http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/hardtalk/4841902.stm

<武装勢力は根本的に弱体化したと考えてもいいんでしょうか>

(ZAKI CHEHAB;Author Iraq Ablaze)
「弱体化しているとは言えません。
特にスンニ三角地帯の地元の人々は抵抗勢力の動きに
完全に協力しているからです。
また抵抗勢力だけでなく、
アルカイダのメンバーまでもここに潜伏している訳です。
そして投票に参加し、スンニ派の人々は
現在イラクの政治プロセスに参加しつつあると考えています。
しかしその中で、約束された計画が
実施されていないといった不満も高まっています。
その為暴力が続いている訳です」

<今大切なことを仰いましたよね。
この数か月間の間、大切な機会を失ったということですか>

(ZAKI CHEHAB;Author Iraq Ablaze)
「その通りです。
特に選挙中、大規模な不正行為、不公正さがあったと思います。
米当局はこの選挙で間違った戦略を採ったと考えられています。
この為、米は選挙結果に大きく落胆することになりました。
というのは、米が支援していた世俗政党のアラウィ氏の政党は20議席に
及ばなかっただけでなく、米が直接支援しているチャラビ氏の政党も、
チャラビ氏自身が落選するという結果になっています。
米はイラクの情勢を完全に読み誤りました」

(FAWAZ GERGES;Author The Far Enemy)
「米は選挙はイラクにおける抵抗の強さよりも、
脆さを示していると考えているようですが、
抵抗勢力を支援するスンニ派の指導者と抵抗勢力の指導者が
暗に、あるいは、明らかに何らかの合意をしていたことが分かっています。
米では、特に政権では、抵抗勢力をアルカイダ、そしてジハードとして
片付けようとする傾向がみられます。
しかし、これは事実ではありません。
米軍の司令官でさえも、抵抗勢力全ての中でアルカイダやジハードを訴える
人々が占める割合は、わずか7%から10%だとみているのです」
「結局、大切なのは、国の団結をどう作り出すかということです。
スンニ派約七百万人をどう政治プロセスに組み込むか。
結局イラクでの政治的な問題なのです。
米軍、連合軍の撤退を予定に沿って、
徐々に進めていくことが非常に重要なのです。
長く米軍が駐留すればする程、
アルカイダやジハードの問題が長引き、深刻化するのです。
スンニ派のアラブ国民を政治の機構に組み入れて、
挙国一致で抵抗勢力の問題に取り組む必要があるのです」

<スンニ派は既に選挙にも参加しましたよね。
だからスンニ派の受け入れというのはもう進んでいるんじゃないでしょうか。
ラマディ、ファルージャでは投票率が70%を超えましたね。
これらの都市はスンニ派武装勢力の牙城だった筈ですけれども>

(FAWAZ GERGES;Author The Far Enemy)
「ここが選挙で誤解のある部分だと思います。
スンニ派は選挙に加わり、議会でも議席を勝ち取りたいと言うでしょう。
しかしスンニ派は抵抗勢力を支援しています。
武器も抵抗も諦めたくないんです。
政治的にも、社会的、経済的、軍事的にも長いプロセスなのです。
投票したからといってスンニ派の大半が暴力や抵抗を諦めた訳ではないのです」

<この一年半、スンニ派の武装勢力も含めて、
さまざまな勢力と対話を続けてこられた訳ですけれども、
米軍の即時撤退要求ということでスンニ派が一枚岩になっている
という訳でもない訳なんですね>

(ZAKI CHEHAB;Author Iraq Ablaze)
「スンニ派の人達は米軍がイラクに駐留を
しばらくは続けることを認めるかもしれません。
しかしその為にはシーア派やクルド人と
同じ扱いを受けるべきだと考えている訳です。
スンニ派はシーア派やクルド人と分けて考えられることを拒絶するでしょう。
新しいイラクで同じように役割を果たしたいと考えている訳です。
そして何よりも停戦を実現し、正常な生活を戻すことを望んでいるんです。
地域が再建されれば、人々は恩恵を受けることになります。
インフラが整備されれば、それを喜ばない人はいません。
ただ、かつてイラク軍にいた人、バース党に関与した人達などは、
これらのプロセスには反対しているかもしれません」

