「KHALED EL-MASRIさんは、現在ドイツ在住、
 弁護士を通じてCIA元長官を訴えました。
 エル・マスリさんの米国入国は認められていません。
 訴えた理由をZDFに語りました。
 『何故あんなことをされたのか知りたいのです。
  公式な謝罪をして欲しい』
 弁護士は六日、CIA元長官に対する訴えの内容を発表。
 その中で拉致の責任はテネット元長官にあるとしています。
 エル・マスリさんのように解放されたケースは稀だということです。

 『解放されたのはエル・マスリさんを含めて二人だけです。
  しかし我々は同じような扱いを受けた人が他に
  150人から200人いるという証拠を掴んでいます。』
 (ACLA:American Civil Liberties Union)

 事件は氷山の一角に過ぎないといいます。

 テロとの戦いでは国際法上許されない手段が用いられているというのです。

 『飛行機の中で麻酔を注射されました。
  アフガニスタンの独房で床に倒され蹴られました。
  ひどい環境下で拘束されていたのです』
  (KHALED EL-MASRIさん)

エル・マスリさんは損害賠償を求めています。

 一方アメリカはテロとの戦いではどのような手段も厭わないとしています。

 アメリカのライス国務長官はメルケル首相との会談で拷問は許さないと述べ
 ましたが、ヨーロッパとはそもそも拷問についての考え方が違うようですね。

 同時多発テロの後、米政府内は容疑者の尋問がどこまで許されるか
 検討が行われ、新しい既定が設けられました。

 米司法省、国防相、ホワイトハウスの文書では、
 『拷問とは臓器不全や身体機能のマヒ、死亡など
  重篤な傷害を伴う身体的苦痛を与えるもの』

 この定義は国際的な合意とは異なります。

 『国際的なテロという新たなる脅威に直面し、捕虜の尋問についての
  ジュネーブ条約を厳密に守るのは時代錯誤である』

 この考えに従えば、CIAの元局員が実際に行ったと認めた
 鎖で縛り、水を浴びせ掛け、溺死するかもしれない恐怖を与えるやり方も
 規定に沿ったものということになります。

 ライス長官はCIAにより多くの人命が救われたと言いますが、
 つまり目的の為には手段を選ばずということなのでしょうか。

 もちろん、こうした尋問を通して得られた情報により、
 テロが阻止されたケースはあります。
 しかし人権団体は、だからといって非人道的な拷問が
 許される訳ではないとしています。
 更にこうしたやり方はアメリカへの憎しみを増幅させ、
 テロに走る人間を増やし、テロの危険性を高めることになるとしています」

誤認拘束:CIA元長官を提訴:ZDF (2005.12.6)