http://abcnews.go.com/Nightline/
(ビデオ映像を観ることができます)

「アッバス・アル・サイード受刑者が
自由に動き回ることのできる僅かな時間がやって来ました。
この運動場はイスラエルでも
最も警備が厳重な刑務所の一つの中にあります。
ここにはイスラエルに対する数百もの攻撃で
有罪となったパレスチナ人達が収監されています。
彼らがリーダーと仰ぐサイード受刑者は
イスラエル史上最も悪名高い自爆テロの一つの首謀者です。
それは四年前の春の夜、過ぎ越しの祭りの最中に
沿岸の街ネタニアで起こりました。
ホテルのレストランでは多くのユダヤ人家族が
伝統的な食事を楽しんでいました。
犯人は警備の隙をついてホテルに駆け込み、自爆しました。
30人以上の罪のない人々が道連れとなりました。
男性も女性も子供もいました。
サイード受刑者はその自爆犯を送り込んだ
ハマスの軍事部門のトップでした。
イスラエルはサイード受刑者の暗殺を誓いましたが、
結局数か月後の強制捜索で逮捕し、
テルアビブ地方裁判所の三人の判事が
1月10日に3500年の禁固刑を宣告しました。
35人の死者の数だけ終身刑を言い渡されたのです。
イスラエル史上最も長い刑期です。
サイード受刑者はイスラエル法廷の正当性を認めていません。
イスラエルがパレスチナ人の土地を
違法に占拠しているからだといいます。
その日のテロの首謀者であることを認め、
自爆テロにより人命が奪われたことを後悔していないといいます。
『ここにいる者の中にはっきりと自分達のしたことを後悔したり、
一生を刑務所内で暮らすことになって悲しんでいる者などいません。
皆自分の義務を果たしたことを誇りに思っており、
家族や他のパレスチナ人もそう思っている筈です』
この一角には主にハマスの構成員が収監されています。
ハマスはイスラエル殲滅を目標に掲げています。
ここにいる54人のパレスチナ人はいずれも複数の終身刑で服役中です。
自爆テロやイスラエルの兵士や民間人殺害の首謀者達です。
誰もが自分を政治犯とみなし、イスラエルの占領が続く限り、
自分の闘いも終わることはないと言うでしょう。
故に眠っている時以外は常に自分を高める努力をしています。
和平合意により釈放される極僅かな可能性にかけているのです。

サイード受刑者をはじめ、ここに収監されている者達は
パレスチナ人達にとって特別な存在です。
生きていながら殉教者とみなされているのです。
イスラエルとの戦いの為に自己を犠牲にしたことでパレスチナ人達に敬愛され、
驚くべきことに、鉄格子の中で政治活動を続けています。
『我々の精神、主張は今も生きているし、影響力も残っていると思います。
いつかここから出られた時、我々の影響力は、
ここに入る以前より強くなっている気がします』
その力を失わない為にも毎日訓練を欠かしません。
気が緩むことは一瞬たりともありません。
一つ一つの動きに紀律と決意が感じられます。
彼らは刑務所を大学のように受け止めています。
イスラエルの占領に抵抗し続ける為の訓練の場なのです。
英語を勉強する者もいれば、イスラエルのテレビを
観て新聞を読めるようにヘブライ語を学ぶ者もいます。
ここのハマスのトップとしてサイード受刑者は
常に他の受刑者達とハマスの戦略について議論しています。
その結果は外のハマスの指導者に伝えられます。
イスラエルは弁護士との接見を許しているので、
弁護士を通してメッセージを伝えているようです。

外の仲間達は今回初めて民主的な選挙に参加しましたが、
この刑務所内では六か月ごとに選挙が行われています。
ここでは既にハマスが政権を握っているのです。

受刑者達はここで過ごす時間が長ければ長い程、
信仰心も深まり、政治への関心も高まるといいます。

しかし弱さを見せる瞬間もありました。
ザヒール・シャシニア受刑者は
パレスチナ人向けのチャンネルで
たまたま自分に関する報道を観ました。
インタビューに答える家族を観て、冷静さを失います。
自分が収監された後に生まれた子供もいます。
二度と会うことはない子供達です。
サイード受刑者にも子供はいますが、
後悔はしていないといいます。
パレスチナ人は38年もの間、
イスラエルの占領と闘い続けてきたのだからと。
『パレスチナ国家の樹立が我々の生きている間に
実現することを願っていますが、
たとえそれが無理でも、我々の息子、
そして孫の世代には実現するでしょう』
子供達もきっと自分の意思を継いでくれるだろうといいます。



<今ほとんどのアメリカ人が思っている一番大きな疑問から始めさせて下さい。
選挙によりハマスはある程度権力を持つ立場となった訳ですが、
権力には責任を伴います。
今後ハマスは罪のないイスラエル市民への殺戮を止めるつもりなんでしょうか>

MAHMOUD ZAHAR
「まずは今のリポートが残念な内容であったと申し上げたいと思います。
まるで我々が罪のない人々、罪のないイスラエル人を
殺したがっているかのような扱いです。
そして今の質問にしても殺戮、殺害云々でした。
歴史を思い起こして下さい。
1948年にイスラエルは我々を殺し、二週間の間に450の街や村を破壊しました。
1956年のイスラエルによるパレスチナ人への攻撃、
そしてシナイ半島などの占領をお忘れですか。
そして1967年パレスチナ人に対する戦争」

<はい、中東地域の歴史については承知しています>

「待って下さい。
そちらは歴史をまず我々が殺人者であるという前提で始めています。
しかしもう一つの視点からみる必要があります。
シャロン首相がサブラとシャティーラの
難民キャンプで行った虐殺はどうなんですか。
難民キャンプで罪のない人々が殺されました。
このことも考える必要があります。
そして殺害の被害に遭いながらもハマスを含むパレスチナ人は十年間、
平和的なやり方で我々の意思を示してきたではないですか」

<ジハールさん、私からの質問は極めて単純なんです。
1948年、56年、68年のことではなく、
今後ハマスは殺戮を止めるつもりなのかということなんです>

「話がこんな調子ではインタビューは続けられません。
しっかりと私の話を聞いて下さい。
そちらのレールに私の発言を乗せようとしないで下さい。
貴方はアメリカ国民にハマスに関するある印象を植え付けようとしています。
ハマスは各地で幅広い支持があります。
もしアメリカの世論を反ハマス、反イスラム路線に誘導してしまったなら、
アメリカも多くを失うことになるでしょう」

<それは承知しています。
質問は単純だったんですが、次の質問に移らせて下さい。
最初の質問には答えて頂けないようですから。
ハマスはファタハと連立政権に参加するつもりなのか。
更にハマスから閣僚が出るとお考えなのでしょうか>

「間もなくハマスは評議会で多数の議席を占めることになるでしょう。
それでもハマスはファタハなどに呼びかけを行い、
イスラエルによる長期占領によって破壊されたものを再建し、
また腐敗によって破壊されたものを取り戻す為に
我々は選ばれた全ての人々に呼びかけを行っていきます」

<どうやら何らかの連立政権には参加するとのお考えのようですね>

Governing from Prison:Hamas' Jailed Leaders :(ABC)