イラク人の多くにとっては、<テロリズム>を批判するよりも、
<反米>優先という気持ちなのは、日本での報道でも分かります。

 しかし、レジスタンスには、テロリズムとは異なる<倫理>が求められると
私は思います。
 たとえ海外からのテロリストや原理主義過激派であれ、米軍に打撃を与えている
限りで肯定的に評価するというのは、機能主義です。
「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」というケ小平の
「白猫黒猫論」という考え方は、プラグマティズムです。
 少なくとも、そのテロで身内や大切な人を失った人に対して、そんな言葉は
通用しません。
テロに巻き込まれた何の罪もない多数の子供を含む多くの一般市民に向かって、
そんな言葉を投げつけられますか?
 私にはできませんし、それは間違っていると断言できます。

 私がイラクの武装勢力を全面的には支持できない理由の一つです。
(他には、原理主義勢力による女性への迫害があります)

 「目的の為には手段を選ばない」という論理は間違っています。
かつて、埴谷雄高は、「目的は手段を浄化するか」と問題を立てました。
正しい目的は、間違った手段を正当化しないということです。


 イラクの一般市民の最も望んでいるものは、<治安回復>と<雇用回復>だと
思っています。
 そして治安の回復を担うのは、米軍ではなく、イラク警察を希望しています。
イラクの一般市民の大多数が望むイラク警察に対してテロを行うということは、
イラクの一般市民多数派の希望を否定することです。
事実、イラク一般市民98%は、イラク警察へのテロに反対しています。

 イラク警察には、<米軍や傀儡政権を下支えするという側面>は、
確かにあると思います。
 だからと言って、多くのイラク国民が熱望する<治安回復>という側面も
確かにあります。
 従って、イラク警察へのテロは、武装勢力へのイラク市民の支持を乖離させる
ものとなると思っています。
 つまり、誤った<戦術>だと思います。


 NHK:ETV特集:「イラク:占領下に生きる」
 <今後1年間最も望むものは?>
・治安の回復    :64%

 <治安回復に何が有効か?>効果あり:効果なし
・失業者に仕事を与える:96%: 2%
・イラク警察の強化  :93%: 3%
・イラク政府に権限移譲:51%:31%
  (2004年2月世論調査)

 <警察署へのテロ>
「警察が襲われる原因の一つは、犯罪者を処罰する機能が麻痺していることです
 。裁判官の多くがフセイン一派として追放されたため、裁判がほとんどできな
 いのです。犯人を捕まえても結局は釈放、犯罪者が仕返しに警察を攻撃するケ
 ースが相次いでいます。」
 警官を辞める人も相次いでいます。ある辞職した警官は、
「私が捕まえた犯罪者の中には、私を脅迫してくる時があります。彼らは私を
 逆恨みしている。以前は、殺人など重い罪を犯せば、一生刑務所か処刑されて
 いたので、そんな心配はありませんでした。それが変わってしまったのです。
 こんな状態では警察に戻りたくても戻れません」

 <誰が攻撃しているのか?>
・地元の武装勢力?
・開戦前にフセイン政権が釈放した犯罪者?
・海外のテロリスト?
 「グループの境目がはっきりしていない」
 「あるメンバーが共通していたり、ある部分では連絡を取り合ったり」

 直接市民と接する検問は、米兵ではなく、イラク人警察官が行っている
 言葉の問題が大きい
 イラク人警察官は緩衝材の役割を果たしている。これは非常に功を奏している
・給与も十分ではない
・装備も十分ではない



NHK:BSドキュメンタリー「バグダッド:占領下に生きる」
 <武力攻撃を容認できるか?>
 容認できないの割合は、
・イラク警察:98%
・連合軍  :75%くらい
・CPA  :80%くらい


 イラクの反米武装勢力は、「アル・カイダ」等の「テロリスト」集団ときちんと線が
引けないようですね。
 そして、それこそが問題だと思います。
 論理的には、<テロリスト>と区別できない<レジスタンス>は、
もはや純粋なレジスタンスそのものではありません。
 もはやレジスタンスではない何者かです。
 レジスタンスという要素をも内包した、レジスタンスではない何者かです。
<レジスタンスという要素>と<テロリストという要素>と<原理主義という要素>と
<犯罪者(誘拐、強盗、武器、麻薬売買その他)という要素>等々の、その統一です。

 私が望むのは、<組織的=実体的>にも、<倫理的>にも、
テロリズムを否定することです。
 それができない限り、支持できません。


戦争前のチェチェン人口は、約百万人。その中には、25万人のロシア人や
他の民族も含まれています。
 従って、戦争前のチェチェン内に住むチェチェン人は、約80万人程度と
推測されています。
 この内、20万人が既に死亡していると日本では報道されています。
虐殺されたのが、20万人なのではなく、戦争を通じた死者数です。
食糧不足、栄養失調、衛生環境悪化、医療品不足等により病死した多数の死者数
も含まれています。
 しかも、チェチェン人同士による死者数も含まれています。
 チェチェン人同士での、つまり、
・<親露派>と<独立派>の数度の武力衝突
・<穏健派イスラム協会>と<原理主義派>との数度の武力衝突
・<穏健派独立派>と<強硬派独立派>との数度の武力衝突

 更には、チェチェン人犯罪者による犯罪(数千件の誘拐、強盗)
数百件の列車強盗やトラック強盗
チェチェン・マフィアによる犯罪、武器・麻薬の密売

 これら全てでの死者数の総数が約20万人だと思っています。

 もちろん、ロシア軍の『汚い戦争』はおぞましい限りです。

 チェチェンのイスラム教は、スーフィー派。
歌って、踊ってというチェチェンの国民性にまでなっています。
歌って、踊ってというイスラム教なぞ、アラブ・ムスリムからすれば、
異端そのものなのでしょうね。
 しかし、それがチェチェンでした。
しかし、ソ連崩壊を前後して、
・サウジ等の資金援助で、アラブとの宗教的交流が進み、
・アフガニスタンや、グルジアのアブハジア紛争等の国際的なイスラム・ネット
 ワークとの結びつきが強くなるに従い、若い世代でのスーフィー派離れ=原理
 主義への傾倒が増加していました。

 そういう意味では、イラクでの、原理主義勢力の勢力拡大も同様ですね。

・<イラク>と<チェチェン>、
・イスラム・ネットワーク
・原理主義勢力の勢力拡大
 イラクでもチェチェンでも年配層多数派は穏健派イスラムですね。
 <戦争><治安悪化><失業><国際的交流>、、、これらの要因が、
若年層の原理主義への傾倒を生じさせているようですね。

レジスタンスとテロリズム