反占領闘争とは、政治闘争と武装闘争の統一です。

武装闘争それ自体が目的なのではありません。
武装闘争は、あくまでも、反占領闘争という目的にとっての
手段であらねばならない筈です。
そして、武装闘争それ自体にも、一定の倫理が最低限必要です。
反占領闘争の名の下に、一般市民を殺害するのは、
反占領闘争の歪曲・逸脱だと私は思います。

つまり、イスラエルの一般市民への殺傷は認められません。

占領地のイスラエル軍への攻撃なら、
それは、テロではなく、レジスタンスです。
イスラエルのリヴニ外相もそう認めています。

圧倒的な戦力差がある。
それはその通りです。
そしてそれを口実に、
自爆テロやカッサム・ミサイルを肯定してきました。

しかし、果たして、圧倒的な戦力差を口実に、
イスラエルの一般市民への無差別テロを肯定できるのでしょうか。

確かに、イスラエルには、戦車、戦闘機、攻撃ヘリ、戦艦まであるのに対して、
パレスチナ側には、カラシニコフとRPGと迫撃砲とカッサム・ミサイルしかない
純粋軍事的には、全く勝負にならない。
だから、自爆テロにも一理ある、やむを得ない面もあるのではないか、
「止むにやまれず」という面もあるのではないかと思ってきました。
もちろん、一般市民への無差別テロは絶対に許されません。
倫理的には絶対に許されません。
論理的にも絶対に許されません。
しかし、現実条理においては、一理あるのではないか、
現実に他に抵抗手段がないのだとしたら、無理からぬ面もあるのではないか、
私はそう思ってきました。


倫理的、論理的に肯定できないだけではなく、
現実的、実践的にも肯定できないと思います。
イラクでは、米軍と、スンニ派地域での武装勢力とは、
圧倒的な戦力差があります。
しかし、武装勢力は互角に戦っています。
特にIEDという、ローテクな戦術が、世界最新鋭のハイテクの米軍を
日々悩ませているとは、何とも皮肉ではあります。

そんなに戦いたいのであれば、
占領地の占領軍であるイスラエル軍と戦えばよいではないか。
イラクの武装勢力は、世界最強の米軍と戦い、負けていない。
IEDというローテクで世界最強の米軍を日々苦しめている。
西岸の占領地で、イスラエル軍にIED攻撃をすればいいのではないか。
道路に爆弾を埋め、イスラエル軍車輌に被害を与える。
これなら、占領軍への攻撃であり、正当な攻撃だ。
イスラエルのリヴニー外相ですら、「占領への正当な攻撃」だと
認めざるを得ないのではないか。
何故、占領地の占領軍への正当なる反占領闘争ではなく、
イスラエルの一般市民を標的にするのか。


まあ占領地のイスラエル軍へのIED攻撃は可能だし、
効果的とも言えるとは思いますが、
当然、イスラエル軍の反撃を想定せねばなりません。
周辺への家宅捜索、掃討作戦による攻撃(家屋破壊、容疑者の逮捕・拘束)
無人機による偵察、無人機による攻撃、
等々と、当然、戦闘状態の激化を覚悟せねばなりません。
それを民衆の多数が支持するでしょうか。

民衆は、戦闘の激化ではなく、自らの生活、対話、和平、共存をこそ
望んでいるのではないでしょうか。

もちろん、和平の内容にもよります。
現在の壁やそれによる一方的な国境線画定を認めよなどという内容を
認めるとは到底思えません。

では、どうするのか、


世界で最も人口密度の高いガザ地区に
6000発の戦車砲弾を撃ち込んでいる。
その一般市民への死傷者は、数人だった。
6月10日のガザ海岸への誤射による死者七人が出るまでは。
そういう意味では、イスラエル側は
・自制的
・防衛的
・正確な射撃
と思う。
もし無差別にガザ地区の600発の戦車砲弾を撃ち込んだら、
数千人、数万人の死傷者が出るのではないでしょうか。
もちろん、付随的被害については、イスラエルにその責任はある。
被害を被った市民への謝罪、補償をせねばならないと思う。

しかし、では、ガザ地区から、イスラエル領へ向けて、
カッサム・ミサイル四百発を打ち込んだ者の責任はどうか?

イスラエルはガザから撤退したのであり、
そのガザ地区から、イスラエル領へ向けてカッサム・ミサイルを撃ち込むことに
一体どういう意義があるのか、私には理解できない。
パレスチナ解放闘争にとって、一体どういう意義があるというのだろう。

イスラエル側の反撃を計算し、
イスラエルによる反撃によって、パレスチナの一般市民への被害が出る。
それを国際的に訴え、非難する。
つまり、自国民に被害が出るように計算し、
政治的宣伝に利用しようとしているのではないか。
それ以外に、どういう意義や意味があるというのであろうか。

カッサム・ミサイルは、殆ど被害を出していないとはいえ、
さすがに至近距離に着弾すれば、死傷者は出してきた。


「占領への抵抗は正当だ」
それは正しい。
アラブ連盟のカイロでの会議で、そういう文言が正式に公表された。
主にイラクでのことを想定してのものだが、
パレスチナにももちろんそれは適応できる。
イスラエルのリブニ外相ですら、それは認めている。

