タイトルからして私としては根底的に相容れないんですが、まあ色々なものを
読んでみようと思い、読んでみました。
 立場は違っても、資料・データ・情報・観点等大いに学びました。
 特に、石油決済をドルで行うのか、ユーロで行うのかを巡る、石油決済機軸
通貨ドル対ユーロの熱い経済戦争には、大いに学ばせていただきました。
 ただ筆者はユーロ決済という問題を少々過大に評価しているのではないかとも
思います。OPECや独仏がユーロ決済に傾いているにしろ、非OPECやロシア、
東欧諸国、日本はユーロ決済に傾いていない訳ですから。
 それでも、「ドル一極支配体制」から「ドル・ユーロ二極体制」へと向かっている
とは言えるのかもしれません。

 <はじめに>
「戦争こそ究極のビジネスモデルの実戦の場にはかならない」
「「イラク復興と日本の国益をどのように結びつけることができるのか」を
 読者とともに考えることに、本書の主眼は置かれている」

・中東地域の民主化が進めば、中国、インドに次ぐ巨大市場が誕生

・「イラク全土が内戦状態にある」(CIA 2004年1月)
・「ベトナム戦争を上回る大きな失敗を重ねつつある。アメリカが単独で海外に
 兵力を投入すると必ず失敗する」(ベトナム戦争当時の国防長官マクナマラ)
・「イラクでの戦争はあと20年は続く」(チェイニー副大統領)


 <第一章>
・米企業ダインコー:社員2万3千人、売上げ3億ドル
 法整備、公務員教育、元警察官派遣
 アメリカ軍が海外展開する先には必ずダインコーが進出
 (ハイチ、ボスニア、コソボ、東チモール)
・ブレマーとブッシュ大統領はイエール大学の先輩後輩
・ブッシュ大統領はCPAの会計監査責任者に自らの法律顧問ブラウンを
 送り込んだ。利権の発注元を全て身内で固めた。
・電話通信分野を受注したのは、2002年に利益捏造で破産したMCIワールドコム
 (商業ベースの携帯電話事業の実績は皆無)
 ラムズフェルド長官と親密な関係で、ネオコンの有力者リチャード・パール
 政策諮問委員会前議長がMCIの顧問だったから
 当初CPAと通信事業契約をしたバーレーンのバーテルコは、建設を始めた
 通信タワーを米軍が爆撃して破壊(誤爆だそうです)
・サマワでは、地元のイラク人による「日本企業への就職斡旋センター」が
 オープンし、連日千人単位で行列ができている。うたい文句は、「まもなく
 ソニーや東芝、日立がやってくる。日本企業で働くノウハウを伝授する」
・シーア派指導者アルワーイル氏が「自衛隊によりサマワの失業問題が解決され
 ることを願う。そのために日本人を守れ」とのファトワ
・「手当てがこれほど高額な軍隊は、世界でも日本だけである」
 「アメリカ軍でさえ、海外派遣の手当ては、1日約10ドル」
・2003年12月末、オランダ軍兵士が民間人一人を射殺。兵士は本国に召還され、
 検察当局から殺人罪などの容疑で告発された後、釈放。
 CPA指令第17号により、連合軍の要員は母国の法律の適用を受ける。
 平和維持部隊が刑法で告発されるという前代未聞の事態


 <第二章>
 逮捕されたフセインは偽者ではないかという説を披露
 逮捕に至る過程での不可解とか


 <第三章>
・ブッシュ大統領の祖父はヒトラーとの取引が発覚し資産凍結処分
 「敵国との通商禁止法」
 1942年ニューヨークのユニオン銀行を閉鎖。ナチの隠し口座を開設していた
 から。銀行の経営者が祖父。 
・父ブッシュはペンゾイルを世界最大の石油会社に。ビンラディン一族は
 ビジネスパートナー
・フセインの資産は数兆円?
 欧米の企業に投資(ダイムラー、仏マトラ、伊ミサイル会社等々)
 その資産をブッシュと”山分け”、だからフセインは生きている?
 というような説を開陳しているのですが、、、、、


