<停戦の可能性はどれくらいあるんでしょうか>

(MARWAN MUASHER:Former Deputy Prime Minister, Jordan)元ヨルダン副首相
「現在の中東情勢を見ますと、穏健派が段々過激になってきています。
過激派が穏健になるのとは、逆なんです。
中東全体の安定、和平、これはヒズボラ、レバノンだけの問題ではないんです。
これは基本に遡ります。
占領について、和平プロセス全体の再生にかかってくるんです」

<和平プロセスは可能なんでしょうか>

(MARK MALLOCH BROWN:UN Deputy Secretary General)国連副事務総長
「国連事務総長は敵対行為の停止と言っています。
双方とも自分達の基準ではうまくいっていると言っていても、
市民を保護する、そして戦闘を止めて、交渉する。
『持続的停戦』、パレスチナの問題もカバーする必要があると思います。
長期的な問題が爆発しそうになるかもしれません。
根本的に解決できない可能性があります」

(EDWARD GNEHM:Former US Ambassador to Jordan)元米駐クウェート大使
「以前の状態に戻るのなら停戦に意味はない。
停戦が希薄化してはならない」

(LORD HANNAY:Former British Ambassador to the UN)元英国連大使
「以前の状態に戻る可能性が高いですが、また事態の悪化になりかねません」

(MARWAN MUASHER:Former Deputy Prime Minister, Jordan)元ヨルダン副首相
「まず停戦して市民の殺害を止めること、
国全体の破壊を止めることが重要です。
しかし以前の状態に戻っても、これはヨルダンとしては、
レバノン政府が国全体に権限を行使しなければいけない。
しかし他にも問題があります。
アラブ世界では世論が過激になっているということです。
アラブの穏健派というものは、下から来るものなんです。
しかし今回は、テレビなどを観て非常に激怒しています。
この傾向を変えるのは、和平プロセスです。
そして和平プロセスはレバノンだけではないんです。
パレスチナの問題もあります。
まあ一回で全部解決するには至らないにしても、
占領という根本的な問題に取り組むことなんです。
これを枝葉末節の問題と捉えていたのは非常に問題だと思います。
ヒズボラは今英雄になっています。
今は感情的な反応が見られます。
多くは、テレビを観たりして、子供が殺されているとか、
橋や社会基盤が破壊されているのを観ているからです」

<アラブ世界の政治家達はなかなか現状を非難しないですね。
最初はヒズボラを非難していたんですが、
それは一般の人達の意見とは違うんですか>

(MARWAN MUASHER:Former Deputy Prime Minister, Jordan)元ヨルダン副首相
「そうです。
問題を全体から見ようと思っているんです。
単に感情的な対応をするのではないのです。
ヒズボラは間違ったことをやりました。
レバノン政府は権限を全土に及ぼす必要があります。
しかしイスラエルは全土を破壊しているんです」

<ライス長官の『中東で産みの苦しみが始まっている』というのは>

(LORD HANNAY:Former British Ambassador to the UN)元英国連大使
「『産みの苦しみ』というのは違うと思う」

<『産みの苦しみ』というのは問題ですよね>

(EDWARD GNEHM:Former US Ambassador to Jordan)元米駐クウェート大使
「『産みの苦しみ』というのは、これは断末魔にも繋がるということなんです」

(MARK MALLOCH BROWN:UN Deputy Secretary General)国連副事務総長
「地域の転換的です。
現状に戻っていくことはできないと思います。
レバノン政府の崩壊、ヒズボラへの支持が強まっていく
ということが懸念されます。
イスラエルの反撃の目的が挫かれることが考えられます」

(MARWAN MUASHER:Former Deputy Prime Minister, Jordan)元ヨルダン副首相
「原則に戻るべきです。
自衛権があるからといって、国を破壊していいということにはなりません。
正当化できません。
イスラエルとしてはアラブの世論を先鋭化することで利益になるんでしょうか。
平和を達成する。占領を終わらせることです。
兵士は近く返還されると思いますが、また起きるかもしれません。
ちゃんと根本的な原因を解決しなければなりません」

<アラブでも分裂が見られますね>

(MARWAN MUASHER:Former Deputy Prime Minister, Jordan)元ヨルダン副首相
「私が言いたいのは、イスラエルと国際社会は、
アラブ穏健派を追い込んではいけないということです」

(LORD HANNAY:Former British Ambassador to the UN)元英国連大使
「イスラエルは国際社会が一枚岩であれば耳を傾けるでしょうが、
分裂していれば、アメリカの言うことを聞くに決まっています。
イスラエルは過剰な武力行使によって何も目的を達成していません。
ヒズボラはまだ健在です。ロケット弾も撃ち込まれています。
一方でレバノンの一般市民の死傷者は増えるばかりです。
イスラエルの行動は正当化できません。
一方的な措置、これはうまくいかないということです。
状況は安定化することはありません」

<しかしヒズボラは一方的に武装解除しないでしょうね>

(LORD HANNAY:Former British Ambassador to the UN)元英国連大使
「国際社会が一枚岩になって、シリアを説得することができれば、
可能性としては、一歩一歩、ヒズボラの解体、
イスラエルの付近からの撤退は可能かもしれません。
時間はかかるかもしれませんが、不可能と思ってはいけません」

<国連駐留軍は何十年も駐留していますよね>

(MARK MALLOCH BROWN:UN Deputy Secretary General)国連副事務総長
「大事なのは、兵士や国籍ではなく権限なのです。
強い権限を持つ平和維持軍が必要です」

<ヒズボラを解体する?>

(MARK MALLOCH BROWN:UN Deputy Secretary General)国連副事務総長
「平和維持活動というのは、合意を実行することなんです。
まだ合意はできていません」

<ボルトン大使はテロリストとの停戦はどうすれば可能かと言っていますが>

(MARK MALLOCH BROWN:UN Deputy Secretary General)国連副事務総長
「IRAなどのテロ組織も存在しました。
そういう政治的運動とも直面しなければならないと思います。
レバノンのシーア派の中では、ヒズボラは大変な人気です。
国民の抵抗軍のようなものです。
南レバノンでは各種サービスも提供しています。
そういった政治的、軍事的組織として取り扱うべきです」


<停戦に結び付く提案を>

(MARWAN MUASHER:Former Deputy Prime Minister, Jordan)元ヨルダン副首相
「政治的協定が必要だと思います」

(EDWARD GNEHM:Former US Ambassador to Jordan)元米駐クウェート大使
「和平プロセスを大きな文脈の中で解決しなければならないと思います。
一つ一つを解決するよりもその方が先だと思います」

(MARK MALLOCH BROWN:UN Deputy Secretary General)国連副事務総長
「戦闘を終わらせて、時間を置いて和平協定を実施する。
シリアはヒズボラを支持していますが、国連としては
シリアとイランに対応する必要があると思うし、その用意もあります」

(LORD HANNAY:Former British Ambassador to the UN)元英国連大使
「国際社会が結束すること。
広い議題で皆が一堂に会すること、これが必要です」

中東危機 : HARD Talk : BBC (2006.7.25)