「占領への抵抗は正当だ」
それはそうなのだが、しかし、何をやっても許されるとは断じてならない。
イスラエルの一般市民への無差別テロは断じて許されない
だからこそ、パレスチナの一般市民への、イスラエル軍による蛮行もまた
許されないのだ。


問題の本質的矛盾は占領にある。
国際社会は、1967年以前の停戦ラインから、イスラエル軍の撤退を求めている。
ハマスも、1967年のラインに、イスラエルが撤退し、
拘束者を解放し、難民の帰還権を認めるのなら、
イスラエルを承認すると公言している。

イスラエルが、自国領土内に壁を建設するなら、それはイスラエルの自由だ。
問題は、自国領土内ではなく、パレスチナ側に壁を建設しているから、
これは認められないのだ。
1967年のラインを超える壁は違法である。
つまり撤去されなければならない。
自国領土内へと壁を移動させればよいではないか。

リヴニ外相も
「確かに壁はあります。しかし所詮人間の作った物に過ぎないではないですか。
いつだって壁の位置を変えることはできますよ」と発言しています。


ハマスは、一方的停戦宣言を継続するだけでなく、
イスラム聖戦やアルアクサ殉教旅団による、
イスラエルの一般市民を標的にした攻撃を止めなければならない。
イスラエルの一般市民を標的にした自爆テロやカッサム・ミサイルの発射を
止めなければならない。

同時に、イスラエルは、暗殺攻撃を止めなければならない。



Hamas Fires Rockets Into Israel, Ending 16-Month Truce
http://www.nytimes.com/2006/06/11/world/middleeast/11mideast.html?fta=y

Gen.Aviv Kochavi, the Israeli commander for the south, said the army was
trying to combine aerial and human intelligence to hit rocket-firing
teams before or after they shoot, including a recent raid into Gaza,
near the beach, where a rocket-firing team was intercepted and killed.
Artillery, he said in a telephone interview, "is not the best solution,"
but can stop or distract the launching teams, and push them into more
populated and distant areas for firing,
which makes it harder for the rockets to hit Israel.
And, he said, "The message we are trying to convey, you can call it
deterrence, but it's, 'Ladies and gentlemen,there is an equivalence here
:so long as you shoot Qassams at us, we'll shoot artillery at you.'"

イスラエル軍南部指揮官 Aviv Kochavi 大将は、
海岸近くの最近のガザへの攻撃を含めて
ロケットを発射するチームにロケット発射前後に打撃を与える為に
空からの情報と人的情報を結合しようとしていたと言いました。
そしてそこでロケットを発射するチームが途中で捕えられ、殺されました。
砲撃は「最も良い解決ではありません」、しかし発射チームを止めるか、
あるいは注意をそらして、発砲することに対して、彼らをいっそう人が多い、
そして遠いエリアに押しやることができます。
それはロケットがイスラエルを攻撃することをもっと困難にします。
と彼は電話インタビューで言いました。
「我々が伝えようとしているメッセージは、
それを阻止と呼んでもよいのですが、
『ご婦人と紳士の皆さん、ここに同等があります:
あなたが我々にカッサムを撃つ限り、我々はあなたに大砲を撃つでしょう』」



(アルジャジーラ)2006.6.10
「それでは、テルアビブのデルイ、イスラエル軍報道官に伺います。
『イスラエル国防軍は、現在、テロ組織との全面戦争に従事しています。
彼らはロケット弾をイスラエル領内に向けて発射し、それこそ理由もなく、
イスラエル市民の安寧を侵しています。
イスラエルがガザ地区を切り離して以来、
パレスチナ側にはガザ地区の治安情勢をコントロールする機会があったにも
関わらず、パレスチナ自治当局は、議長も内閣も
ガザ地区を拠点とするテロ組織の取り締まりを行おうとはしませんでした。
ですから、イスラエル国防軍は、止むを得ず、イスラエル市民の命を守る為、
自ら作戦を実施しているものです。
もし罪のない一般市民が傷付いたのであれば、我々は申し訳なく思います』


(BBC)
「国防省は直ちに包括的な調査に乗り出しました。
イスラエルも一般市民に犠牲者が出るのは
許し難い行為だと考えています。
パレスチナの人々はイスラエルの敵ではありません。
パレスチナとの和平を築こうと、
イスラエルも日々パレスチナからイスラエルに向けられる
ミサイルの発射を止めさせようとしているのです」
(MARK REGEV:Israeli Foreign Ministry spokesman)


<ガザから攻撃されているのだから、
ガザに砲撃するしか他に選択肢はないという話でしたが>

もちろんパレスチナのロケット弾がイスラエルの標的を攻撃することもあり、
先月にもイスラエルの学校が攻撃されています。人はいませんでしたが。
しかしここで国際法上重要な問題があるんです。
吊り合いの問題です。
イスラエルの行為は、直面する脅威に見合うものか、これが問題です。
国際法の下で、この攻撃が、脅威に対し見合うものでなければ、
イスラエルの人権団体が指摘するように、これは戦争犯罪にあたるのです。
(JEREMY BOWEN:Middle East Editor)

イスラエルへのカッサムロケット発射が反占領闘争の前進になるとは思えない