http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/W_trend/wt_0507.html#contents

 1月30日の選挙後、
「三ヵ月以上にわたってイラク政権の空転を招いた原因は」
「単なる宗派的、民族的な権力配分ではなく、政府自体の政治的方向性を巡る
 対立が底流に存在している」

元亡命政党から、国内発生型の国内政治勢力の戦後の急速な政治進出

<アラウィ暫定政府のフセイン体制部分否定政策>から、
<フセイン政権全否定型政権>へ

「イラン・イラク戦争期に、イランの支援を受けてイランからイラク国内に
 潜入させられたバドル部隊に対して、それを「外敵」として戦った経験と
 記憶を持つ、あるいは彼らによって命を失ったイラク人は少なくない。
 SCIRIやバドル組織の起用が、強硬な反バアス性/報復性によって、
 過度の不安と混乱を呼び起こしたことは事実だろう」

「反政府ゲリラ活動の最も激しいアンバール県の主要地元勢力、ドゥレイミー
 部族の出身者から国防相、地方担当国務相、同じく同地域出身の文化相が
 任命されたのは、紛争地帯出身者の登用(反政府側から見れば「一本釣り」
 の懐柔)を、偏向ともいえるほどに重視した」

 選挙前、独政府の支援で運営されるイラク・ラジオ局
「選挙モニター」 http://www.electionmonitoriraq.com/

イラク統一同盟(UIA)140議席
・SCIRI  :18議席
・ダアワ党:15議席
・ダアワ党イラク機構:9議席(1980年代に分かれた分派)
・サドル派:21議席

・「国民幹部エリート集団」というUIA外のサドル派3名も連立で合意
・イラク・ヒズボラは組閣が進まないことを批判してUIAから脱退


 <地方政治勢力と中央との乖離>

 国民議会選挙と同日に各県では県議会選挙が同じく比例代表式で実施された。

・ナジャフ、カルバラの両シーア派聖地と近隣のムサンナといった南西部県では
 国会選挙でも県議会選挙でも同じ既存の亡命政党(SCIRI)が第一党、知事も。
・南東部県では、地元で独自に結成された政治連合が第一党
・スンニ派地域:スンニ派系政党の小党乱立、政党連合形成の失敗
 スンニ派地域では、ジュブーリ部族やヤーウィル元大統領のシャンマル部族と
 いった非政党勢力の非公式ネットワークを活用することで、政党政治の不在を
 補完


「現在のイラクでは、中央政界で代表しえない地方の諸勢力を、中央から
 取り込む形で政権の安定性を維持しようという方向性と、
 地方で県議会などを軸に政治的代表性を積み上げていこうという地方勢力の
 方向性が、せめぎ合う過程にある」
「そのせめぎ合いが比較的矛盾なく調整されている南西部およびクルド地域」
「乖離が緊張を孕む南東部」
「全く調整できずに暴力への依存が深まる中部紛争地域」

「地域的、宗派的なアンバランスがますます色濃くなっているのが、
 現在のイラクの政治状況」



 <私の感想>
イラク統一同盟の二大勢力であるSCIRIとダアワ党の<同一性>と<区別性>は
しっかりと認識しておくべきだと思う。
それは、憲法草案作りや、対旧バアス党政策で、更には対スンニ派政策で
両者の違いを生み出すからだ。

SCIRIが18議席で、ダアワ党が15議席、しかし、サドル派は21+3=24議席という
のは、正しいのだろうかと疑問に思う。

「イラク移行政権と国民議会構成にみる戦後イラクの政治勢力」
酒井啓子(ワールド・トレンド2005年7月号)