武谷三男は湯川秀樹と共に中間子論を推進した優れた科学者です。
(湯川秀樹の著作を読んでいるとよく共同研究者としてその名が出てきます)
原子核内において、陽子と中性子が何故凝集しているのか、その科学的推論として
中間子という実体を想定しました。その後実際に発見され、湯川秀樹はノーベル賞を
受賞するわけですね。
 武谷三男は、現象論、実体論、本質論の三段階論を唱えました。
主著「弁証法の諸問題」(かつて理系学生のバイブルと言われました)中の
「ニュートン力学の形成について」の中で、ガリレオ、ケプラー、ニュートンが、
その三段階に対応するとして例を挙げています。
・惑星の動向を把握する段階=現象論的段階=ガリレオ
・各惑星という実体を措定して、惑星間の関係を把握する
 ケプラーの「面積速度一定の法則」=実体論的段階
・これらの総合としての「ニュートン力学」の形成=本質論的段階
 中性子論を展開する場合に、中間子という「実体」を推論して、真理に近づいたと
いう実績を挙げました。

 人間認識の深まりは、この武谷三段階論のように、徐々に深まっていくのだと
私も思います。
 「自然界の客観的法則性」を、人間が、「法則」として「認識」し、それを
「目的意識的に適用する」のが、人間実践だと思います。

量子力学「ニュートン力学の形成について」