http://homepage2.nifty.com/cine-mabui/video_sanaria.htm
(VHS/DVD 30分 3000円)2006年3月制作

「占領と殺戮の続くイラク、三年を超える米英軍の支配は、
市民生活のあらゆる分野に深刻な荒廃を広げている。
中でも今子供達を取り巻く状況が日に日に厳しさを増している。

そのイラクに新しい運動が沸き起こっている。
自由、平等、政教分離の新生イラクの建設を目指す市民レジスタンス運動。
市民レジスタンス運動は、武装闘争ではなく、非武装の大衆的運動で、
占領反対と市民生活の再建を掲げ、活発な取り組みを開始している。

2005年3月、この運動の中からイラク自由会議(IFC)が結成された。
IFCは労働者、女性の権利はもちろん、市民生活の再建の為に
住宅、医療、教育などあらゆる問題に取り組んでいる。
とりわけ子供保護センターの全国化に勢力を傾けている。


イラク北部、バグダッドから車で約三時間
石油工業を中心とする人口75万の街キルクーク
ここにはアラブ人、クルド人、トルクメン人など多くの民族が生活している。
キルクークの中心部から車で約10分、連帯を意味するアルザタマン地区がある。
地区の入り口には、アラブ語、クルド語、トルクメン語で書かれた
看板が掲げられている。
ここでは全ての民族が共生する街作りが住民の自治で進められている。
その一角に今日は子供達の明るい歓声が飛び交っている。
2005年11月12日、小学校、診療所の建設に続いて、
イラク子供保護センターが運営する子供シェルターが開設されたのである。
スタッフの事務所だけでなく、子供達が安心して過ごせるように
児童館のような空間が作られた。
この日はその開所式
二百人を越す親と子供達が続々と集まり、IFCのサミール議長も駆けつけた。
サミール議長は子供の権利がしっかりと守られる社会を作り、
希望を取り戻そうと呼びかけた。
続いて子供保護センターの所長を務めるアザドさんが発言。
アザドさんは、世界から多くの支援が寄せられている。
我々は決して孤立していないのだと語りかけた。

「世界中の人達が支援してくれている。
だから皆の夢は必ず実現できるといつも話しているんです」

そして日本の代表が紹介される。
子供達の間から割れるような拍手が起こった。
こうして占領下のイラクの子供達の生活や夢を描いた絵が
初めて日本に届けられることになった。

今IFCと連帯して、イラクの子供達の夢を
共に育てていこうという新しい運動がスタートしている。
「イラク子供絵画写真展」が全国各地に広がり始めている。
子供達の日常を描いた素朴な絵、重い現実をありのまま描いた絵
「これが私の生活です」(サナリア・アリ・ハイサム)9歳
開催から三か月、各地の会場を訪れた人は五千人を超えた。

<IFCは何故子供の問題を重視しているのですか>

(サミール・アミン議長)
「昨年の国連報告によれば戦時下で最大の犠牲者は女性と子供です。
今、イラクは御存知の通り国際的な戦場と化しています。
ですからイラクの最大の犠牲者もまた女性と子供なのです。
IFCは広範な組織です。この全ての組織で一致していることが
市民生活を取り戻すこと、その最大の課題が子供のことです。
子供の当たり前の生活を取り戻し、子供に安全な状態を取り戻すことなのです。
どんな社会でも子供の権利が守られていないなら、
それは人間の権利が守られている社会とは言えないのです」

<イスラム主義では子供はどういう存在ですか>

「イスラム政治主義は人間の権利と自由の否定の上に成り立っています。
コーランを読んでみると分かりますが、そこには女について、男について、
天国と地獄について書かれています。
しかし子供の記述は全くありません。
つまりその哲学にはそもそも子供という概念がないのです。
ですから子供の権利というものが発想される筈もないのです。
例を挙げましょう。多くの宗教学校があります。
そこではコーランだけを教えています。
化学も物理も数学もスポーツもありません。
コーランと来世だけを教えています。
人間の尊厳を教えるということが全くないのです。
子供は単なるテロリズムの道具なのです。
これがイスラム政治主義です。
私達はこういう影響に苦しんでいるのです。
IFCが国家と宗教の分離とともに宗教と教育の分離を掲げるのは
こういう背景からなのです」

<占領は子供の世界をどう変えましたか>

(イラク子供保護センター:アザド・アフメド所長)
「占領は多くの深刻な問題を引き起こしています。
まず治安の崩壊です。
毎日百人以上の人が米軍の爆撃と自爆攻撃で殺されています。
そしてこれが全て子供達の目の前で毎日起こされているのです。
こうした状態が子供達の心理に深刻な影響を与えています。
子供達が人間的な感情を失っていくのです。
それに学校も公園もなく、子供達の空間がなくなったことです。
この苦しさからドラッグが広がり、野放しになっています。
これはイラクの歴史上いまだかつてなかったことなのです。
三つ目は民族主義政党や宗教勢力がこの空間に出現し、
自分達の利益の為に子供達を利用していることです。
こういう状態が今イラク社会に蔓延しているのです」

