「ロシアは今日も荒れ模様」
  (米原万里:講談社文庫)
495円

 「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」が、米原万里との出会い
でした。
 「ロシアは今日も荒れ模様」は、筆者がロシア語の通訳と
して、ゴルバチョフやエリツィンに同行した折の、両氏の個人
的な面、個性的な面が具体的に知れて、面白かったです。
 また、ロシア国民の国民性、特にウオッカにまつわる話は、
とっても面白かったです。
 あと、ロシア人の小噺は、声に出して笑ってしまうくらい
面白かったです。
 いやぁ〜、この人の文章は、読み手を引きずり込みますね。
話し手として、名人ですね。

 私は、トロツキーの「ロシア革命史」、
ジョン・リードの「世界を揺るがした十日間」、
アイザック・ドイッチャーの「トロツキー伝・三部作」等の、
ロシア革命史は、読んでいるのですが、ウオッカをめぐる
ロシア人の裏面史というか、国民の三分の一がアル中という
現実は、全く知りませんでした。

 私にとって最大の収穫は、ダーチャという名の郊外のセカンドハウスで、
大多数のロシア人は自家農業をやっていたということを知ったことです。
 エリツィン大統領夫人のナイナさんが、ダーチャのトマトの熟れ具合が
気になって、夫の外遊に付き添うのをひどくいやがるのは有名な話だそうです。
 エリツィンの補佐官が月曜日の朝、執務室に随分遅れてやってきて、
「いやあ申し訳ない。ジャガイモの採り入れがまだだと女房に尻を叩かれてね」
「ロシアのジャガイモの60%以上は家庭菜園で生産されている」(「ソ連解体後」岩波新書)
何とも微笑ましい話でもある。
1億5千万人総兼業農家!!
なるほど、インフレ率2千%でも生きていけたのは、そういう訳だったんですね!