<イラク市民レジスタンス>
 スローガンは、自由・平等・政教分離
・イラク労働者評議会労働組合連合(FWCUI)
・イラク失業労働者組合(UUI)(組織規模30万人)
・イラク女性自由協会(OWFI)
・イラク労働者共産党
・クルディスタン子どもの権利センター
 その他多数
 バグダッドに「前へ!」というラジオ放送局を構え、各団体が番組を放送

 イラク市民レジスタンス戦線のモアヤド・アフマド氏は、
「国際社会には3つの幻想があると思います。
・米軍がイラクで役に立つと考えていること
・イスラムの武装勢力に共感をいだく人たちがいること
・国連に期待したほうがいいという人
 私たちの経験からすると、それはどれもが幻想であり、
イラクの大衆を組織化して、自分たちで再建の努力をすることが
唯一の道だということです」

 イラク女性自由協会のホウザン・マフマウド女史は、
「政治的イスラム勢力が非常な勢いで伸びていて、女性の生活に口を出し、
 非常に生活しにくくさせています」
 イラク女性自由協会は、バグダッドとキルクークに女性の為のシェルターを
設置している。
 親族による『名誉の殺人』から逃れてきたレイプ被害の女性を保護している。
「女性は2級市民として扱われており、法律の力では解決できません」

 キルクーク、アルタザムン(連帯)地区
 アラブ、クルド、トルクメンの三民族一万四千人の住民が協力して自治を
行っている。
 連帯という町の名も住民投票で決定
連帯地区評議会アジズ議長
市当局へ働きかけ、電気・ガス・水道などの改善、仕事の提供などを実現させた
市民レジスタンスの協力により、識字学級や無料の診察クーポンなども提供

 バグダッド、アル・ジハード地区
 UUIによる衣類配布

 イラク労働者評議会労働組合連合(FWCUI)
・2003年10月 バグダッド 織物工場 支部結成
・キルクーク 北部石油工場組合集会
・2004年11月 バスラ 石油化学工場組合集会
 石油、ガス、電力などの基幹産業で組織化が進んだ
 民主的選挙で代表が選ばれている
・2004年11月26日 FWCUIバスラ支部第一回大会
 南部一帯から350名の代表が結集


「イラク市民レジスタンス」
 http://www.jca.apc.org/iraq/

「マブイ・シネコープ」
http://homepage2.nifty.com/cine-mabui/
VHS・DVD「イラク市民レジスタンス」32分3500円

  
 <私の感想>
「イラク市民レジスタンス」という存在自体を知らなかった。
私の推測では、おそらく、イラクの自由主義者、民主主義者、社会主義者、
非武装闘争派の共産主義者の統一戦線のようなものではないかと思われる。

 民族対立、宗派対立ばかりが、取り上げられるイラクなのだが、実は、
労働者階級という、第三の基軸が存在する。
いや、民族対立、宗派対立として現象している事象のその根底には、実は、
階級対立という根本的モメントが基底的動因として存在しているのだと思う。
部族社会といっても、実は、部族長は地主階級であり、一般部族民は、小作人
階級である。
 都市部での、労働者階級の労働組合への組織化こそが、社会の根底的動因に
なると思われる。

 選挙後、<イスラム復興派>か<世俗派>かという二大対立がクローズアップ
されているが、実は、労働者階級の組織化こそ、第三のより根底的な動因になる
と思う。
 とりあえず、反宗教派ではあるので、世俗派とは同一歩調がとれると思う。
 労働組合の組織化が進めば、一大勢力となると思う。
次第に力を付けるに従って、圧力も増大していくだろうと思われる。
また、社会的勢力として台頭するにつれて、現在は統一行動をとっていても、
種々の思想的潮流に分化していくとも思われる。




イラクの女性の現状について

 3/19(土)の朝日新聞の記事によると、バグダッドの街頭では、
女性の姿をほとんど見かけることはできなくなったと書かれていました。
 治安の極度の悪化により、つまり、誘拐、強盗、強姦という犯罪が蔓延して
いる為、女性が一人では、外出もできない状況だそうですね。
 その為、物売りで生計をたてている女性という貧困層にとっては、
大打撃だという記事を読んで、憂鬱な気持ちになりました。

 バグダッドでは、女性が一人では外出もできないとは、リバーベンドの
「バグダッド・バーニング」を読んで、知ってはいたのですが、、、

・戦争による混乱、経済状態の悪化、高失業率、低賃金等々が原因で、
 若者を中心にイスラム原理主義過激派にリクルートされるという状況。
・精神的支柱を求めて、宗教に回帰する。
 このような条件により、イスラム復古勢力が勢力拡大を果たしつつあると
思っています。

