変化の真っ只中にあるエジプトです。
しかしながら本物なのでしょうか。


人々が公に対立候補を支持しています。
新しいやり方を模索しているエジプトです。
この地域において民主主義はこれまで夢といった存在でした。
フセイン政権の崩壊は中東に新しい夜明けがもたらされると考えられました。
エジプトが民主主義の先頭に立つと思われていました。

「民主主義とは何でしょうか。これは嘘です。本物ではありません。
 そこで選挙をボイコットします」(GEORGE ISHAQ:Ketaya Movement)

「神の法則を基盤にすべきだ。我々はイスラム国家を望んでいます」
(Dr.MOHAMED MORSY:Muslim Brotherhood Parllament Leader)

 女性を排除しようとした行動によって、
逆に彼女達が政治に関わるようになりました。
「殴打されました。女性をいやらしく触りました」
(RABAB EL-MAHDI:Teacher,American University in Cairo)

「あの映像にショックを受けました。
 本当にショックを受けたのはデモ参加者に対する警察の暴力です。
 エジプトの女性が辱めを受けました。嫌がらせを受けました。
 ある女性は通りを引きずり回されました。服を剥ぎ取られていました。
 エジプトの人々には受け入れられません」

「ポピュリストが余りにも人気を集めてしまったのかもしれません。
 独裁者にチャレンジしたことによって、代償を払いました。
 拘束されたり、政治的に嫌がらせを受けたり、自由を失ってしまいました」
(AYMAN NOUR:Presidental Candidate)

「エジプトはアラブの世界において、教育面、政治面、社会・経済学的にも
 指導者と考えられていました。しかしながら、民主化ということでは、
 皮肉なことに、エジプトはリーダーではありません」
(Dr.JOHN L.ESPOSITO:Ctr.for Muslim-Christian Understanding:
Georgetown University)

エジプト人の五人に一人は失業しています。
五人に二人は二ドル以下で一日の生活を送っています。

エジプトで一番人気のある野党勢力は顔を見せることができません。
政府が本当に恐れるムスリム同胞団
過激派の根幹は書店に見い出すことができます。
サイード・クトゥブの本
ムスリム同胞団の初期の指導者
同胞団はエジプトでは非合法組織です。
クトゥブの本は何百万人というエジプトやイスラム社会で愛読されています。
エジプトの刑務所には何万人もの同胞団のメンバーが収監されています。
今日、同胞団は暴力を放棄すると主張しています。

エジプトは今、開かれた国になりました。
公の場でデモができるようにもなっています。
しかし、行方不明になった人々の行方はいまだ分かっていません。
公には非合法組織である同胞団、しかしその存在は公然たる秘密です。
同胞団は病院やその他の社会サービスを運営しています。
非合法とはいえ、主流派の政治運動にも参加しているのです。
最大の野党となっています。
しかし、公式にはメンバー達は無所属ということになっています。
<同胞団が主張していることは何でしょうか>
「イスラム法が適用されることです。
 多数派がイスラム教徒なんです。
 イスラム国家となって、何が悪いんでしょう」

エジプト憲法では、宗教政党の存在を許さないのです。
「恐れてるんです。民主主義を使って、イスラム政党が
 権力を獲得する可能性があるからです」
一般のエジプト人もそれを恐れているようです。

今の所、同胞団とムバラク政権は不安定な共存関係にあります。

ケファイア(もうたくさんだ)
イラク戦争に反対するディスカッション・グループ
デモは非合法で、非常事態法により規制されている
ムバラク大統領は就任以来、非常事態法による統治を続けてきました。
デモを禁止し、裁判もなく人々を拘束できます。
全ての政党の許認可権限を政府が持っています。
「エジプトは警察国家なんです。
 48時間にわたり、検察に引き渡される前に取り調べをすることができます。
 暴行、虐待、拷問、鞭打ち」
ケファイアは「ムバラク政権を存続させる為の陰謀に過ぎない」とボイコット
エジプトの人々は米に対して必ずしも好感を持っていないのです。
ブッシュ政権は、エジプトの選挙を
「中東における民主主義の一つの成果だ」と述べています。
エジプトの人達は米は、長きにわたる独裁を支え、
イラクを占領していると米を非難しています。
このデモは、ブッシュ大統領にも、うんざりだというメッセージを
打ち出す為のものです。
エジプトの改革派はエジプトの人達の手によって改革を成し遂げたいと
語っています。
既に二十以上の組織がケファイアに参加しています。
八千万人の国で、数百人から数千人が集会に参加するに過ぎません。
抗議行動参加者より警察官の数の方が上回るくらいです。
数ヵ月前には考えられなかった挑戦姿勢を見せています。
警察は、明らかな挑発行為を前にカメラの前で自制しています。


 投票日
「悪意に満ちた行動は見られません。
 ただあらゆる所にムバラク大統領の顔写真が掲げられているのは違法です」
 投票率は僅か23%に過ぎなかったのです。
「公務員をバスで投票所へ運んでいた」
「ただの茶番劇です。民主主義なんかじゃありません」
「政府はたった一日の擬似民主主義さえも我慢できないんです」
「それでも何千人ものエジプト人にとって、
 この日が実現したこと自体驚くべきことです」

 選挙結果:88.6%の得票率


 砂漠を旅する人は蜃気楼に注意を払います。
 本物に見えますが、しかし実際にそこに到達する前に消えてしまいます。
 エジプトの民主主義も同様です。
 しかもはるか遠くの蜃気楼です。




 エジプト総選挙:第三回目の投票(2005.12.2)アルジャジーラ

 過去二回の選挙で(1074人が立候補)
・与党国民党:195議席
・ムスリム同胞団:76議席
・その他野党:11議席

・総選挙の第三回目=最終の投票
・9県
・一千万人を超える有権者
・1700人を超える立候補者
 36人:与党国民党から立候補
 49人:ムスリム同胞団
 57人:その他野党

 警官隊により一人が射殺され、70人が病院へ運ばれました。

ダクハリーヤ県では有権者が投票所に近づけないように
一部の候補者が杖や武器で武装した人々を動員
「こんなことをしていい筈がありません。あの人達は刃物も持っています」
数多くの投票所が意図的に閉鎖されたり、
一部では警官隊が投票所を取り囲んで、投票を妨害
それは特にムスリム同胞団の候補者が強い選挙区で行われました。
「朝の八時から邪魔しています。文句を言うと逮捕されそうになりました」
「警察官が私が投票所に入るのを妨害しました」

「選挙管理委員会に全ての法的措置を申し立てました。
 司法省にも訴えます。これは大統領の公約に真っ向から背く行為です」
(ハーニ候補:ムスリム同胞団)

カフルシェイクではアルジャジーラの取材チームが一時警察当局に拘束され、
撮影したビデオ・テープが破棄されました。

マンスーラとドゥミエッタの街では治安警察が投票所を包囲して、
投票を妨害しました。

人口密度が高く、有権者数の多いナイル川下流のデルタ地区
多くの投票所の周辺では、選挙を監視する裁判官の身辺警護という理由で
治安警察が配置されました。
しかし実際にはその為に有権者が投票所に入ることができなくなりました。

過去二回の投票と比べて、治安警察が動員されたことが、
今回の最大の特色といえるでしょう。
治安警察が介入してことで、
悪名高い2000年の総選挙が繰り返されたと評する人もいます。

与党国民民主党が安定多数を確保する為には、第三回投票において、
百議席以上確保しなければならない情勢にある為だと分析しています。

EGYPT:A TEST CASE FOR DEMOCRACY :CNN