<IFCはどんな活動を>

(サミール・アミン議長)
「多くのプロジェクトがあります。
まず多くの都市で親と教師への教育を行っています。
次にホームレスの子供達の為のシェルターの開設です。
そして貧困家庭への学用品とか教育の為の援助をしています。
医薬品の援助もしています。
またチームを組んで貧困地帯を巡回して子供の状況をつかんでいます。
必要なら医療費を払ったり、それを集める活動も行っています」


2006年1月「イラクの民主的再建を目指す国際会議」
この集会にはアメリカ、フランス、フィリピン、韓国、インドネシアから
多くの代表が参加した。
サナリア・アリ・ハイサム(キルクーク生まれの小学校四年生)
「私がどうしてこの絵を描いたかというと、今のイラクの状態を描いたんです。
私達子供は外に出ることができません。
外に出ると爆発があって大勢死んでいます。
学校へ行っても外に出るのは恐いんです。
私の友達が鉛筆みたいなものが落ちているので拾ったら、
それが爆発して何人も死にました。
それから民族の対立があります。
キルクークにはクルド人、アラブ人、トルクメン人など
いろんな人が住んでいます。
私がイラクやクルドの旗の絵を描いたらトルクメン人の友達に
『もうあなたとは話をしないと言われました』
子供が遊びに行ける公園がありません。
あっても爆発で死んでしまうかもしれません。
これが今の状態なんです。
それに遊ぶものがありません。
私達はどうしたらいいのでしょう。
皆さん教えて下さい。
私はコンピューターが好きなのに学校には一台もありません。
学校では先生は勉強を教えてくれますが、ひどい仕打ちもあります。
子供だということだけでよくぶたれます」

<日本の印象は>

「とってもきれい」

<日本とイラク、どっちがいい>

「もちろん日本がいい。
だって日本は爆発がなくて安心だから」


<IFCが目指す教育とは>

(サミール・アミン議長)
「それは子供は子供であり、大人ではないということ。
つまり子供は自分の生活と世界を持った存在なのだということです。
この理念に基づいた社会を創りたいのです。
私達は歴史的にこれを実現できていないのです。
その反面、全ての反動的な思想が子供に押し付けられ、
全ての罰が子供に押し付けられています。
これが大きな問題なのです。
これは現代的で人間的な文化ではありません。
IFCは子供は自分の生活と世界を持った存在なのだ
という考えを広めていこうとしています。
そして子供にとって良い社会を創ることができていないなら、
私達大人も良い社会を手にしていないということなのです」


<子供の指導で一番大事にしていることは>

(イラク子供保護センター:アザド・アフメド所長)
「それは子供達に自分の人間性に目覚めさせることです。
自分を人間として大切に感じ、他の人も自分も全ての人を
人間として尊重することを教えたいと考えています。
これは私達の原則であり、いわば哲学でもあります。
一例を挙げます。今回招待して頂いたサナリアのことです。
私達はあなたが感じた通り表現し、
思った通り振舞いなさいとだけ言っています。
指図は何一つしていないのです」


<将来したいことは何ですか>

(サナリア・アリ・ハイサム)
「イラクの子供達を助けたいです」


<日本の友人へのメッセージを>

(サミール・アミン議長)
「イラクの子供達は支援を求めています。
政治的、財政的、社会的支援を求めています。
特に衛星テレビの開設が非常に重要なのです。
これはイラクだけでなく中東全体に及ぶものです。
皆さんの支援で自由と政教分離を目指す運動が強力になれば
それはイラクの子供達の状態が変わることを意味しています。
私達は子供達に希望を与える為に全力を尽くします。
それには日本の親の皆さんの支援が不可欠なのです」

(イラク子供保護センター:アザド・アフメド所長)
「日本に来て私達の夢は実現できると確信しています。
今までこれほど強くそう思ったことはありませんでした。
私には二歳半の娘がいます。私は心から愛しています。
同じようにアフリカ、アジアのどの子供達も愛しています。
今イラクではある子は夜寝る家がなく、ある子は衣服がなく、
ある子は薬がありません。
日本の皆さんにお願いします。
皆さんも自分の子供を愛しておられると思います。
どうかその同じまなざしをイラクの子供達に注いで下さい。
この気持ちを分かち合えれば、
イラクの子供達を救うことができるのです」

『サナリアのメッセージ〜明日のイラクを作る人々』