ジャーナリストの平田伊都子女史の報告。

 フセインの唯一の弁護士であるハリル・ドレイミ氏は、
アンマンにいるフセインの長女のラバドに雇われている。

 ハリル・ドレイミ氏へのインタビュー

<フセイン大統領は一時間も喋ったんですか>
「ええ、実は多くの場面がカットされていました。
 編集の専門家がいて、放送する段階で編集が加えられていました。
 生中継されていた映像は、実はコントロールされていたんです。
 私はこの裁判で合わせて三回発言しました。
 検事の発言に対して反論したんです。
 法廷では検事は我々の敵です。
 彼は犠牲者の為に発言しますが、我々は被告人の為に発言します。
 しかしその我々の発言はテレビでは放送されませんでした。
 また休廷の時、大勢の兵士がフセイン元大統領を取り囲んで、
 乱暴に引きずっていきました。
 その場面もまたテレビでは見られませんでした。
 法廷の中では映像に映らない場所にチャラビ氏などの政府高官が大勢いました。
 イラク移行政府は裁判にかかわっていないと主張していますが、
 これは事実を語っていません。
 政府が司法・行政・立法、この全ての権利を握っている状況なんです。
 法廷の中は政府によってつくられたものです。
 その目的は裁判の捏造なんです。
 何もかもがまるでハリウッド映画のようでした」


 アルジャジーラでは、これは20分遅れで配送されてきていますと
三回くらいアナウンスがあった。
カメラは二台あって、カメラマンはアメリカ人。
アメリカ人の超スーパー編集マンが、編集して、それを送っていた。
20分間は編集とカットの時間だった。

法廷の中にも米兵がいて、仕切っていた。

・裁判長はクルド人
・検事五人はシーア派
・被告八人はスンニ派
 平田女史は、
「どう考えても、これは政治的リンチ」
「10月19日という日付を設定したのは米占領当局」
「米自身の発表によれば、この裁判セットをつくる為に米は160億円投資した」
「判事、裁判長はド素人、一年間かけて即席養成した」
「給料、特別手当も貰っている」
「弁護団も給料を要求したが、否決された」
(被告達は資産凍結されているので、給料を貰っていない)
「急ごしらえのハリウッド製の裁判劇」

 フセイン弁護団のサードゥーン弁護士が、10月21日に殺害される。
「拉致したのは内務省の人間だとはっきり本人達が言っている。
 イラク内務省諜報部のある階は、イランの諜報部が占めている。
 ある階は、バドル軍が占めている。
 結局バドル軍がやったと本人達も声明を出している」

 10月25日、イラク弁護士協会(2000人)が
国際監視団の下で、国際法廷を開くべきだと提案するも否決される。

 ヨルダンの弁護士協会(800人)が、イラクの弁護士協会を支援。
フセイン支援弁護団の会合(ヨルダン 10月25日)
サーレハ会長は、
・正当な理由なしにイラクに武力行使したことは、戦争犯罪
・アメリカこそが戦争犯罪人として国際法廷で、ICCという国際刑事裁判所で
 裁かれるべきだと提案
 
 前団長のジアード氏は、
・占領下における住民の裁判は、国際法上、ジュネーブ条約上許されない。
・合法な国際裁判を開くべきだと提案

 フセイン支援弁護団(ヨルダン)イッサム・ガッザウイ弁護士は、
「私達は大統領が起訴されないように尽くします。
 彼は今でもイラクの大統領です。元大統領ではありません。
 ブッシュ大統領が終戦を宣言した時に、その戦争は終わったんです。
 国際法によると、その時点で、大統領は釈放されるべきだったんです」

イッサム氏は、決してフセイン支持者なのではなく、
あくまでも法に携わる人間として違法性を主張している。
法解釈という論理的な話をしている。
前の憲法は生きている。
だからフセインは今も法的には大統領。
そういう解釈。

「フセイン支援弁護団」というのは、フセイン支援ではなくて、
フセイン弁護団を支援するということ。
命懸けの弁護団を支援する弁護士の団体ということ。
弁護士が弁護士として当たり前にできなければならない活動が、
今のイラクではできないので、支援するということ。
フセインを支援することと混同されているようだが。


<日本人に求めることは>(ドレイミ氏へのインタビュー)
「我々は日本の方々にイラクで何が起こっているのか、
 その真実を知ってもらいたいんです。
 イラクはアメリカに破壊され、そして占領されている状態です。
 イラクは国際連合のメンバーです。
 世界中にとってイラクは、中東のバランスを保つ意味でも重要な国の筈です。
 なのに、いわれもない侵略が行われたんです。
 これはジュネーブ条約に反します。
 また、国連憲章にも反する行為なんです。
 アメリカのイラク攻撃は法に反した、正当性に欠く行為だったんです」


10月10日、国連の国際的人権侵害を調べる会のレアンドロー代表が報告書を提出。
フセイン裁判は司法の独立を侵害する、非合法なものと警告を発している。
・占領期間中に裁判を行っていること
・米占領当局がスポンサーとしてお金を出している
・明らかにフセインを死刑にする為に裁判が行われている
 これらは、司法の独立に反し、公正でなく、非合法である。
 その上で、国連が指導する国際法廷を開くことを提案
 この提案は安保理に上がってこない。




 第二回公判

「(コーラン朗読)
 ここは以前、軍の施設でしたが、改築されて裁判所になりました。
 被告の権利として施設の管理の状態を問いたい」
<仰る通り我々が管理してます。まず弁護士の任命書に署名して下さい>
「サインしますよ。たやすい御用です。
 法廷に入る前に弁護士に『ペンを持っていない』と伝えてます」
<ペンが必要なら用意します>
「しかし何故ペンや用意した書類を私から没収したのですか。
 ペンと紙がないのに、どうやって抗議するのですか」
<ペンと紙を用意します>
「ただの白い紙が欲しいのではありません。
 拘置されている地下室に重要なメモが置いてあるのです」
<そメモは保管されています。
 裁判が始めれば持ってきます。心配しないで下さい>
「法廷に入るまで手錠されていました」
<その手続きは私も批判します>
「このビルのエレベーターは故障中でコーランを持つ手は手錠されてました。
 米軍の態度も適切ではありませんでした」
<警察・警備員に注意しておきます>
「裁判長閣下、注意するだけでは駄目でしょう。
 命令して下さい。
 私達の国なんですよ」
<法律を守るよう注意します>
「貴方はイラク人なのですよ。
 誰が主権者だと思っているのですか。
 彼らは外国から来た占領者、侵略者なのですよ。
 正しいことをするよう命令しなさい」

(ここでテレビはカットされる為、この後の激しい遣り取りは
 テレビを見ている人々には分かりません)BBC

(アメリカはこの裁判の映像を逐一検閲しています)F2

「フセイン裁判の裏側」:ニュースの視点(TBS)