「イエメン:力≠ニ対話≠フテロ対策」NHKBS
 (2005.2.3(木)放映)

 3年前に設置されたテロ対策特殊部隊。
米政府が武器を提供し、軍事顧問を指導の為に派遣しています。
特殊部隊は既に、山岳地帯に潜む過激派の掃討作戦に乗り出しています。

 海上のテロ対策も強化されました。
2年前発足した沿岸警備隊も、アメリカから巡視船10隻の提供を受けました。
隊員はアメリカで訓練を受けています。

 テロ特別法廷
 治安当局も取り締まりを強化し、これまでに、イスラム過激派、少なくとも
600人以上を拘束しました。

イエメンの平均年間所得は450ドル、スーダンと並んで、アラブ諸国最低水準。
湾岸戦争時、イラク寄りの態度をとったとして、サウジなどの湾岸諸国から、
約百万人の海外出稼ぎ労働者が強制送還される。
当時のイエメン人口は1400万人。
94年には再び激しい内戦。

 過激な思想教育を行っていたとして、イスラム神学校を次々と閉鎖。

 市民の多くは、社会の安定の為に必要な措置だと感じています。

 不満や反発もある。

 イエメン政府は、世論を刺激しないようにと、アメリカとの連携を声高に
叫ぶことを一切控えています。
アメリカとの軍事協力の具体的内容を一切明らかにしていない。

 アメリカとの連携は、イエメン政府にとって、諸刃の刃。
テロの温床となる反米感情を煽る危険性も孕んでいる。

 2年前から、独自のテロ対策も始めています。

「過激派との対話委員会」イスラム法学者20人
対話委員会は、刑務所などに拘束されている過激派のメンバーのもとを訪れ、
対話を通じて過激な思想を改めさせる取り組みを行っています。

「イスラムの誤った解釈に基づく思想は、イスラム本来の教えを通じて改め
 させるしかない」

 4年間ビンラディンのボディガードを務めていたナーセル・バハリー氏32歳。
現在は自動車の販売をしています。
「私達若者はイスラムの問題は全てアメリカのせいだと思っていました。
 ビンラディンこそがイスラム戦士のシンボルだと思っていたのです。
 かつては武器をとって異教徒と戦うことばかり考えていました。
 私達の意見を受け入れない者はみな敵だと考えていたのです」

 異教徒との共存の必要性を説くイスラム本来の教えを重点に対話した。

「イスラム教に関する知識の不足や誤解から彼らはテロに走るのです。
 コーランには異教徒と仲良くしなさいという記述が124か所もあります。
 戦って良いのは攻撃を受けて自衛する場合だけです。
 私は質問も答えも全て目の前でコーランを指し示して行うので
 彼らも納得してくれるのです」

「私達は頭が凝り固まっていて聞く耳を持たず、喧嘩腰でした。
 それでも辛抱強く優しく丁寧に諭してくれたので、私達は心を開くことが
 でき、徐々に考えを改めていったのです。
 対話こそが力であり、武器で相手を抑えつけることはできないと悟りました」

 バハリー氏は、ソマリア、ボスニア、タジキスタン、世界各地の紛争地を
渡り歩いてきました。
 96年にアフガニスタンに入り、ビンラディンの許に身を寄せる。

 対話委員会のマニュアル
対話を行う上での注意事項
・過激派がテロに関わる思想を話した時には、その内容がコーランのどの部分に
 基づいているのかを、その都度問い質しながら話を進めなさい

 対話委員会は、この2年間に過激派364人の考えを改めさせたと発表。
市民の間には、
「対話委員会はアメリカに同調する政府の操り人形にすぎない」という冷ややか
な見方もある。

 強硬策ばかりだけではなくて、対話を重視する独自の取り組みであることには
かわりはありません。

 他のイスラム諸国には、こういう取り組みはまだありません。
各国からも注目されています。


 <私の感想>
 ソマリア、ボスニア、タジキスタン、アフガニスタンと世界各地の紛争地を
渡り歩いてきたという筋金入りのムジャヒディンですね。
 更にビンラディンと4年間も寝食を共にしたという正真正銘のテロリストが、
悔い改めるものなのですね。
かなり感動的な話だと思います。
イエメンだけでなく、他のイスラム諸国でも、こういうソフトな対テロ対策も
結構有効なのではないでしょうか。
 大変な労力、手間は掛かりますが、滅多に聞いたことがない貴重な
<本質的解決>の一つだと思います。

「イエメン:力≠ニ対話≠フテロ対策」:NHKBS