BBC の PAUL WOOD 記者の報告です。

「五月はイラク駐留英軍にとって辛い月になりました。
英軍のヘリが墜落し、五人の兵士が死亡しました。
バスラの住民の一部はこれを喜びました。
イラクの作戦は四年目に突入しています。
進展もありましたが、予想以上のコストとなっています。
まだまだ仕事は残っています。
イラクは長い戦争となっています。
イラクの連合軍によりますと、
日々の暴力は本当の進展を覆い隠しているということです。
バスラでは混乱もありました。
その後、イラクの警察によりますと、
再び英陸軍と協力するということです。
北部では、米軍によりますと、
武装勢力に対する作戦が機能し始めているということです。
しかしながら問題は替わっています。
宗派的な対立が内戦にならないようにしなければなりません。
米英の兵士に同行しました。
イラクにおける軍事活動のスナップショットをお送りします。

英軍ヘリがバクダッドのグリーンゾーンを飛び立ちます。
バスラの墜落が示している通り、ヘリは脆弱です。
しかしながらできる限り空で移動する方が安全です。
地上には路肩爆弾があります。
グリーンゾーンから車で移動するのは危険ということは、
イラクが計画通りには進んでいないことを示しています。

駐留英軍の司令官に話しを聞きました。
(Lieutenant-General ROB FRY:Coalition deputy-commander)
『国家のインフラはほぼ無傷で残っているという考えがありました。
治安部門のインフラも残っている。
電気・水道のインフラも大丈夫という風に思われていましたが、
実はそうではありませんでした。
色々な理由があります。
ということで我々としては長期的な
軍事活動に関わることになっています』

<政策的な、また戦術的なミスがあったということでしょうか>

『政策的そして戦術的なミスがありました。
ここまで大規模な作戦ですから、それも仕方がないです。
しかしながら作戦自体は欠陥があったとは言えません。
そういった証拠はまだありません』


この民間警備会社のビデオが
バグダッドでの車での移動の危険を示しています。
この車列は両側から攻撃されています。
バグダッドを急いで通過しようとしています。
そこで我々は一つ目の目的地にヘリで移動することにしました。

ここはイラクの陸軍士官学校です。
陸軍士官学校の卒業式のパレードです。
彼らは連合軍の出口戦略の鍵となっています。
何かお馴染みの光景です。
というのもイギリスの将校が訓練している訳ですから。

(Colonel MAURICE SHEEN:Iraqi Defence Academy)
『責任の大きさがあります。武装勢力と戦わなければなりません。
実弾を発射する者達と戦わなければなりません。
それでも本当に大きなチャレンジだと思います。
連合軍のパートナーとして英軍はこの任務を重大視しています。
一年のコースです。とても厳しい訓練です』

多くの兵士はシーア派です。
旧イラク軍はスンニ派が主流でした。
そこでスンニ派は脅威を感じています。
しかしながら連合軍は自信を持っています。
この軍は、本当の国の軍として機能できる筈だと考えています。

<貴方はスンニ派なのか、シーア派なのか>聞きました。

『自分はイスラム教徒だ』と語りました。

<スンニ派、シーア派ということで、バグダッドでは殺されていますが、
軍はどのように答えるでしょうか>

『我々は全てのテロリストに対峙します』

こういった仕官候補生、命のリスクを懸けています。
また家族もこういったコースに参加することで、命が危険にさらされています。
彼らは武装勢力の格好の標的となっています。
それでもこういった訓練は本当の任務と比べれば、可愛いものと言えるでしょう

バグダッドの兵舎の外の検問所です。
音はありません。監視カメラの映像の為です。
黒い車が近づいてきます。兵士が疑いを持って、運転手に質問をします。
もう更に進めないと知ると、爆発です。

軍の夜明け前の任務。
米軍部隊がイラク陸軍と共に治安の作戦を行います。
バグダッドの郊外アマリアに向かいます。
ここは91年、ミサイル攻撃を受けたシェルターがある所です。
ここは裕福なスンニ派の地区です。
至る所にバリアがあります。
車に乗った者による銃撃を防ぐ為です。
バグダッドにおける恐怖を物語っています。
人々が恐れているのは、シーア派の住民です。
この地域、イラクの部隊がたくさんいます。
スンニ派の住民にシーア派の兵士に慣れてもらおうと米軍は考えています。
数日前、シーア派の武装した男達が、
ここを離れなければ殺すと手紙を送ってきました。