 今回の選挙では、法律で三割以上の女性議員が誕生しました。
イスラム世界では、断トツのトップに躍り出ました。

 もともとイラクは、イスラム世界でも、一、ニの世俗国家でした。
しかし、イスラム復古勢力が跋扈し出しているというのも事実だと思います。
 選挙後、
・アラブ民族とクルド民族の民族対立
・スンニ派とシーア派の宗派対立
 がクローズアップされていますが、
・<世俗派>と<イスラム復古派>の対立
 という観点も重要だと考えています。

2004年3月8日の国際女性デーに、イラクのいくつもの女性団体等がデモを行い、
イスラム法シャリーアの制定を破棄させようと運動を行いました。
この決議137号は、結果的に見送られましたが、予断を許さない状況です。
力関係によっては、シャリーアを法体系に組み込むことが普段に目論まれている
と思います。

 イラク女性自由協会(OWFI)のホウザン・マフマウド女史は、
「政治的イスラム勢力が非常な勢いで伸びていて、女性の生活に口を出し、
 非常に生活しにくくさせています」
 イラク女性自由協会は、バグダッドとキルクークに女性の為のシェルターを
設置しています。
親族による『名誉の殺人』から逃れてきたレイプ被害の女性を保護しています。
「女性は2級市民として扱われており、法律の力では解決できません」

 ハディール・ジャワッドさんは、親族からの『名誉の殺人』から逃れて、
イラク女性自由協会のバグダッドのシェルターに逃れました。
そしてその後、現在では、バグダッド地区の責任者となり、国際女性デーには、
数百人の女性をデモに組織し、デモの先頭に立ちました。
「最初はベールで顔を隠し目立たぬようにしていた。おどおどした感じで
 ほとんどしゃべらなかった」
「ベールを被り自分の身に起こったことも言えなかった女性が集会を呼びかけ
 デモの先頭に立つ。
 一人の女性が自立していく物語はそのままOWFIの歴史を形作っている」

 イラク女性自由協会は、日仏などの連帯組織からのカンパで、
バグダッドに市民ラジオ局エル・アル・アマム(前へ!)を開局し、
「女性の自由」という番組を放送しています。
しかし、ラジオ局の電波はバグダッドの一部でしか聞くことができず、
更なる出力の増大を計画していますが、資金がありません。
また、若者は、ほとんどラジオを聞かず、テレビを見るという問題もあります。
女性の為のシェルターはバグダッドとキルクークの二箇所にありますが、
ナシリーヤやバスラでも開設の必要がありますが、資金がない状況です。

  また、代表には、暗殺予告、脅迫が何度も行われています。
アフガニスタンでは、女性運動の代表が実際に殺害されています。
 
 ちなみに、丁度現在、イラク女性自由協会の代表が来日しており、各地で
講演を行っています。


 出典:「イラク市民レジスタンス」MDSフォトレットNo.2 (667円+税)
 http://www.mdsweb.jp/doc/magazine/riron.html

 このブックレットによると、イラクでは「売春は社会的現象になっています」
と書かれていました。
 また、イスラム原理主義過激派が、
「美容院に爆弾を投げ込み逃げ出してきた女性を捕まえて髪を切り、
 酒やCDの店を爆破しています」とも書かれていました。




イラク市民レジスタンス part 2

2005年3月18日
イラク自由会議(IFC)結成

「IFCは米軍の占領やイスラム政治勢力によってもたらされる
社会的な混沌の中で私達が示す対案です。
IFCは政教分離によって民衆が生きるに値する
威厳ある社会を築こうとしている。
それは自由と権利を求める女性、労働組合、学生の闘いとして
二つの国際的なテロに対して力を結集し闘いを続けている」
(イラク女性自由協会(OWFI)ホウザン・マフマウド)

イラク自由会議(IFC)の目的
宗教・民族を問わない
民主主義に基いた
政教分離の政治体制をめざす

アメリカの占領・イスラム政治勢力の台頭に反対
武装闘争ではなく政治的・社会的な運動として闘う

「IFCの提起している政策・方針は現状を変えるにふさわしい
正常な市民社会を回復するものと歓迎されている」
(イラク自由会議(IFC)アザド・アフマド)


<学生達の闘い>
2005年3月15日
バスラ大学の学生達がピクニックを楽しんでいる最中
サドル派の武装民兵に襲われ、
キリスト教徒の女子学生が重傷
彼女を守ろうとした男子学生の一人が殺される。
これまでにもイスラム政治勢力の抑圧を受けていた学生達は
この悲劇を機に立ち上がった。
抗議行動を主催したバスラ大学学生活動委員会
「学生、市民数千人が集まりました」
(ジクラ・ファイサル)
クルド自治区のスレイマニア大学での連帯スト
ついにイスラム政治勢力より謝罪を引き出し、学内から一掃した。

