イスラエルは徴兵制が採用されている国です。
国民は18歳以上になると兵役に就かねばなりません。
それを拒否すると刑務所に行かなければなりません。
随分昔から兵役拒否者はいたそうですが、ここ数年で、
その数がとても多くなってきました。
 数年前まで、500人足らずだったのが、この数年で
千人を超えました。
 おそらく、パレスチナの占領地での残酷さに対して、
それに自らが加担できないということではないかと思います。

 兵役拒否には、二種類あって、
・(全面的な)兵役拒否 と、
・選択的兵役拒否者がいます。
 後者は、パレスチナの占領地での軍務のみを拒否するという
ものです。
 自国領土内での、自国を防衛する軍務は喜んで担うという
ものです。
 
 特に、18歳の高校生、数十人が国家を相手に、たった一人で
軍務を拒否すると、申告する場面は、感動的でした。
 
 しかも、彼らは、元気に明るく、「反戦」のビラをまく活動も
しています。
 泥沼の混迷を深めるパレスチナ情勢ですが、そのねじれに
ねじれた情勢を、ひも解く、一つの可能性が、ここに確かに
あると思いました。
 パレスチナの民衆の、不法な占領軍イスラエル軍への
占領地=自国内での抵抗権は、確かにあります。
しかし、イスラエルでのイスラエル市民を巻き込んだ
無差別テロには、反対です。
 そのイスラエル市民の中には、パレスチナとの和平を願って
いる市民もいるからです。反戦運動を粘り強く頑張っている
イスラエル市民もまた、その中にいるからです。

 現在、パレスチナでは、PLO主流派ファタハと、
ハマスへの支持率は、拮抗しているそうです。
 ハマスは、民衆への、粘り強い種々の活動(医療、教育、
慈善等々)を通して、高い支持率を持っています。
 アメリカは、ハマスに対して、民生的な活動をしようと
「テロ組織」だと決め付けています。
 ハマスは、テロ活動一辺倒ではありません。
 パレスチナ自治政府に歩調を合わせて、平和交渉の進展に
合わせて、テロ攻撃は控えているのです。
 絶対的テロ推進ではないのです。
 平和交渉が進展するかに見えると、なぜだかいつも、
イスラエル軍は、ハマスへの攻撃をするのです。
 市内でのハマス活動家に対して、上空の戦闘ヘリから
ミサイル攻撃をするのです。市内ですから、周辺の人・家にも
当然被害は出ます。
 いいですか、市内にミサイルや爆弾をぶち込むのです。
 それに対して、ハマスは、反撃するという、お決まりの
パターンです。
 まるで、イスラエル政府は、和平の進展を望んでいないとしか
思えないことを、繰り返し、繰り返しやってきたのです。

 ハマスは、条件付きで、「テロ停止」を申し出ています。
国際監視軍によるパレスチナでのイスラエルの非道な行為を
監視して欲しいというものです。
 それが何故実現不可能なことなのか、私には理解できません。

 イスラエルは、現状維持、つまり、パレスチナは軍事
占領し、入植地を増やすという、戦略を取っています。
 今では、その既成事実の積み重ねによって、パレスチナ
国家は、イスラエルの入植地の狭間の、いくつかの離れ孤島
という状態にまでなってしまいました。
 陸の孤島から、陸の孤島へと、150ヶ所ものイスラエル軍の
検問所を数時間かけてしか、移動もできない状態です。
 これが、パレスチナの民衆の心底願ってきた国家である
はずがありません。
 一週間の内、半分は夜間外出禁止令か終日外出禁止令の
出される、それでは、生活そのものが、成り立ちません。
 つまり、生活そのものが成り立たないように、イスラエルは
強制しているのです。あわよくば、パレスチナ人が嫌気が
さして他の国に出て行くことを、仕向けているのです。
 パレスチナ人の多くは、こんな状況にもよく耐えていると
感心させられます。
 数少ない地場産業であるオリーブの木を次々と切り倒され、
家を破壊され、修復も許されず、移動も外出もままならず、
平和的なデモにも容赦なく発砲され、それでも歯を食いしばって
絶対に土地から離れるもんかとしがみついている、、、、

 人間の尊厳の本当に深い所での闘いを観る思いです。

 「イスラエル兵役拒否者からの手紙」(NHK出版)