<任務はどうでしょうか>

(Col MOHAMED FAYIK AL SAMURRAI:Iraqi Army)
『家宅捜索を行いました。全てうまくいっています』

<貴方の小隊に同行しましたが、素晴らしい任務だと思います。
何も見つかりませんでしたが、目的を達成できたと思います』

『イラク軍がやって来て、住民が喜んでいます。
本当に喜んでいます』

<素晴らしい住宅です>

『ここの住人は医師やエンジニアが多いんです』

<敵は一体どこからやって来るんでしょうか>

『車輌に乗って、銃撃して、その後、去っていく場合もあるということです。
また、テロリストがやって来て、紙を投げ込むということです。
72時間以内に離れろという脅迫の手紙です』

<永続的な検問所が必要なんでしょうか。
イラクの部隊が南部で24時間体制で警備を行うべきなんでしょうか。
それによってテロリストが入ることがなくなる訳です>

『シーア派のテロリストということでしょうか。
マハディ軍団のメンバーもいれば、
ムジャヒディンといった者もいます。
しかしながらイラクにムジャヒディンはもういません。
テロリストは誘拐などを行っていますが、それは金目的です』

人々は疑心暗鬼です。
地元の治安部隊に対してです。
『初め、イラクはもっと良くなると思っていました。
しかしながら今はとても悲観的です。
将来は暗いと思っています』
車輌に乗った男達が銃撃するということです。
警官の制服を着ているということです。

善良な人がたくさんいます。
そういった人々は政府を応援すべきです。
右側の男性はスンニ派です。左側の男性はシーア派です。
しかし友人同士だと彼は語っています。
『手を貸して下さい。同胞同士です』

このビデオは武装勢力がバグダッドで撮影しました。
米軍兵士が狙撃されましたが、辛うじて助かりました。
防弾チョッキで大怪我を負わなくて済みました。
別の所では、武装勢力が忍耐強く米軍が来るのを待っています。
『神は偉大なり』と繰り返し言っています。
救助車輌を待っています。
それがやって来ると第二の爆弾を爆発させます。
驚くべきことに、ここでは誰も死亡しませんでした。

(Lieutenant-General ROB FRY:Coalition deputy-commander)
『米軍は、こうした所で武装勢力と戦うことに長けてきています。
英軍も教訓を得るという訳ではありませんけれども、
米軍は経験を積んで、過去の米軍と大きく変わりました。
第二次世界大戦でも非常に速く学び、
それを訓練に採り入れていったんです』

バグダッド西部のスンニ派の地域では、
連合軍は買ったバックパックを渡すというのが、今日の使命です。
彼らに会えて嬉しいです。
私の息子達を思い出します。
イラクの人々の心を掴もうとする動きは新しくありません。
しかしそれが最近では、更に強調されています。
これによって連合軍の兵士の命が救われることを期待しています。
しかし子供の微笑みだけでは分からないこともあるでしょう。
校長はこう言います。
『こうした贈り物を米軍から得たということで、
武装勢力がこの学校を標的にするのは、間違いありません』

この状況から逃れる為に、イラク人に治安任務を引き渡そうとしています。
年末までに米軍は戦闘地帯の九割をイラク治安部隊に引き渡す予定です。
これが連合軍の出口戦略です。
しかし原油が豊かにある国だというのに、アブグレイブのこの近くでは、
イラク軍車輌の燃料がありません。

(Captain STEPHEN TEKIRIAN:10th Mountain Division)
『自分達の燃料もないんですね。
余りシステムがうまくいっていないんです。
ですから燃料を運んで来て、与える訳です。
無料で燃料を与えている訳です。
そしてパトロールに行ってくれと頼む訳です』

このパトロールが行われているのは、米軍が到着したからです。
イラク軍はこの市場で何回も攻撃を受けています。
この為、要塞のような所に居ようとしています。


我々は南部に向かいました。英軍地域です。
数時間前にヘリがバスラで撃墜されたというニュースを聞きました。
五人が死亡したということです。
墜落の直後、多くの人がやって来て、祝っています。
これは携帯電話の映像です。
群集の一人が撮影しました。
十代の若者が火炎瓶を作っています。
この地域の住民であることが後で分かりました。
地元の子供達がこの自家製火炎瓶を
イギリスの装甲車に向かって投げつけます。
五人のイラク人も死亡しました。
英軍は、攻撃を受け、迫撃砲を撃たれたので、実弾で応じたと言っています。

(Lieutenant-General ROB FRY:Coalition deputy-commander)
『緊張やエネルギーのはけ口になったと思いますね。
そうしたことは避けられないんです。
この地域社会は非常に抑圧されてきた訳です。
ですからこれが必要なんですね。
今もそうしたプロセスが続いています。
余り居心地の良いものではありませんけれども、
今よりずっと悪い事態になっていたかもしれないんです』

