<プロローグ>
「日本はともすれば「産油国」に関心を抱いても、石油を運搬するパイプライン
 が通る国を度外視している」
「欧米では『パイプラインの政治学』という言葉までが囁かれている」


 <序章>開戦前夜

<イラクの石油輸出量の><武器輸入の><貿易額>
・仏:22.5%        13%        60社 15億ドル
・独:          80企業が部品を輸出 101社 3.5億ドル
・露:5.8%
・中:5.8%         18%

 <武器の内容>
・独:部品、トラック
・露:夜間暗視ゴーグル、対戦車ミサイル・コルネット、GPSジャミング装置
・中:シルクワームミサイル、スカッド・ミサイル、対戦車砲、一部の禁止品目
   は北朝鮮を代理経由して輸出
   国連の承認を得て探査衛星を売却、光ファイバー通信網も

・埋蔵確認鉱区は     : 74
・実際に生産しているのは: 15
・試掘スポットは      :125


 <第一章>グレート・オイル・ゲーム
バクーからの石油パイプラインがチェチェンを通過していたため、カザフスタン
のテンギス油田から1580キロの新パイプラインを完成。(この間、チェチェ
ンへ軍事攻撃を仕掛けたが、最近は石油との関係が薄まったので手抜きの戦争を
している)
 このパイプラインへは、シェブロン、エクソン、ロシア、カザフスタンが出資
 「カスピ海パイプライン・コンソーシアム」
 石油利権の多くは石油メジャーと組んだプーチン主流派が寡占

「上海シックス」(上海協力機構)反テロ情報軍事協議会
(中国、、ロシア、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン)


 <第二章>米国の中央アジア・中東支配


 <第三章>ロシア石油帝国の野望
・ロシアとサウジが密かに石油価格協定を結べば新オペック誕生になる
・ロシアにとって外国へ輸出できる品物は武器と石油しかない
・ブルーストリーム:ロシア南部から黒海海底を縦断しトルコの首都アンカラに
 至る天然ガスパイプライン。全長1200キロ。黒海の深さ約2100メート
 ルの海底にも施設。2001年12月開通
・武器輸出の軍部マフィアは顧客の減少とともに衰退し、今や石油マフィアが
 牛耳る
・「ロシアはイラクの石油という実践的目標以外に関心はない」(元第一副首相
・イラク戦争後に石油価格の劇的な値下がりが起これば、ロシア経済が停滞に陥
 る懼れがある
・ロシアにとって中国は武器を買ってくれる大切な顧客
・「中国の新疆ウイグル自治区とロシアのチェチェン共和国の分離・独立派勢力
 は国際的なテロ勢力の一部分である」(中露共通認識)
・中央アジアからの石油・ガスはロシア領内を経由しないと西側への輸出は不可
 能
・「テロ事件以降、石油戦争で一方的な勝利を獲得したのはロシアではないか」
・プーチンはロシア闇経済を権力側にもぎ取り、利権を復活
・サンクトペテルブルクの港湾施設を西側並みに機能強化を果たす
・プーチンの功績を認めた最大の政敵プリマコフと最大企業ガスプロムがプーチ
 ン同盟に加わってきた。(「ロシア工業企業家連合」)
・ロシア経済は冷戦の最中からドル本位制。現在はますます米ドルが万能の神


 <第四章>石油大国・チャイナ
・中国は1994年から石油輸入国に
・石油備蓄がない(2005年には完成予定)
・中国の石油消費は現在世界第3位
・日本は折角の戦略的石油備蓄を国際協調の名の下に中国にむしり取られる危険
 性がある
・秘密裏にサウジ・イラン・イラク・パキスタンに武器を供与し、北朝鮮を通じ
 ても紛争国に代理輸出させた
・中東との原油取引は武器との交換(例えばサウジへ射程1800キロのCSS
 2ミサイルなど)を通じて急激に拡大
・アフリカには53カ国に経済援助、特に産油国重視の経済援助外交
・イラク、カスピ海、シベリアにも鉱区を確保
・メジャーから利権を次々に買い取る
・インドネシア、オーストラリアの天然ガス鉱区とも契約
・中国最大の海底油田蓬莱油田が2003年末から稼動開始
・この5年間で新たに確認された油田・天然ガスは殆ど全て新疆ウイグル自治区


 <第五章>サウジアラビア王室の崩壊
・9.11テロ実行犯19人のうち12人がサウジ南部の貧困地帯出身者
・イエメンとの国境は、麻薬、大麻、武器取引、不法入国のサウジの主権の及ば
 ない無法地帯
・武器購入、人口増加、石油価格下落、外国人労働者の本国送金による外貨準備
 の目減りにより赤字財政へ転落
・国民の半分は20歳以下
・民間企業の労働力の9割が外国人(家族を含めると総人口の40%)
・アラブ世界では「イスラエル・パレスチナは”休戦中”」とする認識が普遍的


 <第六章>天然ガスを握る資源国イラン
・イランンの石油埋蔵量は世界第5位
・天然ガスは世界埋蔵量の4分の1
・イラク戦争中、米軍の誤射した領内へのロケット弾着弾事件(3発)にも、
 米側に丁重に調査を要請しただけ
・イラク・アフガニスタン・タジキスタンに米軍が駐留、周囲を米軍に取り囲ま
 れている
・2001年のイラン大統領選挙では改革派のハタミ大統領を支持する若者は87%
・ホメイニ後の世代が年月とともにイラン政治の基本性格を徐々に変えていく
・原発はロシアの技術支援を受けている


 <第七章>トルコ、北朝鮮・・・伏兵群の動向
・トルコ国営石油会社はキルクーク付近のフマラ油田の鉱区開発権を2001年12月
 に取得
・トルコのインフレ率30%、2002年の国家予算の7割が債務返済(多くは利息
 払い)
・クルド:イラクのKDPとPUKは6年間も武力対立
・北朝鮮のミサイルが「米国西海岸まで到達するか」との問いに、「可能だろう
 」(CIA長官)
・日本海に対艦ミサイルを発射:イージス艦展開への牽制・威嚇
・シベリア石油に「北朝鮮ルート」が浮上。韓国の提案:核開発放棄の見返り、
 パイプライン通過料・パイプライン沿いにガス火力発電所の建設
・サハリンのガス採掘権はエクソンと日本の「サハリン石油ガス開発」が握って
 いる
・エジプト:兵力は中東随一だが、兵器は米国式なため、米国から武器弾薬の
 供給を受けなければならない
・イラク通貨ディナール:1981年と比べると8000倍のインフレ
・イラク戦争直前の石油価格高騰はベネズエラの政情不安が原因
 チャベス政権:マイナス7%成長、失業率30%
 チャベス大統領派の秘密警察の暗躍


 <エピローグ>
・フセイン政権下でイラクの440万人の若年就労人口の130万人が軍・警察
 ・秘密警察
・国連決議986
 オイル・フォー・フードの
 ・72%:人道的プログラムに
 ・25%:施設修繕
 ・2.2%:国連事務所維持費
 ・0.8%:武器査察費用

・石油危機の体験に踏まえ、IEA(国際エネルギー機関)には、国際市場の価
格高騰を抑制する目的などで加盟国が協調して備蓄原油を放出する「CERM」
(協調的緊急時対応措置)がある

「ザ・グレート・ゲーム:石油争奪戦の内幕」:宮崎正弘(小学館文庫)