 <第四章>
・アメリカ・オクラホマ州オクラホマシティに「イラク人村」があり、それが
 「オクラホマの秘密」
・バグダッドに世界最大のアメリカ大使館を建設
 エシュロン:盗聴システムの構築
 日本の三沢にもある「像の檻」を2基建設工事は既に始まっている
 1基に諜報分析要員が3000人必要、2つで6000人
 これまで不可能と言われた光ファイバーの傍受実験も
 独仏はこれに対抗し欧州通信傍受システム構築の動きが始まっている
 日本は一人”蚊帳の外”

・湾岸戦争後の経済制裁下での”オイル・フォー・フード”
 その石油の8割をアメリカの石油会社が買占め
 (イラクの石油は高品質で採掘コストは安い)
 (アメリカ国内の油断はあと10年で枯渇する)
 2000年11月フセインは「今後は石油代金のドルでの受け取りを拒否する。
 ユーロでしか受け取らない」と宣言。この時からアメリカの対イラク強硬姿勢
 が始まった。
 フセインは100億ドルをユーロに変える。
 その後ユーロ高となり、フセインは資産を17%膨らませる
 「フセインは賢明である」と他のアラブ諸国に広まる
 ・ヨルダン、リビアもユーロに切り替える
 ・(対米輸出国トップとなった中国も「貿易の決済は将来不安がつきまとう
   ドルではなく、ユーロで行いたい」)
 ・2002年4月OPECのヤラニ市場分析部長がスペインで、「ユーロ圏はOPECの
  総輸出量の45%以上を引き受けている。アメリカ以上に大事なお得意様だ」
 ・ユーロ加盟国も石油を買うのにドルを買う手数料に辟易
 
 OPECや中国、ロシアまでユーロにシフトしたら、ドルは大暴落
 このままでは、「ドル1極体制」から「ドル・ユーロ2極体制」へと移行して
 しまう

「今回の戦争の最大の目的は、石油を背景にした『ドル基軸通貨体制』の維持が
 本当の目的だったのである」
 だから、このイラク戦争を、「アメリカ対ヨーロッパの大西洋戦争」と呼ぶ

 戦後のドサクサ紛れに、「オイル・フォー・フード資金」を「イラク復興基金
 」に衣替え。本来イラク人に食糧・医療品を供給する資金が、アメリカ企業の
 復興関連ビジネスへの支払いに流用できるようになった
 2003年6月、イラク開発基金の口座がニューヨーク連邦準備銀行に開設
 イラク中央銀行に置くはずだった(国連安保理の経済制裁解除決議)


 <第五章>イラク復興ビジネスの実態
・自衛隊には水道インフラの復旧や汚染されたティグリス・ユーフラテス川の
 浄化技術がある
 米企業ベクテルも汚水浄化の仕事を受注しているが、浄化作業は全く進んで
 いない
・アメリカの<献金企業ランキング>と<受注企業ランキング>の対比
 献金額に応じて受注額が多くなっているのは、一目瞭然

・米兵の自殺者は20名(陸軍18名、海兵隊2名)
 内部調査によると、
 ・ストレスで精神安定剤を飲み過ぎて死亡
 ・帰国するための「自作自演の負傷」が致命傷に
 ・戦友にレイプされてショックで自殺した女性兵士
・2003年12月8日、精神異常と判断された兵士600名が送還

・民間戦争会社のスタッフ1万人以上がイラクに
 ・正規米兵の日給は5000円程度
 ・戦争のプロは日給10万円程度
  今年度の追加予算870億ドルの3分の1が彼らへの報酬


 <第六章>
・バグダッド高速道路、バグダッド国際空港は日本企業が造った
・湾岸戦争前、クウェートでも日本は、「この10年の大規模プロジェクトで
 50%以上のシェア」
 湾岸戦争前、1979年、日本企業の全海外での建設受注額の45%をイラクから
・イラク戦争で、建設機械のコマツ、川崎重工の株価が高騰
・住友商事とNECは携帯電話事業の通信施設を一部受注
・1980年には日本の総石油輸入量の7.5%はイラク原油
・米警察・FBIのパトカー車載パソコンで、パナソニックがかなりのシェア
・赤いサイレンは大阪の企業パトライトがほぼ独占


 <おわりに>
 ジョーク
 「冷戦で勝った国はどこか?」「日本だ」
 「湾岸戦争で負けた国はどこか?」「日本」
 「イラク戦争で負けた国はどこか?」「?」

「イラク戦争:日本の分け前」ビジネスとしての自衛隊派兵:浜田和幸(光文社)