現在コソボ自治州は国連の暫定統治下にあります。
今年3月には19人もの死者を出す衝突が起きました。
セルビア系住民の居住区はコソボに点在しており、アルバニア系住民による
迫害から逃れて、廃墟のようになった街も数多くあります。
多くのセルビア系住民が避難したまま戻ってきていません。

 セルビア系住民は、居住区から出ることすらできません。
移動の自由を奪われているセルビア系住民を支えているのはラジオです。
紛争後、放送も新聞・雑誌も主なメディアは全てアルバニア語になりました。
この為、セルビア語で放送する小規模なラジオ局がコソボ各地で開局されました。
音楽や宗教の番組から日々のニュースまで、ラジオから流れるセルビア民族の
言葉に住民達は耳を傾けています。
「このラジオがなければコソボで起きていることが何もわからないよ」
「コソボでは移動の自由も表現の自由も私達には認められていません。
 その中でセルビア語のラジオ局があることは大きな意義があります」

 明治大学の佐原徹哉助教授は、
「NATOの軍事介入の口実は、人道的介入という大義名分だったが、アメリカ政府
 が本当に目指していたのは、NATO軍を派遣したという実績をつくることだけだ
 った。つまりアルバニア人やコソボの人達の為ではなくて、従来防衛の為の
 同盟関係であったNATOをアメリカを盟主とする多国籍軍に変える為であった」
「現状では、何か重要な問題を決定する際に、現地の人々は自分達では何も決め
 られずに、全て国連の指示に従わなければならないことになっている。
 これは丁度植民地主義と同じ構図になっている。その為、アルバニア人もセル
 ビア人も一様に反発している」

 コソボの独立を認めると、周辺諸国、マケドニアとギリシャ等にも多くの
アルバニア系住民が住んでいるので、問題が更に広がる可能性もある。

 『一民族一国家という民族国家という考え方では対処できない』
「民族紛争は、独立を認めるが故に、それを目指してしまう。独立国家という
 選択肢はないんだということになれば、現状でどうやって問題を解決していく
 のかという考え方が自然に生まれてくる」

「コソボ 消えぬ民族対立」NHK・BS