「僕らは星のかけら」(無名舎)

         「僕らは星のかけら」という本は、分類上は、科学的な書物ということになるのですが、
        私の世界観を根底から覆すような本でした。
        高校でもフツーに習うような内容なのかもしれませんが、高校中退の私には、そんな知識を
        得る機会が無かったとも言えるでしょう。(ちょっち言い訳がましいか、、、)

         宇宙が誕生した直後(色々なクォークが結びついて)には、原子番号1番:質量1
        の水素が90%、原子番号2番のヘリウムが10%、その他は2%程度という状況だったそうです。
        水素を主成分とする恒星系が生まれ、その恒星の中で核融合が進み、原子番号が高い
        物質を生み出していったんですね。

         恒星内での核融合が、この私達の宇宙での他の物質を生み出していたんですね。
        地球の地殻も、生命の体を構成しているさまざまの物資も、恒星の中の核融合で
        生み出され、赤色巨星や超新星爆発によって、宇宙にばら撒かれ、それがまた重力により、
        凝集し、また恒星系を生み出す。
        う〜ん、まさに輪廻転生ですね。輪廻転生そのものですね。ただし、唯物論的な輪廻転生ですね。

         この地球の地殻も、この私の体を構成している物質も、どこかの、そして、いくつかの恒星の中で
        生み出され、数奇な?運命を辿って、私の体の中に、今、有るんですね。とっても不思議です。
        またまたなんですが、とっても不思議です。

          私は子供の頃、SF好きな少年だったんですが、その頃は、宇宙が出来て、その初期の頃、
        つまり私達よりもずっとずっと以前に生まれた生命が存在するはずだ。だから、私達よりも
        ずっとずっと文明が進んでいるはずだと思ってたんですが、ちょっち(かなりか?)間違ってましたね。
         初期の宇宙には、水素とヘリウムしか存在しない訳ですから、星はできても、生命を生みだす
        物質そのもが、まだ存在もしていなかったんですね。

         ただ、恒星は、その質量と寿命が反比例するので、私達の太陽より質量の大きな恒星は、私達の
        太陽の寿命より、はるかに短いこともある訳ですけどね。
        私達の太陽系は、少なくとも5つか、6つの恒星系のその残骸が寄り集まって構成されているそうです。

          まあ想像してみて下さい。遠い昔、遠い遠いある恒星の中の核融合で生まれた物質達が、
        その星の寿命とともに、宇宙に散らばっていき、また何かのきっかけで、その他の星で生まれた
        物質達とも合流・離散しながら、また新たな恒星系の材料となり、、、、そういうことを幾世代か繰り返し、
        今、私達の体の中に、存在している。

         私は、このことを考える度に、その度に、言葉では言い表せない深い感銘を覚えます。

        「僕らは星のかけら」とは、最初、比喩だとばかり思ってたんですが、実は、文字通り、
        「僕らは星のかけら」だったんですね。

         さて、勿論、材料物質があるだけでは、生命は誕生しません。
        生命が誕生する為には、更にいくつもの、ほとんど奇跡と言ってしまいたいような偶然に次ぐ偶然が
        重なって、今、私達が生きているんですけどね。

         でもまあ、生命の材料物質が、どうやって生まれたかという事実は変わりませんけどね。

         この本は、謎解きスタイルにもなっていて、結構ハラハラドキドキ、一気に読み進めさせる力も
        持っていると思います。
        何の知識もない私にも読めましたから、特別な前提知識も要りません。
        高校生以上なら読めると思います。

         まあ私は、あまりにも簡単に要約してしまっていますが、
        (って、実は、しっかり記述する能力が無いだけなんですけどね、、、)
        実は、もっともっと複雑な過程を、じっくりと解説してくれています。
        太陽内での水素→ヘリウムの核融合ですら、かなり複雑な過程を辿るし、
        それを解明する人達の歩みも平坦ではありませんでした。
        太陽より大きな赤色巨星の内部で何が起こっているのか
        超新星では何が起こっているのか、
        まあそれは、この本をじっくり読んでみて下さい。

         あと、私がこの本にたどり着いた道筋を紹介します。
        私はNHKスペシャルがとっても好きです。で、NHKスペシャル:宇宙:未来への
        大紀行をTVで観ました。
        且つそれがとっても面白かったので、それを書物にしたものも読みました。(全4巻)
        その第3巻のブックガイドで、この書物が紹介されていて、じゃあ読んでみようと
        思ったのがきっかけです。