しく取り締まる為に編成された機関」
「世間では政治がかつてなく大きな話題になっていた。武装強盗団、発砲事件、
 誘拐、そしてモスクワから流れてくる最新のデマ情報」
「マスハドフ大統領は立派な人物であるが、強盗団や私兵を擁する野戦司令官達
 に対し余りにも無力に思われた。明らかに内乱を恐れて、犯罪者を逮捕して
 裁判にかけるような、厳しい手段を取ることができなかった」
「バラーエフは生まれながらの人殺しだ。彼の手下も、いずれも人を殺した為に
 血の復讐を宣言されている無法者で、復讐者の追及から逃れる為にバラーエフ
 の仲間になっていた」
「バラーエフはロシアの情報機関から金を貰っている、というのが衆目の一致
 する所だった」
マスハドフ大統領は急進的な軍の指揮官達を抑える
 ことができないようだった。バラーエフのようなギャング団を逮捕することも
 サウジアラビア人の過激な野戦司令官ハッターブにチェチェン退去を命じる
 こともできそうになかった」
「いまでは誘拐ビジネスがまるで伝染病のように蔓延していた。バラーエフの
 ようなギャングが、ロシアの保安当局と結託」
「誘拐による犠牲者の80%がチェチェン人だった」
「6月になると、チェチェン国民はマスハドフ大統領にむかって、誘拐犯罪者の
 正体を明らかにし、彼らに戦争を宣言するよう要求した。しかし大統領は何も
 しなかった」
(「誓い」ハッサン・バイエフ)
http://ima-ikiteiruhushigi.cocolog-nifty.com/chechen/2004/11/post_1.html

現在のチェチェンでは、一方にはロシア軍による地獄。
他方には、バサーエフの下、完全にテロ組織と言われても仕方ない現状です。
一般市民は双方から被害を受けるだけの存在にまでなってしまっています。
反占領の戦いがいつも勝つとは限りません。
イラクの反占領闘争が、アルカイダやワッハーブ派などのジハーディストに
乗っ取られる可能性は今でもあると思っています。
今回のスンニ派民兵組織アンバル革命軍の登場は、
私には、イラクの反占領闘争が、ジハーディストに乗っ取られない為の
<一つの希望的実在>です。
だからこそ私は肯定的に捉えているのです。

現在のイラクのスンニ派地域では、チェチェンの悲劇と
かなりな程度<同一性>を有しています。
チェチェンの文章を読んでいると、
まるで今のイラクのスンニ派地域ではないかと思える状況も多いです。



http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Iraq/actual_state05-21.htm
「『連合軍』に対する攻撃が、全ての攻撃の75%を占める」
「一方、民間人の目標は、攻撃のほんの4.1%」にすぎないと言うことである。
「この現実は、新聞報道によって描かれた、ナルシスト的で、愚かで、邪悪な、
混沌と破壊に向けられただけの反乱という絵図とは著しく反する」のである。
(このCSISの調査期間は2003年9月から2004年10月)。
イラク国内での攻撃の75%が米軍および連合軍に向けられているという事実の
別の論証をニューヨークタイムズの中にも発見している。
2005年4月11日付けのニューヨークタイムズには国防情報局DIAの調査結果が
引用されており、2003年7月から2005年2月までの間の「攻撃目標(比率)
Target of Attack(Portion)」を表すグラフも、極めて明確に攻撃回数の75%
あるいはそれ以上が一貫して「連合軍」に向けられていることを示している。
攻撃の圧倒的部分が米軍と連合軍に向けられていることは、死傷者で見れば結果
が逆転し市民に対する攻撃が多数を占めることと矛盾しない。
CSISの調査に基づけば、「連合軍」の死者が451人、負傷者が1002人
であったのに対して、同じ期間の市民の死者は1981人、負傷者は3467人
で3倍以上を占めているのである。厳重に警備され、防護された米軍、連合軍に
対する攻撃に対して、無防備の市民を無差別に標的にする卑劣な攻撃が比較に
ならないほど簡単に多数の犠牲者を出していることは想像に難くない。
そのことが攻撃による市民の被害だけを一面的にメディアが取り上げる余地を
作っている。

私にとっての問題は
・一般民衆にとって、
・現状を改善するには、どうしたらよいかということです。

反占領という普遍的目的実現にとって、
現実レベルで一歩前進するには、どうすればよいかということです。

米軍が明日には、いなくなる訳ではありません。
米軍が撤退するには、米軍の面子を立てる必要があるというなら、
どしどし米軍の面子を立ててあげればよいではないですか。
米軍の立場に立って、米軍がスンニ派地域から撤退するには、
何が実現されればよいのか、考えることも必要だと思っています。

はらわたが煮えくり返っていても、
笑顔で手を振って、さようならと言えるような状況を
つくればよいではないですか。

一方では、アルカイダメンバーを既に数百人逮捕・拘束しているそうですから、
これこそ実績というやつです。
米軍を納得させられる素材です。

どうすれば米軍が停戦に応じるのか、そういう意味では、
一歩前進だと肯定的に受け止めています。

ファルージャの戦闘の後発見された「拷問部屋」の写真は見ました。
製造途上の車も残存していた「車爆弾製造工場」もあったと、
米軍は報じています。
私はそれは事実だと思っています。
「ファルージャ 栄光なき死闘」という本によると、
米軍は、
・電話の盗聴
・モスク内にも盗聴器
・携帯電話まで盗聴
 していました。

百のモスクを持つ街ファルージャで、
モスクのイマームが、
どういう内容の演説をしているかまで把握していました。
過激なイマーム追放を非難する部族長達や長老達に
その録音テープを聞かせた所、納得したと書かれていました。
スンニ派武装勢力側を美化するのは考えものだとも思っています。
占領さえなければ、過激なイマームに扇動されることもなかった
とは思うのですが、
ワッハーブ派の過激なジハーディストが影響力を持ってしまった。
旧バース党軍人ではなく、主導権を握っていたのは、
2004年のファルージャでは、ジハーディストだったと思うようになりました。
全イラクで「ファルージャを救え」という声が巻き起こった2004年4月。
2004年11月には、打って変わって、「ファルージャを救え」という声が
ほとんど聞こえてこなくなったのは、何故なのか。
私はずっと疑問に思っていましたが、
ファルージャで主導権を握ったのがジハーディストだったからだ、
ということが一つの大きな原因なのではないかと思うようになりました。
車爆弾製造工場もファルージャにあったからだと思っています。

レジスタンス十組織の統一司令部というのは、
一体今でも存在しているのでしょうか?
それすら疑問に思うようになってきました。

スンニ派民兵組織アンバール革命軍