「このバスラ大学の勝利は、
人々に非武装・非暴力の闘いの力を実感させる機会となった」
「つまり人々はイスラム主義者達のいかなる圧迫も許さない。
そこから自由になりたいという思いにあふれていたのです。
このように彼らの企みは決して民衆に受け入れられず
必ずはねのけられる事だと思います」
(イラク女性自由協会(OWFI)ホウザン・マフマウド)

スレイマニア大学での大学民営化反対デモ
三千名以上が参加し、四十日間の座り込みも敢行
映像からは女子学生もデモに参加していることが分かる
九月には各地の学生代表が集まり、全国学生連合が結成
IFCに加盟


<女性達の闘い>
2005年8月バグダッド
憲法へのシャリーア導入に反対

イギリスのテレビ番組にも出演
「彼女達は女性の権利、新憲法批判、欧米占領軍の撤退を訴えている。
『占領の継続はイラク民衆にとって完全に拒否されているものです。
私達は兵士や戦車によって日々屈辱を受けています。
人を殺さなくとも、彼らは常に私達に屈辱を与えています』
(イラク女性自由協会(OWFI)ヤナール・モハンメド)

イラク女性自由女性協会は、新憲法はアメリカの占領を正当化し、
女性差別を合法化するものとして厳しく批判している。

また、この番組にはイラク女性自由協会イギリス代表のホーザンさんが、
政府高官と共にスタジオ出演した。
この憲法は女性の地位を保証するものだという政府側の意見に対し、
(イラク総領事アル・アルバヤティ氏)
彼女は真っ向から反論した。
『女性はテロの脅威にさらされ、基本的な権利を保障されていません。
憲法の起草も民族や宗教・部族的に分断して
支配勢力の都合で選出された人々が進めています。
こんなものは私達にとって何の解決にもなりません』
(イラク女性自由協会(OWFI)ホウザン・マフマウド)

2005年3月キルクーク
国際婦人デーには、集会、デモだけでなく、
写真・絵画展とコンサートも企画


<団結する労働者>
2005年4月バグダッド
FWCUI第二回大会
女性の参加者が多いのは、男女平等を掲げるFWCUIの特徴ともいえる。
戒厳令の敷かれている中、
全国各地から二百名以上の組合代表、活動家が結集
(イラク労働者評議会労働組合連合(FWCUI)議長ファラー・アルワン)
(イラク失業労働者組合(UUI)議長カシム・ハディ)

2005年5月1日
イラク各地でメーデーのデモ
バスラ・ナシリア支部「占領反対、テロリズム反対」
石油化学労働組合
学生活動委員会
ホームレス協議会バスラ支部
「バスラのホームレス一万五千人を代表しメーデーを祝福します」
「私達は家を失い、瓦礫の中の生活を強いられている」
「ホームレスの家族の為に闘い続けています」
「労働者は団結してこそ一つの力になる」
(FWCUI支部長アリ・アッバース)


<広がる国際連帯>
2005年6〜7月USLAW全米ツアー
AFL-CIO傘下の反戦団体USLAW(アメリカ反戦労働者の会)参加者約百万人
FWCUI:アムジャッド・アルジョハリ
Amjad Aljawhary
Federation of Worker's Councils and Unions in Iraq
speaking in Minneapolis;MN
Falah Alwan:President,FWCUI
全米25都市をまわり、各地でイラクの状況を報告し、占領反対を訴えた。
「初めて知るイラクの民主的な運動に、集会の参加者達は驚き、共感した」

2005年7月AFL-CIO全国大会
米軍の早期撤退を求める決議が満場一致で採択
(FWCUIは大会に招かれスピーチを行う)

フランス、日本には既にIFC連帯委員会が存在

2005年9月日本
IFC議長サミール・アディル氏は
憲法草案に強く反対を訴える
「この憲法は表現が全て世界人権宣言の考えに反しています。
しかもイラク社会を部族主義、民族主義、宗派主義と定義するものです。
IFCは占領とテロの両方を終わらせる為に結成されました。
この憲法は占領を正当化するもの。
ですからIFCはこの憲法と占領を一つのものと捉えて拒否します」
「イラクには今25の衛星放送テレビ局があります。
その全てが民族主義者とイスラム主義者の放送局です。
IFCは宗教や民族ではなく、「人間」という定義を我々に与えます。
ですが我々にはこれらを伝える衛星放送がないのです」

