混迷するイラク情勢。
私の頭の中も混迷しています。
自分の考えを少しでもまとめるために、自分の考えを少しでも整理して
みようと思って書いてみました。
<1>北部:クルド人自治地域
<2>中部:スンニ派地域
<3>南部:シーア派地域
<4>シーア派とスンニ派の共闘
<5>その他
<6>米軍
<1>北部クルド人地域
・北部クルド人自治地域は、今の所、相対的には安定していますね。
91年の湾岸戦争以降もう何年も米軍と共同行動を積み重ねてきたという実績
があります。
また、彼ら自身、その本心はともかく、「クルド独立」という戦略は掲げて
いません。その限りでは、周辺諸国との現在の情勢を考慮した現実的判断だと
思います。
・クルド両派は長年にわたる抗争を停止し、連合している。
・キルクークを巡る攻防
キルクークの支配権を巡っては、スンニ派・シーア派連合勢力と武装対峙して
います。
米軍の撤退ということになれば、両勢力の衝突は必至かもしれません。
・トルコの動向
また、クルド人勢力がキルクークを支配するのをトルコが容認するかどうかも
疑問です。現在でもトルコ軍内部で意見対立があり、意思一致できていません
<2>中部スンニ派地域
・米軍に武装抵抗を続ける<急進派>、
しかし、部族長層やスンニ派宗教指導者層は、<穏健派>だと思われます。
また、現在までの所、<急進派>は<穏健派>とは、相対的に別個の行動を
取りつつも、<穏健派>の意向を無視するとも思えません。
<穏健派>は、米軍との全面戦争を決断するとは思えません。ベトナム戦争時
のように、ソ連や中国の軍事的・経済的支援を期待できる強力な後ろ盾が存在
するとは思えません。勿論イスラム諸国からの支援はあるでしょうが、そう強
力なものになるとも思えません。
そもそも米軍と全面戦争して軍事的に勝てるとは誰にも思えません。
従って、できることは、小規模武力衝突以上のことではないと思われます。
<3>南部シーア派地域
・現大アヤトラ・シスターニ師は<穏健派>であり、多数派です。
師の戦略は、「待ちの戦略」だと思われます。
シーア派が国民の六割を占めるのだから、待っていれば、自ずと自らにヘゲモ
ニーが取れるという計算だと思われます。
・老練で狡猾なアメリカの策謀
アメリカがイラクにシーア派主導の国家をそう易々と創り出させる訳がありま
せん。
暫定憲法の中に正式憲法を決定する補則条項として「国民投票で、イラクの
18の州のうち3つ以上の州で、有権者の3分の2以上が反対した場合、全国
全体の過半数が賛成していても、その法律は発効しない」とする条項が付け加
えられた。
この条項は「少数派の意見も重視する国家体制」を実現するという名目で付加
されたが、実のところ「クルド人が賛成しない正式憲法は発効しない」という
ことを意味した。クルド人はドホーク、アルビル、スレイマニヤという北部3
州に集中して住んでおり、この3つの州はクルド人口が3分の2以上を占めて
いる。3州の人口は合計で約50万人だが、彼らが反対すれば、イラクの残り
の2000万人以上が賛成しても、正式憲法は制定できなくなった
・大統領制について
暫定憲法で定められた新生イラクの大統領は、何か意思決定しても、2人の副
大統領が拒否権を発動すると無効にされてしまうという弱い立場のポストにな
る。その代わりに権力を持ちそうなのが「首相」である。
その最初の首相に『予定』されているのがチャラビだ。
(田中宇氏のHP参照)
・<穏健派シスターニ師>と<急進派サドル師>
・<同一性>:上記のアメリカの統治政策に反対
・<区別性>:その反対の仕方が、<平和的に>か<反米武装闘争>か
・「暴れん坊将軍」サドル師
サドル師は、<急進派>で、反米武力闘争路線ですね。
サドル師はその父親が元大アヤトラで、フセインに殺されたという純粋サラブ
レッドであり、血統的には文句なく第一級の血筋ではあります。
しかし、まだ三十代と若く、血気盛んで「暴れん坊将軍」です。
シスターニ師の下で、大人しくしていたのですが、米軍からの逮捕状という
挑発にのり、武装闘争に立ち上がりました。
米軍からの逮捕状というのは、両派の対立を煽るのが目的なのか、シスターニ
師の黙認の下なのかは分かりません。
反米武装闘争を勇ましく煽り立てることにより、シスターニ師の穏健路線に
物足りない層が、サドル派に加わりつつあるのだと思います。
配下のマハディール軍民兵が一万人というのは、勢力が増加しつつあるから
ではないでしょうか。
しかし、両者とも米軍との全面戦争を決断するとも思えません。純粋軍事的に
勝てるとは思えないからです。
サドル師は米軍と闘っている姿勢を見せることで勢力を拡大したい。
シスターニ師は、闘いを収めることで権威を誇示したいというところでしょう
か。
・サマーワでは、数日前、サドル派の千人のデモに、穏健派が更に千人加わりま
した。
・サマーワで先日、自衛隊に配慮したサドル派の宗教指導者が更迭され、今日、
学生300人の自衛隊撤退要求デモが行われました。
・「サラーム・パックス:バグダッドからの日記」によると、大学構内で、イス
ラム教の宗教組織であるハウザが伸張していると書かれていました。
<4>シーア派とスンニ派の共闘
ファルージャ支援という運動がイラクで巻き起こっているそうです。
それには、シーア派、スンニ派の区別なく行われています。
少し前から、両派は共同での礼拝、共同でのデモ行進という共闘関係を積み
重ねてきました。
<5>その他
・「イラク暫定評議会」の数名がファルージャなどへの攻撃に抗議して辞職
・新生イラク軍は、ファルージャへの攻撃を拒否、
更には、ファルージャへ武器を横流しする者もあるとのこと
同じイラク人を殺せないということだと思われます。
・復活したイラク共産党は何をしているのか全く分かりません。
かつては一大勢力を誇ったんですが、他国同様、イスラム復古の波に飲み込ま
れてしまい、最早一大勢力となることは不可能なのでしょうか?
・少数民族:アッシリア人、トルクメン人等について
<6>米軍
米軍はシーア派だろうが、スンニ派だろうだ、両者の共闘だろうが、軍事的に
負ける恐れはありません。
しかし、数千、数万のイラク人を殺して勝利しても、明らかにデメリットの
方が大きすぎると思います。
従って、これ以上の戦闘の拡大を望んでいないと思われます。
従って、国連を呼び戻すという選択肢しかないのではないかと思われます。
しかし、国連自体が、現段階でどう考えているのかが分かりません。
・パウエル国務長官の「パートナーシップ戦略」(「論座」2月号収録)
ネオコン派を抑え、現ブッシュ政権では、パウエルの中道派が主導権を把握
・大統領選では、ビンラディン逮捕でもない限り、ブッシュは負けると思って
います。
・民主党のケリー候補のイラク政策が分かりません。
「国連を重視する」としか言っていません。
草稿:イラク情勢