<米軍は直ちに撤退の日程を明らかにするべきだという見解には>

(ZAKI CHEHAB;Author Iraq Ablaze)
「それについては、スンニ派もシーア派も合意していると思います。
スンニ派はカイロ会議で米軍の撤退の日時・タイムテーブルを
明らかにするよう合意したことを覚えています。
アメリカは確かにイラク人が自分達で国を守れるようになり、
国境を守れるようになったら撤退すると言ったんです。
しかし彼らが犯した最大の間違いというのは、
それを実現する為のシステムを作ることができなかったということです。
国を守れるような軍隊を作る努力を怠ってきた訳です。
イラクの軍隊は80年以上の歴史がありますが、
兵士の多くは単に給料が欲しいから軍に加わっているだけなんです。
このような状況では団結した、国を守る組織はできません。
多くの兵士は、それぞれシーア派、クルド人、スンニ派だといって、
お互いにいがみ合っているんです。
このような状態では米の望むような軍隊を作ることはできません」

<米軍が撤退したら、ザルカウィもイラクから追放されてしまう
というのは正しいと思いますか>

(ZAKI CHEHAB;Author Iraq Ablaze)
「そう思います。
シーア、スンニ、クルド、三つのグループが協力するのは、
必ずしも難しいという訳ではないということも分かっています」

(FAWAZ GERGES;Author The Far Enemy)
「米軍がイラクに駐留していることによって、
イラクにおける政治的な道のりに悪い影響が出ているということなんです」
「一部、ある状況でアメリカは、イラクにおける政治的な闘争を
過小評価している、そういう傾向があると思います。
問題は、地元レベルなのです。
イラクは幾つもに分かれています。
イラクにおけるアルカイダの活動は小規模なものに過ぎません。
非常に危険で多くの死者を出している、それは確かですが、小規模なのです。
ですから、全員が共に話し合う必要があります。
米軍、連合軍の撤退、そして人数を減らすということが話し合われていますが、
カイロ会議では、初めてシーア派、スンニ派、クルド人が
同じ場で話し合いを行ったんです。
そしてある程度の合意に達しました。
撤退の期限は明らかではありませんが、
米は直ちに撤退せよとは誰も言っていません。
予定表に沿って、次第に撤退を進めていく必要がある。
そして、社会的、経済的、政治的な投資を行う必要があると合意しています。
イラクは政治的プロセスによって自ら解決しなくてはならない
ということを理解しているのです。
つまりイラクで起こっている暴力の全てが、
テロとの戦いではないということです。
全員がジハードを訴えている人物だとは限りません。
イラクは分裂しています。
米軍の駐留によって、残念ながら、このような問題が大きくなっているのです。
地元の状況を理解する必要があります。
そうでなければ、ブッシュ政権は更に過ちを犯し、
暴力を生み、火に油を注ぐような事態が続くでしょう」

<確かにイラク駐留米軍の役割は見直すべきかもしれませんが、
一方で、イラクの国内総生産は4%の成長を示しました。
武装勢力の攻撃の八割は18県の内、4県でしか発生していないんです。
国民の三分の二は生活に満足し、来年はもっと良くなると考えています。
イラク情勢と米軍の役割について、否定的な側面ばかり取り沙汰されますが、
実際には積極的な面もたくさんあるのではないでしょうか>

(ZAKI CHEHAB;Author Iraq Ablaze)
「スンニ三角地帯はイラクの国土の三分の一を占めているんです。
そのような状況の中でバグダッドと他の大都市を結ぶ道路の治安さえ覚束ず、
また首都から自動車で20分しか離れていない空港への道も
危ないような状況なんです」

<内戦が発生する危険性はまだ残っていますよね>

(ZAKI CHEHAB;Author Iraq Ablaze)
「しかし米軍はイラクで治安を回復することに失敗しているんです」

(FAWAZ GERGES;Author The Far Enemy)
「米軍はもっと効率的になれるということを指摘したいと思います。
外国軍の駐留によって国民的反感を呼ぶのは確かです。
駐留によって他の面全てが目立たなくなってしまいました。
大規模な駐留によって米政権のイラク支援が
効果的ではなくなってしまっているのです」

<米軍の撤退が早すぎて、
イラクの分裂・内戦という事態に陥ったらどうしますか>

(FAWAZ GERGES;Author The Far Enemy)
「分裂は今も既に起こっています。
イラクで宗派の対立抗争が起きたらどうするかなどと語られますが、
今まさにそれが起きているのではないでしょうか。
イラクは宗派ごとに分裂しているのではありませんか。
米軍の駐留によって、イラクの政治、社会的状況が
複雑なものになってしまいました」

<米軍が撤退しても内戦は発生しないという根拠は>

(ZAKI CHEHAB;Author Iraq Ablaze)
「米は致命的な過ちを犯したということです。
フセイン政権が崩壊した時、派閥抗争の内乱状態になることは
分かっていたんです」
Iraq: Debating a new government (HARDtalk):BBC