NHKBS(2005.11.8(火)放映)

 湾岸戦争時にはイラク寄りの立場。
9・11以降は、米による政治・経済援助と引き換えに、国内テロリスト一掃政策
人口2200万人。世界最貧国の一つ。
1990年南北統一。その後も内戦継続。
湾岸産油国の一人当たりのGNPは一万〜一万五千ドル。
イエメンは、570ドル。
サレハ大統領は、北イエメン時代を含めると27年間もの長期独裁政権。

<何故テロ対策を米と協力して進めようと考えたのですか>
「テロは国家の健全な発展を損ない、世界平和にも脅威をもたらすものです。
 私達は国際社会の一員として、このようなテロと日々闘っています。
 テロとの闘いを進めるには国際社会の協力が不可欠ですが、その国際社会の
 中には米も当然のことながら含まれています。イエメンのテロ対策は、
 米を含む国際社会の協力を得て、成果をあげつつあるということなのです」

<協力の動機は米の圧力、それとも経済的な利益を考えてですか>
「米は圧力など掛けていません。私達は独立国家として他の国からの圧力や
 強制的な働きかけに屈することは決してありません」

<米の対テロ対策には全面的に賛成ですか>
「全面的に賛成している訳ではありません。賛成できるのは、あくまでも米が
 国際社会と協調して行動する時だけです。例えば米はイスラエルに対する国連
 決議を受け入れませんね。こうした姿勢をみてみると、米のパレスチナ政策に
 はとても賛成はできかねます」

<今、国内のテロ活動はどれくらい抑え込めているのですか>
「ほぼ90%は制圧できています。私達はテロとの闘いに大きな成果をあげている
 と言えるでしょう」

<完全な制圧は不可能なのですか>
「私達はテロ対策を二つの方針で進めています。
 一つは、テロリストの行動を抑えること。
 もう一つは、若者と地道に話し合って、テロがいかに間違った手段なのかを
 理解させようというものです。この方針は成果をあげています。
 自分の犯した罪を反省し、二度とテロには加わらないと決意する若者もいます」


 三年前、米の軍事顧問の指導と武器の提供を受けて、
テロ対策特殊部隊を創りました。
 海上の取り締まりも強化され、
これまでにイスラム過激派のメンバー六百人以上が拘束されています。

 二年前に創られた過激派との対話委員会。
既に四百人近くが過ちを認め、穏健な思想に戻ったとされています。

しかし、テロの温床の一因とされてきた厳しい経済状況は
まだ改善されていません。
七月には石油価格の引き上げに対する暴動が各地で相次ぎ、
新たな不安が広がっています。


「対話によるテロ対策は、かつてアルカイダに所属していた若者も対象になって
 います。ここで大事なのは、テロを計画し、実行に移したテロリストと
 そうではなく、テロリストに洗脳されただけの若者とを明確に区別すること
 です。
 米駆逐艦を攻撃したテロリストは今裁判を受けていて、
 いずれは適正な判決を受けることになります。
 しかし、テロ組織にはいたものの、実際の犯罪には手を染めていなかった人間
 については、対話によって過去の過ちを徹底的に反省させるようにしました。
 そうすることで彼らは善良な市民として社会復帰することができたのです」

<テロの大きな原因である貧困の問題にどのように対処するつもりですか>
「貧困問題は今、人口の増加と並んでイエメンにとって極めて深刻な問題と
 なっています。貧困問題を解決する為には産業を活性化させて仕事を作り出し
 失業率を下げることが必要です。それをどのように実現するか、
 これはイエメンにとって極めて大きな課題になっています。
 ですから今こそ日本を含む先進諸国の力が強く求められているのです。
 先進諸国の支援によって、若い人達に仕事を作り出すことができれば、
 彼らがテロに走るのを防ぐことができるでしょう。
 それだけに支援は国際社会、とりわけ先進諸国にとっては他人事ではないの
 です。更なる援助が強く求められています」

 確かにこの三年間は大きなテロは起きていないので、
テロの封じ込めには成功していると言えます。
首都の米英伊大使館への爆弾テロは、治安当局が事前に計画を察知して、
容疑者を拘束してテロを未然に防ぐ。
特殊部隊はイスラム過激派への掃討作戦を続けている。
これまでに数百人を拘束。
潜在的なテロの脅威は依然根強くある。

対話によって更正した筈の元過激派の中には、釈放後、
イラク武装勢力に身を投じるケースも少なくないと報道されています。
イエメン国内でも、対話委員会の効果を疑問視する論調も出始めている。
一旦イスラム過激思想にはまり込んだ人を引き戻すことがいかに難しいか。


 来年七月の大統領選挙にサレハ大統領は出馬しないと声明。
 疑問視する声も

「民主主義や改革に関しては、他所の国の文化を押し付けることはできません。
 米が進めている中東民主化政策は明らかに内政干渉です。
 自ら改革を進めなければ、他の国から干渉を受けてしまいます。
 それは仕方のないことです」

<ジャーナリストが拘束されていますが>
「記者が拘束されたのは事実です。
 法律を改正する議論が議会で今行われています」

「テロと闘う<Cエメン:サレハ大統領単独インタビュー」NHKBS