「ボスニア戦記」
(水口康成:三一書房)
1700円

 たった一人で戦場に潜入し、セルビア勢力側からの戦場カメラマンの報道。
反セルビア一色の西側報道に叛旗を翻した孤高の報道。

 クロアチア戦争時、クロアチア内のセルビア人を保護するためにユーゴ連邦軍は両者の間に
割って入って、両者の衝突を防いでいた。そのユーゴ連邦軍を、西側報道ではセルビア軍と報道している。
 しかし、そのユーゴ連邦軍の中には、クロアチア人も多数在籍していた。
「クロアチア民族主義の中では多民族との共存ができない」「友人に武器を向けることはできない」
「今まで通りユーゴのままでいたい」。
 そして、そのユーゴ連邦軍とクロアチア軍とが軍事衝突していく。

 もう一つ記憶に残った貴重なエピソードとしては、民族浄化の中、旧来の知人同士で、お互いに
電話等で連絡を取り合い、「今晩は外出するな」とか、「今すぐ家を出て、逃げろ」とかと、民族浄化=
虐殺される直前の友人を多く、救い合ったということを知った。
やはりそうだったのかと、少しは気が休まる思いがした。
 民族浄化(エスニック・クレンジング)を行ったのは、一般民衆ではなく、双方の狂信的な民族主義集団=
私兵と言われている勢力であるということを知った。
 そしてその背後には、資本主義化=私有財産化の為に暴力的に、自分達の支配地域を拡大しようと
いう目的があったのだと思う。