アメリカのヒスパニック系の若い兵士がイラクで戦死しました。
 残されたビデオ映像で、彼は「イラクの子供を助けて帰りたい」と語っています。

 父親は、イラク現地を訪れ、息子が亡くなった地に小さな十字架を立てていました。

「テレビで見ていたイラクとは全く違っていました。
 それまではイラクの国民は解放されて幸せになったと思っていました。
 しかし、イラクに行ってから、私の考えは変わりました。
 イラクの国民は抑圧されていることを知りました。
 子供達は救いを必要としていました。そして、たくさんのイラク人の死を見ました。
 イラクの現実を見て、私は確信しました。アメリカがイラクでやっていることは間違っていると」

 父親はその後、イラク戦争反対、米軍の撤退を訴える運動の先頭に立っています。

 父親は同じヒスパニック系の学校を訪れました。
 ヒスパニック系の学生達の多くは、まだアメリカ国籍を持っていません。
 構内では、アメリカ軍隊員が学生を軍に勧誘しています。
 大統領令によって、軍に入隊すればすぐにアメリカ国籍の申請ができるようになりました。

「息子もそうでしたが、アメリカ国籍を持っていない若者は、軍にとって大歓迎なんです。
 亡くなったアメリカ軍兵士の中にも大勢のヒスパニック系の若者がいました。
 テロリストと闘う方法は、軍に入って、武器を持つことだけではないということを
 どうぞ分かって下さい」と訴え、拍手を受けていました。

 一粒の麦 死なずば そのままにてあらん
 死なば 多くの実を結ぶべし

「遥か戦場に散った夢・イラク戦争 各国の遺族たちの葛藤」:NHK・BSハイビジョン特集