翌日、平静がバスラに戻っています。
我々は英軍のバウロン司令官と共にパトロールに出掛けました。
地元の人達に安心してもらう為に、
ソフトな帽子を被って部下にパトロールさせています。
英軍は温かく迎えられています。
『我々同じですよね。私の友人です』
協力しているんです。
バスラの将来の為に努力しているんです。
英兵の死亡に対して、同情を表しています。
『昨日のヘリの撃墜は残念でした』
『それはご親切に有り難う御座います』

ヘリはこの建物の屋上に着陸しました。
撃墜されたのかどうか、何が起こったのかまだ分かっていません。
英司令官は、南部はスンニ派三角地帯のようにはなっていないといいます。
そこでは米兵が毎日のように殺されています。

(Lt-Colonel JOHNNY BOWRON:Basra commander)
『これは武装勢力ではありません。
犯罪者と民兵が交じり合っているんですね。
政治的な影響力を、暴力を通して、手に入れようとしているんです。
武装勢力ではありません。
我々を歓迎しない人もいますし、
我々がやって来てお金儲けをしている人もいるんです。
我々に暴力を振るうのは、ごく少数なんです』

<英軍はバスラでは歓迎されていないのではないですか>

『そんなことはありません。
ごく一部の人がそうしたことを示そうとしていますけれども、
大多数は中立、あるいは前向きな姿勢です』

<何回かここにいらしていますけれども、治安に改善は見られますか>

『我々が望む程迅速ではありませんけれども、
遅々とではありますが、前進しています。
そしてかなり加速化する可能性もあります。
いくつかパズルの断片が埋まれば、
今後12か月間でバスラ市もバスラ州も改善するでしょう』

英陸軍が言っている前進というのは、これです。
この検問所ですけれども、英部隊とイラク部隊が共同で守っています。
こうなる筈でした。
ただ、イラク人の警察はイギリス人の兵士と関係を持ちたくないと言っています
ボイコットを終わらせようとしています。
連合軍はこれをしようとしているのです。
イラクの治安部隊に自分達で行動できるまで指導しようとしている訳です。
イラク軍がイギリスの兵士を支援するよう説得したことは前進ではありますが、
イラクの人達にどのくらい頼ることができるかという問題があります。
そしてシーア派の過激派がバスラで英兵を攻撃しています。
我々は英軍のパトロールに同行しました。
イラクの警察との協調精神がどうなっているかを見る為です。
しかし地元の警察で直ぐに問題が起こりました。
このマスクを取れと言われているんです。
我々の通訳が覆面を外すように言われました。
彼は身元を確認されるのを恐れています。
パトロールはここをあとにすることを余儀なくされました。
通訳を危険にさらしたい人がいなかった為です。

<何故彼の身元を明らかにしたくないんですか>

(Sergeant DAVID DEVLIN:Royal Artillery)
『殺されるからです。我々と一緒に働いているからです』

バスラを最終的にあとにする為には、
まずイラクの警察が自立できるようにしなければなりません。
それは容易なことではありません。

(ROBIN LAMB:British Embassy)
『治安状況、バスラの状況ですが、
ここ数か月間は非常に失望しています。
そして何か行動をとらなければならないという見方はあると思います。
警察の中にも様々な理由でやって来た人達がいます。
バスラの人達の為にという人達だけではありません。
堕落した目的を追求している人も、
あるいは政治的な目標を追求している人もいるんです。
そしてそれは全国的なものではなくて、
宗派的なものである場合もあるんです』

司令官は圧倒的な火力をイギリス部隊が持っていることから、
武装勢力は勝つことはできないと言います。
しかし今希望されるのは、人々が暴力に飽き飽きして、
政治を選んでくれるということです。

(Lieutenant-General ROB FRY:Coalition deputy-commander)
『社会の中のグループが、連合軍と戦うというのは
無駄な努力であるということに気付きつつあります。
これで駐留が大きく変わると思います。
人々が暴力を放棄すれば、そしてその替わりに
政治プロセスに関与すれば大きく変わるでしょう』

ヘリの墜落で死亡した五人の兵士がイギリスに帰還しました。

イラクに初の恒久的な本格的な民主政府を樹立させる為の
これが代償だったのです。

イラクで暴力が増える中、連合軍は今、
本格政権が何を達成できるかを見極めようとしています」

IRAQ : The Long War :BBC