(2005.12.20)NHKBS

・司会:程鶴麟
中国科学院アカデミー会員何祚休氏が
炭鉱事故多発は「国民が余りに貧しいからだ」
「主な原因は貧困であって、腐敗ではない」

・兪偉峰(大学教授)
「政府や炭鉱の事業主がやるべきことを正さずに、
労働者の責任というのは無責任極まりない」

・康紹輝(舞踏家)
「何氏の言葉からは人間としての同情心が全く感じられません。
道徳心のない炭鉱経営者や官民癒着した暗黒勢力が
被害者の家族を豊かな生活に導けるんでしょうか」
「事故対策をしないなど、炭鉱経営の腐敗が事故の一番の要因です」

・李(時事評論家)
「もちろん危険が伴うことは皆百も承知です。
坑内で一日働けば一週間分の農業収入に値するんです。
貧しい時の選択肢は狭まるものです。
生命の危険を冒しても糧を得ようとするんです」
「炭鉱事故の発生件数は変わらないと思います。
ただ今は事故の報道が多くなっただけなんです」

・康紹輝(舞踏家)
「違います。事故件数も死亡人数も増えています」
「大飢饉は物質的に貧しいからではなく、
制度保障に問題があることが引き金となって発生する。
貧しい人が平等な権利を保障されていないことが理由」


 <視聴者のメール>
「『中国で生まれた不運を恨むしかない』という
何氏の炭鉱労働者に向けた言葉、
近い将来、この言葉が、汚職官僚や悪徳事業主達の
『中国に生まれついたことを恨むしかない』に置き換わるよう望む」

「炭鉱事業主が今のように無条件で労働者を雇うことができなくなれば、
労働環境を改善するだろう」

「労働力を安売りする市場がなくなれば、
炭鉱事業主らも、たやすく金儲けなどできない筈」


 <視聴者のアンケート結果>
何祚休氏の主張は
・間違っている  :63%
・理にかなっている:36%

 <視聴者のメール>
「事業主は余りにも悪徳」

「彼らは何故貧しいのか、貧しいからといって何故命を売るのか」

「貧困は農民を危険な仕事に向かわせる前提にすぎず、
腐敗こそ炭鉱事故が絶えない直接の原因」

「何氏の発言は、我が国の学者が
利益集団の代弁者に成り下がったことを証明している」

「汚職に手を染めた者は、金と権利で金儲けし、
貧乏人は肉体と命で金を稼ぐ」



・李(時事評論家)
「広東省の出稼ぎ労働者の月収は六百元ですが、
炭鉱労働者は最高四千元もらえるので危険を冒すんです。
特に家に病人がいる場合は危険をかえりみません」

・康紹輝(舞踏家)
「李さんは物事の表面しか見ていませんね。
問題の原因を理解していませんよ。
炭鉱事故が起きる主な原因は、労働者が貧しいからでしょうか。
李さんは物事の表面しか見ていないので、
労働者が置かれている本当の状況を理解できていないのです。
炭鉱労働者の為に、政府も炭鉱企業も安全措置を用意する義務があります。
黒竜江での事故に対し炭鉱側は『労働者の質が低かった』と発言したそうです。
仮に労働者の質が低いとして、それは彼らが貧しいからでしょうか。
企業は研修を行わなかったのでしょうか。
国が再三安全強化に関する緊急通達を出していますが、
きちんと実行しなかったのです。
何教授は、『労働者は死んだが、GDPの成長に貢献した』などと、
まるで事故を評価するともとれる発言をしたのです。
中国の炭鉱事故は貧しさが起こしたのではありません。
官民癒着、法律を守る意識の欠如、基本的な良識の欠如といったものが原因です
インターネットに『アカデミー会員といえども、人間性が不可欠だ』という
書き込みがありました。
悲劇的な事故に対して、あんな良識に欠ける発言をするなんて、
人間性のない人が、人民の利益の代表を唱える三つの代表思想の研究など
できるんでしょうか」


 <視聴者のメール>
・安徽省合肥
「貧困と腐敗によって炭鉱事故が起きている。
貧しい者は、やむを得ず炭鉱へ入り、
腐敗があるから現場の安全は保障されない」

・安徽省合肥
「貧困が主な原因。
腐敗は多くの要因の一つにすぎない。
裕福な者が石炭を掘りに行く訳がない」

・広東
「貧しい者だけが生命の危険をかえりみず仕事をする。
もちろん貧困が主要な原因。
役人の息子が炭鉱に入るなんてあり得ないでしょう」



・李(時事評論家)
「役人の息子が鉱夫にならないだけでなく、
国境地帯で争いが起きたら、高官の子弟は皆退役するんです。
平時は入隊を希望しているんですよ。
最近の統計によりますと、炭鉱労働者の90%余りは農民です。
しかも国家安全生産の規定では、
指導者が一緒に炭鉱に降りなければいけないとなっています。
でも金持ちや権威者は降りていかないんです」

・康紹輝(舞踏家)
「インドは中国より貧しいのに、中国の炭鉱事故は
インドの13倍もあるのは何故ですか。
貧しい労働者が鉱内に入ったのが悪いのではありません。
経営者、管理者が労働者の命を軽んじたんです。
こういう悪徳経営者がいる訳なんです」

・李(時事評論家)
「月千元の社会保障を得られれば、
貧しい人だって炭鉱労働者にはならないでしょう。
最も貧しい河北省の住民の月平均所得はわずか70元なんです」

・兪偉峰(大学教授)
「社会は彼らの生命の安全を守る責任があるんですよ。
社会の責任であり、事業主の責任でもあるんです」

・李(時事評論家)
「国家安全委員会の責任者は炭鉱の安全設備資金が
五百億元足りないと言っているです」

・兪偉峰(大学教授)
「それこそ直接の原因であって、
炭鉱労働者の貧しさが原因じゃないんです」


 <視聴者のメール>
「炭鉱事故発生の原因は貧困。
貧しいから良い教育を受けられない。
よって多くの労働者は自らの合法的権益を
どう守ればいいのか知らない。
事業主は、そこにつけこんでいるのだ」

・康紹輝(舞踏家)
「表面はそうでしょう。
しかし安全管理の担当者、国営の炭鉱経営者、党書記など、
税金で暮らしている公務員達は管理を徹底していたんでしょうか。
背後には、こういう問題があるんです。
貧乏人が悪いのではない。
今の管理では金持ちが坑内に入ったって
同じように事故に遭いますよ」

・兪偉峰(大学教授)
「テレビや電球を製造する場合、
安全基準を満たしていないと生産できないんです。
李さんの論理でいうと、貧乏人は質の悪い商品を買う、
それが爆発したって仕方ないということになりますよ」

・李(時事評論家)
「兪教授、貴方は長い間カナダにいたから。
カナダを基準にしてはいけませんよ。
中国の現状を見つめるべきです」

・兪偉峰(大学教授)
「20年前は貧しかったのに、炭鉱事故はなかったです」

・康紹輝(舞踏家)
「中国の、建国前、建国後、現在の炭鉱事故の数。
中国では炭鉱事故が年々増えています。
過去の累計よりも多いくらいだし、
中国で年間に炭鉱事故で亡くなる人の数は、
世界の合計に相当する六千人」

・李(時事評論家)
「今の報道機関は昔と比べて地位が高くなったんです。
以前は国家機密だったんですから、
そのデータは信じられませんよ」

「炭鉱事故は貧困が原因か」(香港フェニックス)