<まえがき>
イランが親米国家エジプトと25年ぶりに国交回復
シリアが親米国家トルコに接近
イラン、イラク、レバノンのシーア派が自由世界に足を踏み込めば中東世界が
本質的に変化する
<第T部 21世紀中東世界の胎動>
イラクの人口の70%が25歳以下
・イラク復興信託基金:国連と世界銀行の管理下:日本も50億ドル拠出
・イラク開発基金:アメリカ主導で管理
サウジの若年層の失業率は15%
アメリカの対サウジ原油輸入比率は14.5%
シリア:若年層の失業率は20%:これが若者の現政権に対する不満の一大要因
イラクからの安価な石油の輸入が途絶える
イスラム諸国では、若年層の失業率の問題は、テロリスト予備軍という問題だ
と思う
<第U部 新生イラクの誕生と復興プロセス>
米企業KBRが70億ドル、ベクテルが6.8億ドル受注
これはアメリカ政府が出資
<第V部 中東経済発展の史的視座>
中東・北アフリカ地域への2000年の海外直接投資は90年のほぼ半分に減少
アジア・太平洋地域は4.7倍、中南米・カリブ地域は9倍
イスラム世界には喜捨(ザカート)という制度がある。
富める者が貧しい者を支援する宗教的共同体(ウンマ)がある。
イスラム世界では所得より、宗教的平安がある。
所得だ、GDPだとか言っても、イスラムの価値観で優先されない要素を
もって、イスラム世界を評価することに意味があるのだろうか?
人間開発指数(寿命・教育・所得)で中東をみてみると、やはり所得と相関
関係にあるとは言える。
やはり、価値観の違いのある中東イスラム地域でも伝統や慣習を破壊すること
なくある程度の所得水準にまで経済を発展させることはやはり必要だと思う。
<イスラエル:軍事部門の縮小とハイテク技術の民間移転>
1980年にGDPの25%を占めた軍事費を、90年には12%、96年に
は8%に縮小。
その過程で多数の技術者が軍事部門を解雇される。この技術者の多くが民間
企業や起業に向かった。
これと、旧ソ連からの大量の技術者の移民が、90年代のイスラエルのハイテ
ク部門躍進の原動力
<第W部 21世紀中東経済の分析>
石油はもはや戦略物質ではなく、産油国は国際石油市場で決定される価格を
受け入れざるを得ない立場にある。
サウジ人口:1981年:981万人、2001年:2081万人と倍増
同GDPは半減、一人当たりの石油収入は三分の一以下
<中東天然ガス産業の課題>
ロシア:世界第一位の天然ガス大国
いかなる国家も石油から天然ガスへの転換を推し進め、天然ガスの調達に躍起
になっている
パイプラインの敷設ルートについては政治的産物だと言っても過言ではない
イラン:世界第二位の天然ガス埋蔵国
「悪の枢軸」と決め付けた関係上、米企業は進出できない中、日欧企業が進出
<イスラム金融と中東経済>
・金融立国化を目指す湾岸諸国:UAEとバーレーン
イギリス系の金融機関HSBCイスラム法(シャリーア)を順守する金融商品
(保険商品)を開発し、UAEを中心にマーケティング活動開始を決定。
将来的には全世界のイスラム教徒全体にまで拡大する意向。
イスラム教徒を顧客とするリテール(小口取引)戦略
利子の厳禁というコーランの教えに基づいた利子排除商品の開発が相次ぎ、
イスラム金融市場が急膨張してきた。
<中東のハイテク産業 イスラエルを中心に>
イスラエル:「中東のシリコンバレー」「第2のシリコンバレー」
インテル、マイクロソフト、IBM、モトローラの進出
生産拠点としてではなく、高度な技術や研究開発能力に注目しての進出
イスラエル産業が情報通信技術分野に特化
<中東の国際経済関係>
・サウジ:外国人に対する労働許可申請の費用を2倍に
ビザ発行費用も引き上げ
<外資の導入とグローバル化への適応>
・サウジ:「外国投資法」「法人所得税法」改正
法人所得税率の引き下げ、外国資本100%出資、これまで公共開発基金から
の融資を100%出資の外資にも認める
投資庁も設置
・クウェートでも100%出資の外資を2001年に認める
・エジプトでは国営企業の約三分の一を既に民営化
・EUとの自由貿易地域創設を目指すアガディール宣言(2003年)
(モロッコ、チュニジア、ヨルダン、エジプト)
・アラブ自由貿易地域(AFTA)98年から年10%の関税削減を実施
2005年までに関税を全廃予定
「イラク戦争後の中東経済」島敏夫・中津孝司編(同文館出版)