私にとっては、初めて知ることのオンパレードでした。
やはり現地イラクに行かれた方からの、内部からの発言ですから、
とても貴重な発言・情報を初めて知ることができて良かったです。
従来の情報源では、こういう情報は全く得られませんでした。
 もちろん安全対策上等で、制限された発言でしょうが、
それでも生の声を知ることができてとても良かったです。

 数多くの箇所で感動しました。感激しました。

 何しろ50度ですからね、車内のダッシュボード上でさえ64度だそうですね。
そこでレトルトパックが加熱できてしまうんですね。
放置しておいた百円ライターが爆発する世界ですからね。
全く想像すらできません。
軽装甲機動車内はクーラーを回しても58度だそうです。
クーラーの能力を上げれば、走行性能の低下を招き、それだけ危険度が高まる
というシビアな世界なんですね。

 平和な日本で、のんべんだらりんと生きている私には、政治的立場・思想的
立場を超えて、まずは、人間として頭が下がります。

 全力を尽くしているという自負があるからこそ、一部マスコミ等の心無い報道
には、憤っているようですね。
 よく自己抑制できていますね。平静を装っていますが、はらわたが煮えくり
返っているであろうことが推察されます。
殺害された橋田信介氏も「派遣には反対でも、現地で汗まみれで働く自衛官の
姿を伝えなくていいのか」と発言されていましたが、全くそうですね。
たとえ、立場・考え方の違いがあっても、最低限の礼儀は払うべきだと思います。
少なくとも揶揄した発言は許せません。


 私が最も感動したのは、現地の人と共同で作業を行っていることです。
鉄条網設置作業を共に行ない、手を切って怪我をして、文字通り一緒に血を流し
ていることに、現地イラク人も意気に感じたようですね。
 し尿の処理も共に行うということに他国軍と比較して現地の方も驚いていた
ようですね。
 私は、結構こういう浪花節に弱いのです。
他国軍では普通にある幹部専用施設というものが全く無いということにも
私には好感が持てました。
司令官も自分の下着を洗面器で洗うのには感心しました。
階級差別が無いという点にです。
「米軍は野犬を見れば即射殺しているのに対して、自衛隊は石を投げて追い返し
ている」というのも微笑ましいです。


 サマーワでは、自衛隊残留賛成が8割程度だそうですね。
しかし、イラク全土では、また事情が異なります。
外国軍撤退要求派の方が多数派を占めます。
外国軍には自衛隊も含めていいと思っています。
確かにサマーワでは、<得るもの>の方が多いかもしれませんが、
イラク全土では<失っているもの>の方が多いかもしれません。


 <イラク人道復興支援>には、勿論賛成です。
しかし、それを、<自衛隊が>、<イラク国内で>行うかどうかは、
また別物です。
例えば、独仏は隣国ヨルダンでイラクの警察官の研修を行っています。
これもまた立派なイラク復興支援活動です。
イラク国内でなければ、<人道復興支援>が行えないという訳ではありません。

 しかし、<イラク国内でなければ得られない成果>というものもまたある
ということを本書を読んで初めて学びました。
 上記の共に汗を流すという例はそういう例です。
しかし、現情勢では、それは一時、我慢してもらって、もう少し情勢が好転して
からでも遅くはないのではないでしょうか。

 本書では触れていませんが、自衛隊は<人道復興支援活動>「だけ」を
行っている訳ではありません。
 航空自衛隊は外国軍1200名を輸送しました。ほとんどは武装した米兵です。
また、サマーワの陸上自衛隊の車輌が米英軍を武装護衛したこともまた報道され
ています。(「自衛隊がサマワに行った本当の理由」森哲志)

 現地の自衛隊員の方々が本当に一生懸命活動していることはよく理解できまし
た。
 現地の方々とも概ね良好な関係を苦労して築いてきたこともまたよく理解でき
ます。
 しかし、<根本的な土台>が違っているように思います。
<国連決議なき><大儀なき>戦争に、協力加担しているという<側面>は、
拭い切れません。
 アメリカが始めた「誤った戦争」の中で、自衛隊は真っ当な人道復興支援活動
を行っているという感じですかね。
 自衛隊の方達が本当に一生懸命頑張っているのは、よく分かりましたが、
その前提である根本的な土台が食い違っているという想いを拭い切れません。
比喩で言えば、最初のボタンを掛け違えたまま、その後は一生懸命頑張って、
きちんきちんとボタンを掛け続けているという感じです。

 イラク全土では反米感情が蔓延しています。
もう一度、国連中心に立て直してから、または、ムスリム軍なり非米軍の治安
維持部隊で態勢を立て直してから、人道復興支援活動を行うなら、私としても
諸手を挙げて心から賛同できるのですが、、、

 給水活動・補修活動は現地の方に引き継いでもらうことは、可能のように
私には思われます。
 そして、一旦撤退して、情勢が好転してからまた改めて入国するということも
可能のように私には思われます。
 もちろん、その間は、国外から復興支援活動は続けます。


 人間の意識は絶えず変化していきます。

イラク人の親日感情は、私達の先人達の労苦の上に築かれてきました。
その過去の遺産を食い潰しつつあるのではないかというのが私の疑念です。

確かに、サマーワの人達は自衛隊を8割が支持しています。
しかし、イラク全土では、多数派は外国軍撤退を要求しています。

「一発も銃を撃たない自衛隊」という信頼感

<親日感情><日本への信頼感>から、疑念、反発、反対へと、
一人一人の意識世界の中で、綱引きが続いていると思います。
葛藤があると思います。
どちらにより揺れているかは、一人一人違うと思います。
また、同じ人でも、状況によって変化していくものだと思います。


 私は、自衛隊撤退論者です。
ただ、それは現行政府の政治方針としてのイラクへの自衛隊派遣に反対なので
あって、個々の自衛隊員に反対しているのではありません。
自衛隊の撤退を願いますが、少なくとも当面、サマーワに存在しているのは、
残念ながら現実ですので、現実にサマーワにいる自衛隊員の安全性向上には
賛成です。

「武士道の国から来た自衛隊」:産経新聞イラク取材班(扶桑社)