IFCは今、衛星放送によるテレビ局の開設を目指している。
「これらが実現できれば半年で我々はイラク第一の勢力になると保証します」

「IFCの主要メンバーは、
日常的に脅迫や殺されそうな危機を何度も経験しています」
(IFCアザド・アフマド)
実際殺害事件も起きている。
都市部では治安が非常に悪化し、デモの開催すら危険を伴う。
「何故なら自爆テロや爆破事件が相次ぎ、とても危険だからです。
デモはこれらのターゲットになります」
(IFC議長サミール・アディル)


ストリート・チルドレンが急増
NGOの調査では、バグダッドだけで
七千人の子供達が麻薬中毒になっているという。
「イラクでは麻薬中毒だけが子供の問題ではなく、
孤児、性的虐待など様々な問題が子供達に集中しています。
私達IFCは自らをイラクの民主的変革の対案と位置づけています。
だから子供達の深刻な状態への対案も持たなくてはなりません。
子供保護センターを進めてますが、課題は山積みの状況です」
(子供保護センター:アザドさん)


2005年9月24日
米英日カナダ、イラクなど世界各地で反戦行動
日米の現地にはIFCメンバーも参加
IFC主催デモにバグダッドで六百人、バスラで三千人
世界の反戦運動との連帯を示した。
2006年1月には日本でIFC連帯の世界会議が予定されている。

「私はイラクというローカルな立場ではなく、
国際的な視野に立って発言しています。
社会主義体制が崩壊してからも人道的な運動は沢山ありました。
しかしそれらは分裂し、統一した闘いが組まれていません。
このIFC世界会議をステップに国際的な戦線を構築することで
世界の運動に一つの方向性を与え、大きな力になると思っています。
これはアメリカの新世界秩序に対決する大きな戦線となるでしょう」
(IFC議長サミール・アディル)



「イラク市民レジスタンス」
 http://www.jca.apc.org/iraq/

「マブイ・シネコープ」
・VHS・DVD「イラク市民レジスタンス part 2」30分3500円
http://homepage2.nifty.com/cine-mabui/video_reji2.htm

・VHS・DVD「イラク市民レジスタンス」32分3500円
http://homepage2.nifty.com/cine-mabui/



 <私の感想>
非暴力の反占領闘争に対して、私は今の所、否定的な要素を見い出せません。
つまり、ほぼ全面的に支持します。
非暴力とはいっても、現在のイラクでは武装自衛は致し方ないと思います。

イラク労働者共産党とは、どういう組織で、
どういうイデオロギーなのかも分かりません。
おそらくは、イラク共産党からの分派なのではないかと推測しています。
イラク共産党はソ連派だったと思います。
その分派もおそらくはスターリン主義なのだろうと推測しています。
私はイデオロギーとしてのスターリン主義は支持しません。
しかし、そんなことは、現状においては全く問題にもなりません。
イラクの現状において非暴力の反占領闘争は素晴らしいと思っています。
特に、労働組合にはストライキという闘争手段もあります。
労組組織率がどの位なのかも分かりませんが、
イラク労働運動の主導権を握り、ゼネストを行えるまでの力量をつければ、
ゼネストという闘争手段もあります。

クルド自治区のスレイマニア大学が
バスラ大学と連帯のストをうったということに注目しました。
つまり、民族・宗派を超越した運動だということです。
イラクでは、民族・宗派での分類ばかりが目に付きますが、
・民族・宗派を超越した
・世俗派の
・非暴力の
・民主主義的な
 運動であることに、私は大いに期待します。

バース党政権下ですら、大学内では、バース党学生組織より、
共産党の学生組織の方が有力であったと酒井啓子女子の著作に書いてありました
やはり、大学構内という空間では、特殊的に左翼が優勢なのだろうと思います。
イヤリングを付けてジーンズやスカート姿の見るからに世俗的な女子学生達だけ
でなく、ヒジャーブを被った宗教的な衣装の女子学生もたくさんデモ行進して
いました。

部族長というのは、同時に大土地所有者であり、地主階級です。
下層部族民というのは、同時に小作人であり、小作人階級です。
農村における、階級対立。
産業においても、資本家階級と労働者階級の階級対立があります。
民族・宗派という対立軸だけでなく、
階級対立という対立軸もまた確かに存在しています。

非暴力、世俗、民主的、こういう組織こそ、選挙闘争にも取り組めばよいと
私は思うのでが、占領下の選挙は欺瞞的で、ボイコットするという。
私は、たとえ欺瞞性のある選挙でも、議会闘争にも参加し、
反占領闘争の一手段として位置づければよいと思うのだが、、、

イラク市民レジスタンス